テーマが繰り返すのは、ビジネス書だけではない。
『一分間勉強法』(石井貴士著 中経出版)というベストセラーがあったが、「勉強法」というテーマは、実に戦前から存在する。
鳩山由紀夫元総理のお父上の鳩山威一郎氏だったと思うが、当時、東京帝国大学で、もうひとりの秀才と常に首席を争っていた。なぜかふたりの首席争いは、世間の注目を集めることとなり、ふたりの成績はニュースにまでなったらしい。
そして、そのころに出版された本に『秀才の勉強法』というのがあった。
上記は出典が見つからないので細部は不確かだが、「勉強法」というテーマは実に伝統のあるテーマだということである。
「健康法」や「健康術」については、いわずもがなである。
とくに時代が戦雲急を告げるころになると、肉体改造(昨今流行しているジャンルの1つであるが)の本がたくさん出版されていた。
「片づけ」というテーマは、戦前の婦人雑誌が年末になると必ずやる定番の特集であった。
かくてテーマは繰り返す。
「アドラー」も、何10年か後に再びブームとなるかもしれない。
「ロングテール」という概念は、「アマゾン」などのネット書店の登場によって現れたように見えるが、この言葉が世間に流布し出した当時から、私は「ロングテール」は以前から出版界にあった、古書業界は昔からロングテールだったと言っていた。
それはともかく、古書店にある本は、過去に誰かが買った本である。
「アマゾン」の中古本、「ヤフオク」に出品されている本も、確かに読者がいたという実績のある本である。
売れるか売れないか定かでないテーマの本よりも、実績のあるテーマに倣(なら)ったほうが勝率は高いのではないかと考えるのは、そう不合理な話ではない。
しかし、ほとんどの編集者は、残念ながら「このテーマは10年前にベストセラーでした」といわれても、たぶん見向きもしない。編集者の9割は「いま売れている本」にしか関心が向いていないからだ。
したがって、古書からテーマを見つけるのは、作家自身にとってのネタ探しに止めざるを得ない。
編集者には、どこで見つけたかは伏せたまま、過去のテーマを現代風にアレンジした後に示したほうが賢明である。
次回に続く