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彼にしてやりたかったことはただ一つ――。もう少しだけ優しくしてやりたかった……。
ベルリンに住む日本人青年ヴァイオリニスト、神坂薫の元に、弟だと名乗る金髪碧眼の少年が訪れた。
薫のパートナーであるドイツ人青年、リヒャルトは、その少年の言葉を鼻先であしらい、素っ気なく追い返す。
だが、その少年はニューヨークに住む薫の兄、透と結婚したアメリカ人女性、アニーの弟で、薫にも義理の弟たるエリオットだった。
薫は、かつて愛した女性、兄と結婚したアニーと重なるエリオットの姿に、冷たくエリオットを撥ね付ける。
そして、悲劇は起こった。二人が奏でるのは朝凪の協奏曲(コンツェルト)。
陸からの風と海からの風が代わる時、一時、風の止まる朝凪のように、静かに逝った……。
※R-15 一部、暴力や性描写があります。苦手な方はご注意ください。
文字数 61,145
最終更新日 2022.01.09
登録日 2021.12.30
先生、ぼくたちは幸福だったのに、異常だったのですか?
周りの身勝手な人たちは、不幸そうなのに正常だったのですか?
世の人々から、可ではなく、不可というレッテルを貼られ、まるで鴉(カフカ)を見るように厭な顔をされる精神病患者たち。
USA帰りの青年精神科医と、その秘書が、総合病院の一角たる精神科病棟で、或いは行く先々で、ボーダーラインの向こう側にいる人々と出会う。
可ではなく、不可をつけられた人たちとどう向き合い、接するのか。
何か事情がありそうな少年秘書と、青年精神科医の一話読みきりシリーズ。
大雑把な春名と、小舅のような仁の前に現れる、今日の患者は……。
※以前、他サイトで掲載していたものです。
※一部、性描写(必要描写です)があります。苦手な方はお気を付けください。
※表紙画:フリーイラストの加工です。
文字数 518,084
最終更新日 2018.08.23
登録日 2017.06.10
泣き叫び、哀願し、媚び諂い……思いつくことは、何でもした。
それでも、男は、笑って、いた……。
一九八五年、華南経済圏繁栄の噂が広がり始めた中国、母親の死をきっかけに、四川省の農家から、二人の幼子が金持ちになることを夢見て、繁栄する華南経済圏の一省、福建省を目指す。二人の最終目的地は、自由の国、美国(アメリカ)であった。
一人は国龍(グオロン)、もう一人は水龍(シュイロン)、二人は、やっと八つになる幼子だ。
美国がどこにあるのか、福建省まで何千キロの道程があるのかも知らない二人は、途中に出会った男に無事、福建省まで連れて行ってもらうが、その馬車代と、体の弱い水龍の薬代に、莫大な借金を背負うことになり、福州の置屋に売られる。
だが、計算はおろか、数の数え方も知らない二人の借金が減るはずもなく、二人は客を取らされる日を前に、逃亡を決意する。
しかし、それは適うことなく潰え、二人の長い別れの日となった……。
※表紙はフリー画像を加工したものです。
文字数 85,594
最終更新日 2018.04.13
登録日 2018.02.25
『二夜 蜃の楼』に登場する幻術師の蜃は、同時掲載作『魔窟降臨伝』R-18 に登場する蜃と同一人物です。
死に切れない宿命を持つという一族の少年、舜と、その父親だという青年、黄帝。
中国の山奥、雲海を臨む最峰の頂で黄帝と暮らしていた舜は、やっとのことで、街へ降りる許しをもらい、勢い込んで上海へと向かう。
しかし、そこへ現れたのは、炎帝と貴妃という、『同族』の二人であった。
凄まじい炎と、闇の衣を纏う二人に襲われ、舜は《聚首歓宴の盃》と、《朱珠の実》の秘密を渡すように迫られる。
この世の大初から存在しているのではないかと云われる黄帝は、珍しいものや、曰くつきのものをたくさん持っていた。そして、そんなものをたくさん持っている黄帝の被害に遭うのは、その息子たる舜であったのだ。
貴妃に腕を切り落とされた舜は、一旦、山へ戻り、腕を取り返すために、《聚首歓宴の盃》と《朱珠の実》を自分に預けて欲しい、と黄帝に頼む。
しかしそれは、自ら血を求めるという、恐ろしい曰くつきの盃であった。
それを欲しがる炎帝とは。
そして、そんなものを持っている黄帝とは。
舜は、敵地へと乗り込むが……。
※以前、他サイトで掲載していたものです。
※一部、性描写(必要描写です)があります。苦手な方はお気を付けください。
※表紙画:フリーイラストの加工です。
文字数 820,451
最終更新日 2017.12.26
登録日 2017.08.30
皮下注射器がそこら中に転がるローマの路上で拾った少年――。その少年も、薬(ヘロイン)に溺れる静脈注射常習者(メイン・ライナー)だった。
少年はフィンという名前以外何も語らず、
「薬(ヘロイン)をくれれば何でもする……」
と、サルヴァトーレの情欲の対象となり、サルヴァトーレは、彼の金の髪と碧い瞳に、幼い頃に別れたままの母の姿を重ね、彼をシチリアに連れ戻る。
ファミリーでは、ニューヨークでの麻薬市場の『諸場代(タンジェンテ)』のことで、コルレオーネ系ファミリーとの衝突が起ころうとしていた。
すでに薬(ヘロイン)なしでは過ごせないフィンを連れ、 ナターレ(クリスマス)の休暇も兼ねて再びローマに訪れた時、フィンがガンビーノ一家(ファミリー)に拉致された。
