リーダーシップの身につけ方

リーダーに求められるものとは

2016.01.12 公式 リーダーシップの身につけ方 第7回

リーダーに求められるものとは

リーダーには、「ミッション」「ビジョン」「パッション」が必要だとよくいわれます。チームが目指すべき方向性を示すビジョン、チームを牽引する熱いパッションももちろん欠かせませんが、いちばん大切なのはミッションだと思います。つまり何のためにこの組織があるのかという使命感です。

ミッションとは、自分たちの存在理由です。会社は事業を通じて世の中をよくするために存在します。もしリーダーとしてチームを率いることになったら、真っ先に考えるべきは、自分たちのミッションは何か、ということです。間違っても売り上げを増やす、利益を最大化するといった短絡的なものにしてはいけません。利益を上げることはミッションではなく、ミッションを達成するための手段なのです。

リーダーは会社のミッションをしっかり理解し、メンバー1人ひとりに浸透させる役割を担っています。自分たちは何のために働くのか。そのために何をするのか。メンバーの心に届く言葉や自らの行動として伝えることが、リーダーもっとも重要で最初にやるべき仕事です。それができれば、メンバーは意気に感じてやる気を出して頑張ってくれます。

最高のリーダーになるための鍵

1. 「結果を出そう」と焦らない

はじめてリーダーの立場になったとき、あるいは新しい部署にリーダーとして異動したとき、「早く結果を出さなくては」と、焦りを感じるかもしれません。しかし、結果を出すためには、準備期間が必要です。

私は外資系のコンサルティングに勤めていたときは、3ヶ月で1つの業界のことを理解し、提言をまとめるという仕事をしました。同じように、リーダーとしてその部署の概要をつかむまでに、およそ3ヶ月はかかると思ったほうがよいでしょう。結果を出すためには、さらに時間がかかります。

私は経験では、新しい会社に移ったとき、結果が出はじめるのまでに半年ほどかかりました。ザ・ボディショップでは、半年後から32ヶ月連続で予算を達成できるようになりました。スターバックスに入ったとき、リーマンショック後業績が下降している最中でしたが、ほぼ半年で底を打ち、右肩上がりに成長させることができました。

会社のミッションを深く理解し、それに沿った自部門の方針を考え、活動ビジョンを打ち出す。メンバーとコミュニケーションをとりながらビジョンを浸透させ、結果を出すために必要なチームプレーを組み立てる。これを実現するためには、ある程度の時間がかかることを理解しておくべきです。決して焦る必要はありません。

しかし何か1つでもいいので、短期間に成果を出すことも重要です。これは「クイック・ヒット」とか「アーリー・ウイン」と呼ばれていますが、小さな結果を出すことよりも、上司や部下から信頼を得ることができます。「この人に任せておけばよい」と。

2. 人を信じても、「人のすること」は信じない

間違った意思決定をする原因の1つに、判断材料となる事実が不足していたこと、あるいは事実を間違って伝えられたことが挙げられます。間違った事実から、正しい判断は生まれようがありません。

事実をしっかり把握するために有効なのは、現場の社員から直接話を聞くことです。現場にこそ事実があります。人づてに聞くと、どこかで途中の人の意見や判断が加えられたり、大切なことが漏れて伝えられたりします。ですから直接、一次情報として聞くことが大切です。

人を信じても、人のすることを信じてはいけない。これを肝に銘じるべきです。人はときとして間違えます。判断基準も人によって異なります。相手の言うことをうのみにすると、大きな判断ミスにつながるのです。必ず相手は間違うかもしれないと思い、途中でチェックや確認をするのです。

報告を受けるときも、「事実」と報告者の「意見」をきちんと分けて聞く必要があります。たとえメンバーに嫌がられても、細部までチェックし、こまめに報告を受けることが大切です。メンバーにしてみれば、信用されていないのかと思うかもしれませんが、正確な判断をするためには不可欠なことです。

(次回に続く)

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プロフィール

岩田松雄
岩田松雄

1958年生まれ。大阪大学経済学部卒業後、日産自動車株式会社に入社。同社にて幅広い業務を経験後、米国UCLAアンダーソンスクールに留学。その後、外資系コンサルティング会社ジェミニ・コンサルティング・ジャパン、日本コカ・コーラ株式会社役員を経て、株式会社アトラス(ゲーム会社)の代表取締役として、三期連続赤字の企業を再建。さらに株式会社タカラ常務取締役を経て株式会社イオンフォレスト(ザ・ボディショップ)の代表取締役に就任。店舗数を一気に増加させ、売上を67億円から約140億円に拡大。そしてスターバックスコーヒージャパン株式会社のCEOとして「100年後も光輝くブランド」というコンセプトを掲げ、業績を急回復させ再成長させる。これらの功績が認められ、UCLAビジネススクールより全卒業生3万7000人の中から「100 Inspirational Alumni」
('92年卒業生ではただ一人)に選出される。
現在は株式会社リーダーシップ・コンサルティングの代表取締役CEOであり、次世代のリーダー育成に注力する傍らで、立教大学の特任教授として教鞭もとっている。主に「リーダーシップ」に関するテーマにてこれまで著書は30万部を超える『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』はじめ多数。「リーダーシップ」に関する日本の第一人者として日本のビジネス界を牽引する人物である。
HP: http://leadership.jpn.com
Facebook: https://www.facebook.com/Leadership.jpn?pnref=lhc

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