今のヤクルトに必要なのは、若きチームリーダーではないでしょうか? チームの軸として試合で活躍しながら、普段の練習においてもみんなを引っ張っていける存在がいれば、チームのムードも大きく変わってくると思います。その役割を担ってほしいのが、山田哲人や中村悠平です。2人とも「自分はそんなタイプではない」と言うかもしれませんが、彼らにはそろそろチームを引っ張る自覚を持ってほしいと思っています。
僕の現役時代、古田敦也さんはいつも痛み止めを飲みながら試合に出ていました。古田さんは何か特別なことを口にしたり、アクションを起こしたりしたわけではありません。それでも僕らは、何も言わずに試合に出続ける古田さんの姿から、多くのことを学びました。そして、その姿こそ自分が主力選手となったときの自覚へとつながっていきました。だからこそ、山田や中村にも、その自覚を持ってほしいのです。
さて、現有戦力を考えてみた場合、残念ながらヤクルトの場合はすべてにおいて層の薄さを露呈してしまっています。ドラフトと外国人選手による新戦力の補強を軸にして、今いる選手たちは、それぞれもうワンランク、ツーランクレベルアップを図ってほしいというのが僕の願いです。ぜひ、小川淳司監督の下、ヤクルトにはもう一度強いチームになってほしいと一OBとして応援したいと思っています。
来年以降のことは、具体的にはまだ決まっていませんが、テレビ、ラジオ、新聞などで評論家活動をしながら、改めて「オレは本当に野球が好きなのか?」を確認したいと思っています。野球に対する情熱があるのか? そして自分が勉強してきたことが正しいのか? もう一度、自分自身を見直したいと思っています。その上で、「またユニフォームが着たい」と思えるのならば、もう一度グラウンドに戻ってきたいし、復帰への情熱が沸いてこないようであれば、また新たな人生を歩んでみたいと考えています。
現役時代、当時の野村克也監督からは「真中満-野球=0」になってはいけないと言われ続けました。93年のプロ入り以来、四半世紀にわたってずっとヤクルトのユニフォームを着続けていました。改めて、野村監督の言葉が蘇ります。この25年間、自分なりにいろいろなことを経験し、学んだつもりです。その結果、少なくとも「0」ではないという自負はあります。
これからどんな人生が待っているのかはわかりません。けれども、僕もまだ40代です。まだまだ老け込む年ではありません。これから、新しいことにチャレンジするのも楽しみです。現役時代、そしてコーチ、監督時代と多くの方に支えられてきました。これからも新しい人生で頑張ります。2年間、この連載を読んでいただき、本当にどうもありがとうございました。また、どこかでお会いしましょう。
取材協力:長谷川晶一
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