リーダーシップの身につけ方

「第5水準」のリーダーを目指す

2015.11.09 公式 リーダーシップの身につけ方 第3回

なぜ自分がキャプテンに

新チームでまず行われたのが、キャプテン選びです。私は当然、1年生の時から上級生に混ざって活躍していた、エースや中心選手がなるものだとばかり思っていました。

ところが、監督がキャプテンの名前を発表すると、いきなり私の名前が呼ばれのです。私だけではなく誰もが、驚いたと思います。思ってもみない人選でした。

高校から本格的に野球をはじめて、目立った活躍もしていない。試合にも出ていない。2軍戦でも出してもらえない。そんな私に、どうしてキャプテンを命じられたのか?

後で聞いて分かりました。下級生たちが、「岩田さんをキャプテンにしてほしい」と強く推薦してくれたというのです。

リーダーシップは生まれつきじゃない

私はなぜ、社長にまでなれたのか?

小さい頃、私はやんちゃで、どちらかというとワガママで人に嫌われていたと思います。それでいてリーダーシップを発揮している友達に憧れる子どもでした。

後に社会に出てからも、自らリーダーシップを発揮しよう、などと意識したことはありません。みんなのために今、自分は何をするべきか。それを考えて行動していたら、自然とリーダー的な役割をしていることが増えていったのです。

いつの間にか、いろいろな組織のリーダーを命じられるようになっていった。その繰り返しでした。子どもの頃や社会人になりたての頃の私を知る人は、私が3社で社長を経験することができたなど、とうてい信じられないだろうと思います。

だからこそ、私がみなさんに強調しておきたいのは、リーダーシップというのは生まれつきなどでは決してない、ということです。

誰でもその気になれば、リーダーになれるのです。

リーダーシップのイメージを変えよ

私が強調しておきたいのは、リーダーシップのイメージを変えてほしい、ということです。リーダーシップといえば、多くの人がイメージするのが、オレについてこい、というカリスマ的な力で、グイグイ人を引っ張っていく、というものではないでしょうか。強いリーダー、一歩前に出るリーダーでなければいけない、と。

実際、一国のリーダーにしても、企業のリーダーにしても、そうしたカリスマ性を持って強いリーダーシップを発揮する人も確かにいます。しかし、それだけがリーダーシップでは決してない、ということです。

私の愛読書のひとつに、名著『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』があります。普通の会社が優れた企業になることができた秘密とは何か、を検証した本ですが、ここではリーダーについても言及されています。

たしかに、多くの人々がイメージする、「俺についてこい式」のカリスマ的リーダーはこの本の中では「第4水準」であり、その上のリーダーとして「第5水準」というリーダーがあるというのです。

カリスマ性の有無はまったく関係がない。むしろ、控えめな謙虚さを持っている。何かがうまくいったとしたら、「それは運がよかったからだ」「部下が頑張ってくれたからだ」と自分以外の成功の要因を探す。

逆に、うまくいかなかったときには、他に責任を転嫁するのではなく、「すべて自分の責任だ」と反省する。

そのようなリーダーを「第5水準」のリーダーと定義しています。

私は30代でこの本を読んだとき、とても勇気づけられたのでした。私自身、カリスマ型のリーダーにはおそらくなれません。もし自分が企業の中でリーダーシップを発揮しなければいけなくなるとすれば、この「第5水準」を目指せばいいのだ、と。

何より、それはもともと自分でぜひ目指したいと思ったリーダー像でした。

(次回に続く)

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プロフィール

岩田松雄
岩田松雄

1958年生まれ。大阪大学経済学部卒業後、日産自動車株式会社に入社。同社にて幅広い業務を経験後、米国UCLAアンダーソンスクールに留学。その後、外資系コンサルティング会社ジェミニ・コンサルティング・ジャパン、日本コカ・コーラ株式会社役員を経て、株式会社アトラス(ゲーム会社)の代表取締役として、三期連続赤字の企業を再建。さらに株式会社タカラ常務取締役を経て株式会社イオンフォレスト(ザ・ボディショップ)の代表取締役に就任。店舗数を一気に増加させ、売上を67億円から約140億円に拡大。そしてスターバックスコーヒージャパン株式会社のCEOとして「100年後も光輝くブランド」というコンセプトを掲げ、業績を急回復させ再成長させる。これらの功績が認められ、UCLAビジネススクールより全卒業生3万7000人の中から「100 Inspirational Alumni」
('92年卒業生ではただ一人)に選出される。
現在は株式会社リーダーシップ・コンサルティングの代表取締役CEOであり、次世代のリーダー育成に注力する傍らで、立教大学の特任教授として教鞭もとっている。主に「リーダーシップ」に関するテーマにてこれまで著書は30万部を超える『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』はじめ多数。「リーダーシップ」に関する日本の第一人者として日本のビジネス界を牽引する人物である。
HP: http://leadership.jpn.com
Facebook: https://www.facebook.com/Leadership.jpn?pnref=lhc

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