人事の超プロが教える、リストラ時代を生き抜く戦略

「昔はこうだった」―中年社員の昔語りも、伝え方次第で若手に響く?

昔話は「今は違うけどね」を忘れない

昔話も「俺の時代はこういうことがあってさ、あはは」と1分以内に簡潔に伝えれば、それほど「うざい」とは思われたりしないでしょう。それを延々と長く続けてしまうから、「聞かされるこっちの身にもなってみぃや!」と不快に思われてしまうわけです。

また、昔の話しかしない人は、今の話ができない、ということになってしまいます。
会社で話すべきことは「今」の話です。

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昔話も織り交ぜて、今の話をする分にはいいのですが、昔の話しかしなかったら、今の役には立たないので、そういう面でもよろしくないでしょう。

今の若い人は、年功序列的な考え方は通用しません。相手が年上や上司であっても、シビアに見ています。

昔の話もするけれど、今のやり方を取り入れ、成果を出している50代の話は参考にしたいと考えていますが、昔のやり方に固執して成果を出していない50代の話は、聞いてさえもらえません。

「昔はこうだった」という話をするなら、現在の状況もきちんとキャッチアップして、「今は違うけどね」と言い添えることが重要です。

たとえば、「昔は徹夜で仕事したもんだけど、今はそういう時代じゃないからね」と現在の価値観で話をする。それなら昔話もありでしょう。「徹夜はもはや良くないけど、そのぐらいがむしゃらに仕事に取り組んだことは、今の仕事に活きているよ」とかでしょうか。

だからこそ重要なのは、昔と今は何が違っているのかをしっかり認識することです。上司に誘われたら付き合うのが当たり前、二次会はカラオケに行くのが当たり前、カラオケでデュエットするのは当たり前、今時いないとは思いますが、酌は女性がするもの、なんて価値観のままでは、完全にアウトです。

若い人たちが2次会に行くとしても、自身はさっさと去り行くべきです。飲み足りなければ、ひとりで行く店を作っておきましょう。

ちょっとは褒めてほしくても、自慢話は1分以内

自慢話をしたくなっても、1分以内です。「俺ってすごいやろう」みたいな話であっても、1分以内なら聞いてもらえるはずです。

人生経験が長くなると話したいことがたくさん出てきます。それこそ昔話や自慢話なんて始めたら、いつまでも喋れてしまいますが、話が長い50代は最も嫌われます。

若い世代は、コスト重視です。時間は特に大切にしています。相手が飽きているのに、だらだら話し続けるのは最悪といってもいいでしょう。

高田純次さんの「年を取ってやっちゃいけないのは、説教と昔話と自慢話」という話を紹介している記事には、こんなコメントがついていました。

「昔話しかしないのは、ピークを過ぎているから」
「そういう人から説教や昔話、自慢話を奪うのは可哀想」

説教・昔話・自慢話しかしない50代は、哀れみの目で見られているのです。

説教や昔話、自慢話をしたくなる気持ちは、わかります。「昔はこうだった」という気持ちは、私にもあります。50代は、おそらくみんなそうでしょう。

でも嘆いていても仕方ありません。私たちが経験してきたことは、若手にとって貴重な話だったりすることもあるはずです。要は、話し方や伝え方の問題なのです。

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説教をしなくちゃいけないときでも、命令や決めつけではなく「こうしたほうがいいと思うけど、どう思う?」と問いかけ、決めるのは本人次第にする。昔話は、今の価値観で話す。自慢話は、簡潔にさらっと言う。そして、必ず1分以内で話す。

このように注意すれば、説教・昔話・自慢話がすべてNGというわけでもないと思います。なかなか難しいですが、自戒も込めて、私はそんな風に考えています。イケてない50代にならないよう、伝え方には十分気をつけていきましょう。

次回につづく

 

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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