誰しも望む未来があります。しかし、その未来を実現できる人は、ひとにぎりだと考えていませんか? そんなことはありません。未来の自分を変えるヒントは、あなた自身の中にあるのです。過去に「目をつけ」「掘り下げて」「引き出す」。このプロセスの繰り返しが、あなたの未来を大きく変えるのです。ここでは、自分自身を「振り返る」ことで見えてくる、あなたが望む未来の導き出し方を紹介していきます。そう、あなたの過去は宝の山なのです。
振り返るときには、「ある日、あるとき、ある一秒間」を選ぶ必要があります。
あらゆる出来事は、ある一定の時間継続し、変化していきます。
商談であれば、商談の申し入れがあり、準備があり、面談の場に向かう移動の時間があり、商談場所への到着、お客さまとの対面、挨拶、名刺交換、自己紹介、雑談、自社紹介、お客さまのご要望ヒアリング、自社商品・サービスの提案、意見交換、次回面談の日程調整、挨拶、商談場所からの退場、移動……。このように、一つの出来事でも変化し続けていくわけです。変化の過程をずっと追っていくと、次第に焦点がずれていったり、目的がわからなくなってしまいます。
そのため、大まかに出来事の局面を5つに分けて、どの局面のどの一場面かと考えると、味わうべき最適な場面を見つけることができます。
出来事の5つの局面
1.事前
2.始点
3.過程
4.終点
5.事後
大まかに見当をつけて、その当時のその瞬間がどうだったのかを具体的に思い出し、味わいます。
振り返りは、文字通りの振り返りだけで終わってしまっては道半ばであり十分ではありません。
振り返りは、「引き出し」にまで至りたいのです。
では、何を引き出すのか。それは知恵であり価値です。
次の3つの要素が含まれている知恵や価値を引き出したいのです。
1.実行可能
2.利用可能
3.応用可能
まず、振り返りによって得た知見が実行可能なものであること。そのまま実行できる知恵や価値を引き出すことができたらいいですね。
たとえば、これからのビジネスで必要な情報を探していたときに振り返りを行い、かつての恩師の人脈をたどったら必要な人に会えそうだ、ということに気づいたとします。恩師の連絡先を調べて連絡することは、実行可能です。
また、直近の失敗を振り返り、何がまずかったのかを掘り下げます。自分の失敗であれば、失敗しない方法を導き出します。
これは、企業の本社から駐在所まで、ネット注文で鉛筆1本からお届けすることを売りにしている、オフィス文具の通販会社の例です。
仮に、顧客企業から「コピー用紙を1箱発注したはずが、10箱届いた」というクレームを受けたとします。注文の入力データを調べると数量は「1」でした。しかし、その商品番号は、1箱のコピー用紙を10箱まとめ買いするための商品番号だったのです。
その原因を調査していくと、カタログの表記が、1箱の商品番号よりも、10箱パックの商品番号の方を大きく表示していることから、お客さまが1箱欲しい場合でも、10箱パックの商品番号を入力してしまうようだとわかりました。
そこで注文システムの変更をし、商品番号入力後、ポップアップ画面を表示し、10箱パックであることに注意を喚起するようにしました。
お客さまの失敗は、ありうるものとして受け止め、その発生プロセスを振り返ることで、原因の特定、改善策の策定をしていきます。
この事例は、お客さまの事務用品発注の仕組みに関するミスです。しかし、これを注文の仕組み全般においても起こりうることだと、抽象度を一段高めて考えることができれば、あらゆる資材や部品の発注から販売までの、サプライチェーン・システム改善のアイデアに活かすことができます。
このように、一つの失敗からその本質的な構造を取り出して、一段抽象度の高い知恵を引き出すことができれば、他の事例にも応用することができます。応用できるところまで問題の本質に切り込み、知恵を引き出すことができると、それは「応用可能」だということができます。
うまくいっているときはいいのですが、何かに行き詰まったり、転機を迎えたときには、自分の依って立つ価値観が揺らいでしまうことがあります。
たとえば、突然のリストラ、突然の配置転換、突然の降格など。
「何のために仕事をしてきたんだろう」
「本当にやりたいことは何だったんだろう」
「これからどうしていったらいいのだろう」
もともとは目の前の現実が変化したために揺らいだのであっても、自分の価値観や判断基準が揺らいでしまうと、目の前の状況にうまく対処できなくなります。
そんなときは、今一度自分の仕事に対する価値観を振り返ることが有効です。
転換期において、仕事に対する価値観を振り返る際には、範囲を仕事や職業に限定せずに、幼少期のことも対象にして振り返るのが得策です。
次に挙げる各項目を思いつく限り書き出してみましょう。
・やっていて楽しかったこと
・好きだと思えたこと
・得意だったこと
・没頭していたこと
・憧れていた仕事や職業
書き出した言葉を見ながら、特に胸に響く言葉を3つほど選び出して、それぞれの言葉から思い出される風景や出来事、当時の人間関係などを思い出してみましょう。
もしかすると、4歳ぐらいの頃に公園の砂場で友達と遊んでいて、砂の山やダムをつくっていたことを思い出すかもしれません。
そのときの風景を、想像で補いながらその場にいるかのようにありありと思い出し、味わってみましょう。
その場面を味わってから、その場面の何がいいのか、どうしていいなと感じられたのかを、ひと言でまとめてみましょう。
ひと言でまとめた言葉と仕事のやりがいとを結びつけて考えてみると、仕事において何を大事にして、何に価値を置きたいのかが見えてきます。
これは、仕事に出会う前の自分が持っていた価値観です。この感覚はあなたの仕事に対する価値観の一部を構成していながら、現在ではそれほど満たされていない可能性があります。
幼い頃のことを振り返ったら、これまでの仕事の場面で、同じく先ほどの項目に相当する出来事を思い出してみましょう。仕事における価値観が見つかってきます。