ビジネス書業界の裏話

「夢の印税生活」の夢と現実

2016.09.22 公式 ビジネス書業界の裏話 第16回

印税相場の移り変わり

どうやら世間では、印税というと、一律に決まっているように思われているようだ(おそらく税という字から連想するのだろう)。しかし実際は、必ずしもそうではない。
印税には、「刷り部数印税」と「実売印税」がある。
どちらのシステムが多いのかは、正直にいうとわからない。
私が付き合いのあるビジネス系の出版社で、現在、実売印税というところは一社もないが、かつて実売印税だったという会社は二社ある。
したがって、いまのところは恐らく刷り部数印税の会社のほうが多いだろう。

刷り部数印税とは、「発行部数(印刷部数)×定価×印税率」で計算する。
一方、実売部数とは、「発行部数から返品等の在庫分を差し引いた数×定価×印税率」で算出する。

印税率も一律ではない。
20年前であれば、だいたい一律10%といえた。
しかし、今日「印税は一律10%です」という出版社は数えるほどしかない。中には5%という印税率の会社もある。
印税率が減少している理由は、はっきりいって出版界の斜陽にある。本が売れないから、出版社は経費である作家への報酬、印税率を下げているのは明らかだ。
さすがに5%以下という条件はいままで聞いたことはないが、7%、8%という印税率の出版社は珍しくない。
10%の印税率を基本にしている会社でも、何か付録を付けるようなお金のかかる本づくりをした場合には、制作費がかかる分、印税率を下げて調整するという場合もある。

では、作家にとっては印税率が高くて、刷り部数印税の出版社のほうがよい版元かというと、そうではない。
質のよい本をつくって、たくさん売ることができる出版社が、やはり作家にとってもよい版元なのである。

次回に続く

 

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プロフィール

ミスターX
ミスターX

ビジネス雑誌出版社、および大手ビジネス書出版社での編集者を経て、現在はフリーの出版プロデューサー。出版社在職中の25年間で500人以上の新人作家を発掘し、800人を超える企業経営者と人脈をつくった実績を持つ。発掘した新人作家のうち、デビュー作が5万部を超えた著者は30人以上、10万部を超えた著者は10人以上、そのほかにも発掘した多くの著者が、現在でもビジネス書籍の第一線で活躍中である。
ビジネス書出版界の全盛期となった時代から現在に至るまで、長くビジネス書づくりに携わってきた経験から、「ビジネス書とは不変の法則を、その時代時代の衣装でくるんで表現するもの」という鉄則が身に染みている。
出版プロデューサーとして独立後は、ビジネス書以外にもジャンルを広げ文芸書、学習参考書を除く多種多様な分野で書籍の出版を手がけ、新人作家のデビュー作、過去に出版実績のある作家の再デビュー作などをプロデュースしている。
また独立後、数10社の大手・中堅出版社からの仕事の依頼を受ける過程で、各社で微妙に異なる企画オーソライズのプロセスや制作スタイル、営業手法などに触れ、改めて出版界の奥の深さを知る。そして、それとともに作家と出版社の相性を考慮したプロデュースを心がけるようになった経緯も。
出版プロデューサーとしての企画の実現率は3割を超え、重版率に至っては5割をキープしているという、伝説のビジネス書編集者である。

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