リーダーには、「ミッション」「ビジョン」「パッション」が必要だとよくいわれます。チームが目指すべき方向性を示すビジョン、チームを牽引する熱いパッションももちろん欠かせませんが、いちばん大切なのはミッションだと思います。つまり何のためにこの組織があるのかという使命感です。
ミッションとは、自分たちの存在理由です。会社は事業を通じて世の中をよくするために存在します。もしリーダーとしてチームを率いることになったら、真っ先に考えるべきは、自分たちのミッションは何か、ということです。間違っても売り上げを増やす、利益を最大化するといった短絡的なものにしてはいけません。利益を上げることはミッションではなく、ミッションを達成するための手段なのです。
リーダーは会社のミッションをしっかり理解し、メンバー1人ひとりに浸透させる役割を担っています。自分たちは何のために働くのか。そのために何をするのか。メンバーの心に届く言葉や自らの行動として伝えることが、リーダーもっとも重要で最初にやるべき仕事です。それができれば、メンバーは意気に感じてやる気を出して頑張ってくれます。
はじめてリーダーの立場になったとき、あるいは新しい部署にリーダーとして異動したとき、「早く結果を出さなくては」と、焦りを感じるかもしれません。しかし、結果を出すためには、準備期間が必要です。
私は外資系のコンサルティングに勤めていたときは、3ヶ月で1つの業界のことを理解し、提言をまとめるという仕事をしました。同じように、リーダーとしてその部署の概要をつかむまでに、およそ3ヶ月はかかると思ったほうがよいでしょう。結果を出すためには、さらに時間がかかります。
私は経験では、新しい会社に移ったとき、結果が出はじめるのまでに半年ほどかかりました。ザ・ボディショップでは、半年後から32ヶ月連続で予算を達成できるようになりました。スターバックスに入ったとき、リーマンショック後業績が下降している最中でしたが、ほぼ半年で底を打ち、右肩上がりに成長させることができました。
会社のミッションを深く理解し、それに沿った自部門の方針を考え、活動ビジョンを打ち出す。メンバーとコミュニケーションをとりながらビジョンを浸透させ、結果を出すために必要なチームプレーを組み立てる。これを実現するためには、ある程度の時間がかかることを理解しておくべきです。決して焦る必要はありません。
しかし何か1つでもいいので、短期間に成果を出すことも重要です。これは「クイック・ヒット」とか「アーリー・ウイン」と呼ばれていますが、小さな結果を出すことよりも、上司や部下から信頼を得ることができます。「この人に任せておけばよい」と。
間違った意思決定をする原因の1つに、判断材料となる事実が不足していたこと、あるいは事実を間違って伝えられたことが挙げられます。間違った事実から、正しい判断は生まれようがありません。
事実をしっかり把握するために有効なのは、現場の社員から直接話を聞くことです。現場にこそ事実があります。人づてに聞くと、どこかで途中の人の意見や判断が加えられたり、大切なことが漏れて伝えられたりします。ですから直接、一次情報として聞くことが大切です。
人を信じても、人のすることを信じてはいけない。これを肝に銘じるべきです。人はときとして間違えます。判断基準も人によって異なります。相手の言うことをうのみにすると、大きな判断ミスにつながるのです。必ず相手は間違うかもしれないと思い、途中でチェックや確認をするのです。
報告を受けるときも、「事実」と報告者の「意見」をきちんと分けて聞く必要があります。たとえメンバーに嫌がられても、細部までチェックし、こまめに報告を受けることが大切です。メンバーにしてみれば、信用されていないのかと思うかもしれませんが、正確な判断をするためには不可欠なことです。
(次回に続く)