真中流マネジメント

スランプや不調に陥った選手の起用法
~どこまで我慢して起用するか、その見極めが大切~

2016.07.08 公式 真中流マネジメント 第8回

簡単に替えの利く選手はいない

個々の選手の性格、モチベーションを見ながら、
どうすれば試合を通じて復調させられるかを考える

前回はルーキーとベテランという立場の選手の起用法に関して話しました。今回はその続きとして、不調やスランプに陥った選手をどう起用するかということについて話をしていきたいと思います。

プロ野球は1年を通して戦います。その長いシーズンの中で、好不調の波というものは必ず来ます。ルーキーやベテランの起用と同じように、監督として「誰を使えば勝てるか」を大前提に采配することにはなりますが、不調だからといってすぐにその選手を下げたりするようなことはあまりしません。

そもそもレギュラーで活躍する選手、ベンチでも一軍にいる選手は、総合的な能力に優れているからこそ、そのポジションを任されているわけです。簡単に替えが利く選手たちではありません。ですからチームの勝利を考えたとき、「不調だから替える」よりも「不調から脱してもらうこと」のほうが優先される。まずはそれを念頭に、対策をとるように考えます。

不調といっても、その期間は選手によってさまざまです。1本のヒットで調子が戻る選手もいれば、長く打てずにスランプに陥る選手もいます。ですから、個々の選手の性格、そのときどきのモチベーションを見ながら、どうすれば試合を通じて復調させられるかを考えていくことになります。

いずれにしても、ある程度の「我慢」が必要になりますね。まずは我慢強く試合に使い続けてみることです。私自身もそうだったんですが、不調が続くとどうしても弱気になり、逃げ出したい気持ちになります。球場に来てスターティングメンバーを見るときに、「今日は外れてないかな」という気持ちになることもありました。それでも、試合はやってきます。ここで一つ言えるのは、逃げ出したくなるような気持ちであっても、試合に出続ければどこかで必ず抜け出せるきっかけが訪れるということです。どんなに調子が悪くても、サヨナラの場面でヒットを打ったり、守備でいいプレーをしたり、お客さんに喜んでもらえるようなことは、試合に出ないと起こりません。「出ていれば必ずいいことがある」ということは、出続けてこそ分かること。ですから選手の様子を見つつ、ときに打順を変えたりしながらも、我慢強く起用を続けます。

我慢して起用する意図をチームで共有する

不調の選手には過剰なコミュニケ―ションはとらない
ベンチで試合を見させることも復調の手段

もっとも、そうした起用を監督の意固地な采配として捉えられ、チームの不和に繋がっては元も子もありません。ですから、自分がなぜその選手を起用し続けるのか、いつまで我慢するつもりなのかなど、首脳陣にはその意図を明確に伝えるようにしています。私の感覚ですが、少なくとも一カ月は我慢して使ってあげたいと考えていますね。

また、不調の選手に対しては過敏にコミュニケーションを取らないことも大切だと考えています。現役時代、私も数試合ヒットが出ないと、「大丈夫か?」という声をかけられたりしましたが、「そりゃヒットでないときだってあるよ」という気持ちになることもありました。ですので、選手の性格を考慮しつつ、なるべく「あまり気にしていないよ」という素振りでいるよう心がけています。

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プロフィール

真中満
真中満

1971年栃木県大田原市出身、宇都宮学園高等学校を経て日本大学卒業後1992年にドラフト3位で東京ヤクルトスワローズに入団。
2001年は打率3割を超えリーグ優勝、日本一に貢献。2008年現役を引退。
2015年東京ヤクルトスワローズ監督就任1年目にして2年連続最下位だったチームをセ・リーグ優勝に導く。
2017年シーズン最終戦をもって監督を退任。

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