伯爵家の一人息子であるレナルドは、いずれは家督を継がねばならないと思いつつも勝手気ままに振舞っていた。心を許せるのは乳母であるニコルとその娘のディディエだけ。ニコル亡き後もメイドとなったディディエのことを実の妹のように可愛がって来た。けれど時が経つにつれて、レナルドもディディエがいつまでも子供ではないと意識し始めるが――。
登録日 2016.10.13
江戸、浅草にて――妻を亡くしたやもめ浪人の親信(ちかのぶ)が長屋に戻ると、刀傷を負って逃げ込んできた若侍が倒れていた。放り出すわけにもいかず、手当てをする。気がついた若侍は、名を幸之進(ゆきのしん)といい、眉目秀麗ではあるものの、侍と呼んでよいものかというほどには侍らしからぬ男だった。傷が治ったのなら出て行けばいいものを、居心地が良いと言っては居座る。厄介な男は、親信の子供たちを手懐け、周りを引っかき回し、そして何故だか妙に馴染んでは長屋暮らしを満喫するのであった。
登録日 2021.07.23