どうやら世間では、印税というと、一律に決まっているように思われているようだ(おそらく税という字から連想するのだろう)。しかし実際は、必ずしもそうではない。
印税には、「刷り部数印税」と「実売印税」がある。
どちらのシステムが多いのかは、正直にいうとわからない。
私が付き合いのあるビジネス系の出版社で、現在、実売印税というところは一社もないが、かつて実売印税だったという会社は二社ある。
したがって、いまのところは恐らく刷り部数印税の会社のほうが多いだろう。
刷り部数印税とは、「発行部数(印刷部数)×定価×印税率」で計算する。
一方、実売部数とは、「発行部数から返品等の在庫分を差し引いた数×定価×印税率」で算出する。
印税率も一律ではない。
20年前であれば、だいたい一律10%といえた。
しかし、今日「印税は一律10%です」という出版社は数えるほどしかない。中には5%という印税率の会社もある。
印税率が減少している理由は、はっきりいって出版界の斜陽にある。本が売れないから、出版社は経費である作家への報酬、印税率を下げているのは明らかだ。
さすがに5%以下という条件はいままで聞いたことはないが、7%、8%という印税率の出版社は珍しくない。
10%の印税率を基本にしている会社でも、何か付録を付けるようなお金のかかる本づくりをした場合には、制作費がかかる分、印税率を下げて調整するという場合もある。
では、作家にとっては印税率が高くて、刷り部数印税の出版社のほうがよい版元かというと、そうではない。
質のよい本をつくって、たくさん売ることができる出版社が、やはり作家にとってもよい版元なのである。
次回に続く