過去の自分を振り返る人だけが成功する理由

3つの視座を持てば「他人の気持ち」がわかるようになる

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誰しも望む未来があります。しかし、その未来を実現できる人は、ひとにぎりだと考えていませんか? そんなことはありません。未来の自分を変えるヒントは、あなた自身の中にあるのです。過去に「目をつけ」「掘り下げて」「引き出す」。このプロセスの繰り返しが、あなたの未来を大きく変えるのです。ここでは、自分自身を「振り返る」ことで見えてくる、あなたが望む未来の導き出し方を紹介していきます。そう、あなたの過去は宝の山なのです。 

視座の転換

「目をつける」「掘り下げる」「引き出す」の、どのプロセスでも使える技術に「視座の転換」があります。
視座の転換は、私たちの、ともすれば狭くなってしまう視野を広げてくれます。普通に暮らしていれば、私たちは自分の視座からものを見て、それで事足りると思っています。
しかし、他人は他人の視座からものを見ているのです。世界の見え方が違います。そもそも一人ひとり見ている世界が違うのだという前提に立つとき、他人の視座からものを見てみようという態度はとても重要です。
視座はそれこそ無限にあるわけですが、単純化すると次の3つに分類できます。覚えておきましょう。

1.自分の視座
2.他人の視座
3.俯瞰の視座

「自分の視座」は、まさに自分のものだからわかっているように思うかもしれませんが、よくよく状況を臨場感をもって味わってみると発見があります。過去の自分の視座もあれば、未来の自分の視座もあります。

「他人の視座」は、仲間内の他人もいれば、第三者としての他人もいます。味わおうとしている場面の中に登場する人物の視座です。この視座からは、自分のことを外側から見ることや、その人が感じていることを味わうこともできます。

「俯瞰の視座」は、状況全体を俯瞰できる視座のことです。具体的に、思い出の場面の中の一点に設定しても構いませんし、全体を把握したときにとりうる視座でも構いません。
過去の一時点において、そのときの関係者各々の視座を味わっていくことで、当時の状況の全体像が立体的に感得され、認識が拡大します。

かつて、A社のB部門は人間関係が良好だったとします。そのときの関係者一人ひとりの視座を味わってみると、どうして人間関係が良好だったのか、何がよかったのか、どんなことがあったからよかったのかということが見えてきます。

「C部長の気持ちを味わってみると、息子や娘のように部下をかわいがっているなあ」
「D先輩は、手本を見せようと頑張っている。そういえば、内勤の業務課の人たちに、お土産としてよくシュークリームを買っていたな」
「Eさんは、営業途中に宴会グッズを買ったりして、懇親会の企画を練っていたなあ」
「Fさんは、仕事きっちり」
「Gさんは、いつも部長から怒られていたけれど、それほど嫌な気はしていなかったみたいだ」

「全体を俯瞰してみると、ああ、当時は業績も好調で、上長の機嫌はいいし、若い社員が多くて、みんな元気で、よくカラオケに行ったり、懇親会を開いていたな」

しかし現在は、そのA社のB部門では人間関係が険悪な状態だとします。その場合、関係が悪化し始めた時点に焦点をあてます。そのときの各人の視座を味わっていき、どうして関係が変化したのかについての認識を得るのです。

「C部長の視座から見てみると、部下の気持ちがあまりわからない感じがするなぁ。数字をあげろと常に部長会で追及されていて、いつも疲れているようだ」
「Eさんは、最近では懇親会もないので、あまり楽しさを感じていないみたいだ。仕事より家庭を優先している感じがする」
「古参のHさんは、体力がないからいつも疲れている。それなのに行動が遅いと怒られていて、音をあげたい気分だ」
「若いJさんは、パソコンが得意で重宝されているけれどマイペースで、部門のことはあまり気にしていないみたいだ」

「全体を俯瞰してみると、今では、中高年の社員ばかりだなぁ。ここのところ業績はふるわないし、飲み会もほとんどないなぁ。若い人もおとなしい人が多いし、本部からの指示が多すぎて、みんなこなせずにストレスを感じているな」

時間を未来に進めて、そんな人間関係を改善したいとするならば、改善されたあとの各人の視座を体験してみます。怒っていた人は、どうして怒りを静められたのでしょうか? 無視していた人は、どうして無視しなくなったのでしょうか。各自の視座から体感し、考察します。

「C部長の視座から見たら、部下の気持ちがよく理解できて、冗談を言ってみんなで笑いあいながら、数字もあがって、部長会でも鼻高々だったらいいだろうな」
「Eさんには、もう一人くらい宴会を企画する仲間がいて、いろいろなアイデアで余興を企画できていたら、いきいきとするだろうな」
「Hさんは、体力にあった仕事の仕方を認めてもらえて、自分らしいやり方で数字をあげられていたらいいだろうな」
「Jさんは、マニアックな趣味について語ってもみんなが理解してくれたり、興味を持ってくれていたらもっと居心地がいいだろうな」

「全体を俯瞰してみて、もしも望ましい未来だったら、本部からの指示を一人ひとりが理解していて、自分らしいやり方で取り組んで、部内ではお互いに励まし合い、苦手な部分を補い合って、みんなで目標を達成しようと気持ちを一つにしているとよさそうだ。朝なんて、元気に挨拶しているし、活発なミーティングで笑いが絶えない状態だろうな」

このように具体的に思い描いていくと、まだ起きていない、未来の望ましい変化について、必要な情報が得られます。必要な情報とは、何がどうなっていて、誰が何をどのようにしているのか、一人ひとりが何をどう感じ、何をどう考えているのかという、具体的な状況の詳細のことです。
それがわかれば、実現するために何をすればいいのか、今から何をしたらその状況に近づけるのかを考えていくことができるのです。


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プロフィール

藤由達藏
藤由達藏

1991年早稲田大学卒業後、文具・オフィス家具メーカーPLUSに入社。営業職、本部企画職、全プラス労働組合中央執行委員長等を経て、2013年9月に独立。コーチングを核に、各種心理技法や武術、ヘミシンク、労働組合、文芸・美術・音楽創作等の経験を統合し、「気分と視座の転換」を重視した夢実現応援対話技法を確立。2016年9月、株式会社Gonmatusを設立。夢実現応援家®を養成し、全国のビジネスパーソンの夢実現を応援している。

著書

過去の自分を振り返る人だけが成功する理由

過去の自分を振り返る人だけが成功する理由

藤由達藏 /
「過去の自分は宝の山である」をキーワードに、自分自身を振り返ることで、未来...
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