会社によってプロセスにはいくらかの違いはあるが、ほとんどの出版社は次のような段取りで出版物を発行し書店に流通させている。
まず、企画立案から企画のオーソライズまでは2ヵ月程度を要する。担当編集者との話はとんとん拍子に進んだとしても、企画がオーソライズされるには、社内の手続きを経なければならない。編集会議、あるいは企画会議などと、呼称は出版社によって異なるが、要するに出版するかしないかを決める会議がそれである。この会議を通らないことには、企画が本となって日の目を見ることはない。
この出版を決定する会議は、各社とも大体、月に一回程度行っている。したがって、どんなによい企画でも、オーソライズされるまで最長で1ヵ月ほどは待たなければならない。また、担当編集者はこの会議に提出するための企画書をつくらなければならないので、そのための作家の打合せなどを加算すると、やはりここで2ヵ月は要するというのが一般的なケースといえるだろう。
企画がオーソライズされたら、次は原稿作成のプロセスである。ここは作家の力仕事となる。原稿の執筆期間は、作家のスケジュールに合わせるのが基本だが、ビジネス書の新人作家の場合には、それほど余裕を与えられることは少ない。おおよそ3ヵ月先を締め切りとされることが多いだろう。場合によっては、締め切りまで2ヵ月ということもある。
では、締め切りに間に合わないというときはどうなるのだろうか。ここから先の対応は、出版社によって違いがはっきり出る。さすがに、締め切りを守らなくてよいという出版社はひとつもないが、何やかやと1年くらい待ってくれる出版社もある。その反対に、早々に見限ってしまう出版社もある。ただし、早々に見限るといっても、どの出版社でも必ず2度や3度は締め切りを延ばす。概して出版社は企画のオーソライズまではハードルが高いが、一度通った企画はなんとか実現しようとする傾向があるのだ。
原稿入稿後の制作期間の1ヵ月半から2ヵ月というのは、どの出版社でもそれほど差はないはずだ。これらのプロセスと要する時間を足していくと、事故なし、遅滞なしとして、概ね6ヵ月となる。実際に守られているかどうかは別として、出版社によっては企画の正式決定から2ヵ月後に本を発行するということを、決めごととしているころもある。
これは非常にタイトなスケジュールに見えるが、こういうシステムを採っている会社では、編集部内でいったんオーソライズしたものは、その段階から原稿作成に取りかかりはじめ、ある程度原稿が整った段階で最終の決定会議にかけている。したがって、決定から2ヵ月後に発行といっても、実際には決定の前に、すでに4ヵ月ほどの時間を費やしているのである。
こういうシステムを採る出版社を相手にするときは、原稿までつくったのに最終の会議でNGが出たらどうしようという不安がつきまとうかもしれない。しかし、原稿がダメなら、どんなに手続きを踏んでいようともダメなのが出版である。そこは覚悟を決めるしかない。よって、いたずらに心配しても仕方がない。それに担当編集者も人の子である。自分が進めて原稿になったものを邪険にすることはない。必ずなんらかの尽力はするものだ。
次回に続く