さて、今回はわかりやすさとキャッチーさを重視し、あえてスターのみなさんの事例をいくつかご紹介しましたが、スターであれそうでない方であれ、私がこれまで出会った話しやすい人には、次のような共通点があったといえます。
①自分がどのような立場でも、相手が誰であっても、相手への敬意を忘れず、適度にフランクに接する。
②どのような状況にあっても感情的になりすぎず、常に穏やかで落ち着いた口調、雰囲気で話をする。
③人の話をしっかり聞き、尋ねられたことには、きちんと考えて的確に答える。
それぞれの要素について、簡単に説明しておきましょう。
まず、①。
話しやすい人は、たとえ大スターであっても、「先生」と呼ばれる立場であっても、企業のトップであっても、話している相手への敬意を忘れず、かつ適度にフランクに接します。
もしかしたらみなさんの中には「地位や名声、才能、権力、お金などを持っていれば、心に余裕が生まれ、他人にきちんと接することができるのは当然じゃないか」と思う人もいるかもしれませんが、どれほどいろいろなものを持ち合わせていても、全員が話しやすい人であるとはかぎりません。
逆に、スターや「先生」、企業のトップなどでない人の中にも、誰に対しても敬意を忘れない人もいれば、相手によって態度を変えまくる人もいます。
また、いくら自分に対しては感じのいい人でも、自分以外の人にきつく接しているのを見聞きしたら、やはりその人のことを「話しやすい人」とは思えないはずです。
基本的には、あらゆる人に対して敬意を忘れず、一人の人として丁寧に、かつ適度なフランクさを交えて接することは、話しやすい人になるうえでとても大事なことだといえるでしょう。
次に、②。
私が出会った話しやすい人はみな、とにかく口調も雰囲気も穏やかでした。
自分で自分の機嫌をとることができ、感情をコントロールすることができるため、たとえ直前に腹が立つことや動揺するようなことがあっても、誰かと相対しているときに、イライラや焦りを前面に出したり、八つ当たりしたり、ぞんざいな対応をしたりしないのです。
もっともこれは、あくまでも「私が出会った、話しやすい人に見られる共通点」であり、一人の人間のあり方として正解かどうかはわかりません。
自然に感情のコントロールができる人なら良いのですが、「話しやすい人にならなければ」と、ネガティブな感情を無理やり抑え込むと、知らず知らずのうちにストレスがたまり、心のバランスを崩してしまうおそれがあります。
腹が立つことがあったときに感情を爆発させたり、動揺したときに人目もはばからず号泣したりあたふたしたりするほうが、ストレスはたまりにくいかもしれません。
そして、世の中にはもしかしたら、きちんと感情をコントロールできる人よりも、感情をむき出しにする人のほうに「人間らしさ」を感じ、話しやすいと思う人もいるかもしれません。
ですから、「話しやすい人になりたい」という人がみな、完璧に感情をコントロールするべきだとは、私も思いません。
基本的には「ご機嫌な状態」でいることを目指しつつ、どうしても感情が波立って、自分一人では処理しきれない場合は心許せる人の前で愚痴ったり泣いたりするなど、自分なりのバランスをとっていくと良いでしょう。
最後に、③。
聞き上手になることの大切さについては、これまで再三お伝えしてきましたが、それに加え、話しやすい人は、尋ねられたことに対し、きちんと考えて答えます。
質問に対して一言だけしか答えないとか、ありきたりの答えで済ませるといったことがないため、会話が広がりやすく、話していて新たな気づきを得られることも多々あります。
世間で「当たり前」だとされていることを当たり前だと思い込まず、あらゆることについて、常に自分の頭でしっかり考える。
ややハードルが高いかもしれませんが、それも真に話しやすい人になるうえで、必要なことかもしれません。