リーダーシップというと、どうやって人を管理し、人を動かすかをイメージしてしまう方も少なくないと思います。しかし私は、人を管理する前に、自分自身を管理する必要があると思っています。
つまり「人を治める前にまず、自分自身を修める必要がある」のです。自分を修めることもできないのに、人を治められるはずなどありません。私自身、まだまだなのですが、それでも自分を修めようという意識を常に持っていました。自分のいろいろな私心や欲望を抑えて、できるだけ周りのため、組織のためになることを考えるようにしました。そのため若いときから、論語や大学小学のいわゆる中国古典や陽明学者である安岡正篤先生などの本も読むようにしてきました。
人を引っ張っていくときのベースとなるのが、私心をなくして、世のため人のためチームのためという強い信念を持つことが大切なのです。
かといって「俺についてこい!」と言って強いリーダーである必要はないと思います。組織が目指す「ミッション」の実現のため、自分で自分を修めようと努力しコツコツ頑張っていると、周囲から推されて自然とリーダーになっていくのです。結果的にそうなっていく。それが最も自然であり、理想的な形のリーダーだと思います。
自分にできないカリスマリーダーシップなど、発揮する必要はありません。まずは自分にできることからコツコツ努力する。もし自分に足りないところがあれば、それは謙虚に周りの人に助けてもらう。それこそが、「ついていきたい」と思われるリーダーシップの第一歩になると私は思っています。
リーダーシップというものにはいくつかの型があり、『俺についてこい!』というカリスマリーダーもいれば、サポーター的な発想でみんなの意見を聞くタイプのリーダーもいます。例えば、西郷隆盛はサポート型の典型的な1人です。とにかくみんなの意見をよく聞く。そして最後には『自分が責任をとるから』と部下にすべてを任せる。そういうリーダーの型もあるわけです。
それではどういう型が一番よいのかというと、そのときの周囲の状況であったり、部下の特質であったり、あるいは、何を目的としているかによってリーダーシップの型を変えていくべきなのです。
一番分かりやすいのが、戦争の状態です。戦争中にみんなを集めて『どう思う?』なんてやっている暇はありません。トップ自らが瞬時に意思決定して、『狙え、撃て、突撃!』です。強いトップダウンの指揮を執るべきです。しかしいつもそういうことをやっていると、人は育ちません。リーダーの仕事は実績を上げることと部下を育てることです。トップダウンばかりしていると部下は何も考えなくなってしまいます。なので、平時のときはできるだけ『みんなはどう思う?』でいくとか、場合によってはその人に任せてしまうとか。そうやって部下は育てなければなりません。
また部下もいろいろな特質があって、頭のいいコンサルタントタイプの人は、自分が納得しないと動かないタイプです。このような人には、理路整然と理屈で説得しないといけません。私はB型ですが、人から細かなことを言われれば言われるほど、やる気を失ってしまうタイプです。逆に『岩田に任せた!』と言われると、“ヨシ!”と思って、“この上司には絶対に恥をかかしちゃいかん”と頑張ります。
よって、そういう周囲の状況であったり部下の特質であったり、そういった要素によってリーダーシップの型を変えられことが理想だと思います。しかし今まで『俺についてこい!』と言っていたワンマンが、ある日突然『君たちどう思う? 教えて?』なんて言い出したら、みんなは不安になってしまいます。そういったときには、人を育てることが上手い人に任せてしまうのです。
逆に普段は温厚な人が、どうしてもリストラをやらなくてはならないという場合には、鬼軍曹のような人を参謀に据えて、厳しいことはすべてやってもらい、役割を終えたら『ご苦労さん』と元の立場に戻ってもらうのもよいと思います。
つまり自分の得意なリーダーシップの型を知り、それが現状にそぐわないと思えば、マッチした人を自分の周りにおけばよいのです。
(次回に続く)