最近の若手の傾向として、「上昇志向が弱い」ということが挙げられます。
また、昇進やリーダーに抜擢しようとしても、「私にできますか?」と喜ばない若手が増えてきていると嘆く上司の言葉をよく聞きます。
そもそも若手にとって出世することや給料があがることは、興味の対象ではなくなってきているのです。昔のように仕事を頑張って成果をあげ、同期よりも先に出世するというような価値観を、今の若手はあまり持っていない傾向にあります。
理由としては、出世しても面倒な仕事が待っているだけだと感じているからです。
それを我慢できるだけの給料がもらえれば納得もできそうですが、若手にとってはそう感じていない人が多いと言えます。
あるアパレル会社の事例ですが、派遣できた若手の女性がとても優秀なので、「うちで社員として働かないか?」と聞いてみたそうです。
それに対して即座に、「お断りします。お気持ちは嬉しいのですが、責任のある仕事は遠慮します」と言われ、言い返すことができなかったとのことです。
派遣から社員になることが出世かといわれると、そうではないかもしれませんが、雇用形態や給料が安定するというメリットがあります。しかしそれ以上に、一つの場所にとどまり、責任のある仕事をすることにデメリットを感じて、正社員への勧誘を断ったのです。
また、上昇志向が弱いもう一つの理由として、彼らの親世代の今の状況が魅力的でないことも挙げられます。今の若手の親世代は、50代以上になりますが、ちょうどバブル世代になります。その頃はまだバイタリティもあり、出世やお金を稼ぐことにモチベーションをもった若者が多数いました。
しかし、リーマンショック以降、雇用形態も変わり会社のために頑張った父親世代の状況は、将来自分もそうなりたいと思わせるものではなくなってしまいました。
平成25年度版の厚生労働白書の若手アンケート結果でも、企業に勤めるうえで大事なことは「終身雇用を求める」が第一位でした。その理由は、「雇用の不安がなく安心して働けるから」と「人生設計が立てやすいから」だそうです。
老後の不安を抱えることの怖さを考えると、挑戦よりも「安定志向」となってきているのです。
働き方はすでに多様化しており、同じ会社の中で出世することはそれほど魅力的ではなくなってしまいました。
逆に「出世は、自分の活動を縛りかねないからリスクが高い」と感じている若手もいます。そう考えれば、今の仕事を無難にこなせればそれでいいと考えるのは当然です。
なので、多くの若者は難しい課題に挑戦するような意欲をそれほど持たないのです。そして、今の仕事を無難にこなしていければ問題ないと考えるのです。
難しいことに挑戦して成功するよりも、挑戦しないで失敗の心配がないことのほうが大事であり、日々の仕事をコツコツと積み重ねて、毎日を安定させることのほうが重要なのです。