シシリー・マフィア、インツェリッロ・ファミリーのナンバー.2として君臨するサルヴァトーレは、身代金引き渡しの場所で思いがけない真実を聞く。それは、何も語ろうとしなかったフィンの正体だった。
※以前、他サイトで掲載していた作品です。
※表紙はフリー画像に加工をしたものです。
文字数 29,105
最終更新日 2017.11.19
登録日 2017.10.31
※この作品に登場する『幻術師の蜃』は、連載中の『華夏帝王奇譚』に登場する『蜃』と同一人物です。
本土への返還を一年後に控えた一九九六年六月三〇日の香港で、三年前に取り壊されたはずの魔窟、中英間の紛争の種であった無法地帯、九龍城砦が甦った。
売春、麻薬、賭博、武器、殺人、不法入国者……あらゆる悪の温床である、東洋最大で最後のカスバが、雨と共に現れたのだ。
北京、英国、香港当局が戸惑う中、退去させられた住人たちが、続々とその魔窟に戻り始め、再び以前以上の魔窟を形成する。
九龍城砦で生まれた美貌の少年、真性のサディストと謳われる輪(ルン)も、その一人であった。
そして、もう一人、魔窟の主と呼ばれる無免許の鍼灸医の老婆。
彼ら二人の元に、伝説の幻術師、蜃(シェン)という玲瓏な青年が現れる。
九龍城砦を破壊する、という蜃の言葉に、輪と婆婆は、自分たちの住処を守るために戦うことを決めるが、そこへまた三人、異国の旅人が訪れる。
一人は賢者カフヴァと呼ばれる魔法使い(ドルイド)、もう一人は、グローヌと呼ばれる女魔法使い(ドルイダス)、そして、吟遊詩人(バード)のトルウ――いずれも、遠きエリンより伝えられた知恵を操る、ケルトの末であった。
彼らの目的は、《再生の車輪》が起動したことによって甦った九龍城砦を消滅させ、元の建造物を取り戻し、在るべきものを在るべき場所へ存在させる、ということであり、そのために、九龍城砦で廻り始めた《再生の車輪》を見つけ、それを起動させた者を見つける、ということ。
それを知った輪と婆婆も、彼らの目的を阻止するため、《再生の車輪》を捜し始める。
輪はネイルと呼ばれるナイフと邪眼を武器に、婆婆は針と気功を武器に、カフヴァとグローヌは魔法を武器に、トルウは呪歌と竪琴を武器に、戦いを繰り広げながら、同じものを求めて行く。
※一部、性描写(必要描写です)があります。苦手な方はお気を付けください。
※表紙画:フリーイラストの加工です。
文字数 106,582
最終更新日 2017.09.07
登録日 2017.08.29
サンフランシスコの精神病院に務める青年精神科医、椎名涼は、JNTバイオメディカル研究所に籍を置く女性科学者、ドナを送った帰りに、浮世離れした少年が検査衣姿で車に忍び込んでいるのを見つける。その少年は自分のことを何も語らず、外の世界のことも全く知らない謎の少年だった。検査衣姿でいたことから、椎名は彼が病院から抜け出して来たのではないか、と疑うが、病院に彼がいた事実はなく、行き場のない彼を椎名は自分の部屋に置くことにした。
純粋無垢で、幼子のような心を持つ少年は、椎名の心の傷を癒し、また、彼自身の持つ傷を椎名も知る。それは、ドナの務める研究所の所長、テイラーが行っていた社会倫理を逸脱した遺伝子組み換え実験であった。
椎名と少年――エディはテイラーに捕らわれ、最終実験が始まった。
神話の水蛇(ヒュドラー)と現在棲息するヒドラ。それは学者の夢であった。
※以前、他サイトで掲載していたものです。
※一部、性描写(必要描写です)があります。苦手な方はお気を付けください。
※表紙画:フリーイラストの加工です。
文字数 120,399
最終更新日 2017.08.19
登録日 2017.08.11
今から一六〇年前、有害宇宙線により発生した新種の癌が人々を襲い、性染色体〈XX〉から成る女は絶滅した。
男だけの世界となった地上で、唯一の女として、自らの出生の謎を探る十六夜司――。
わずか十九歳で日本屈指の大財閥、十六夜グループの総帥となり、幼い頃から主治医として側にいるドクター.刄(レン)と共に、失踪した父、十六夜秀隆の行方を追う。
司は一体、何者なのか。
司の側にいる男、ドクター.刄とは何者なのか。
失踪した十六夜秀隆は何をしていたのか。
柊の口から零れた《イースター》とは何を意味する言葉なのか。
謎ばかりが増え続ける。
そして、全てが明らかになった時……。
※以前に他サイトで掲載していたものです。
※一部性描写(必要描写です)があります。苦手な方はご注意ください。
※表紙画:フリーイラストの加工です。
文字数 696,570
最終更新日 2017.06.17
登録日 2017.04.08
その日【アルカナ】と呼ばれるカードを拾ったことで、幸せな生活が一転した。妻が消え、自宅は全焼(死体あり)、怪しい男にカードを盗られ、殺しをも厭わない連中に拉致される――。
K大学の法医学教室に籍を置く青年、郡司秋良は、車道に突然現れた男が、走って来た車に撥ね飛ばされるのを目撃し、次には妊娠を告げられたばかりの妻、紗夜が目の前から消えるのを目撃する。
現れた男に、消えた妻――。
後に残ったのは一枚のタロットカードだけ――。
紗夜を捜す手掛かりであるその【アルカナ】は、計り知れない力を持つ切り札(トランプ)だという。
郡司にその話を聞かせた男は、アルカナを使って紗夜と同じように消えてしまった。それはテレポーテーション能力を秘める切り札(トランプ)だったのだ。
郡司の手に残されたのは、消えた男が残していった神秘(アルカナ)、『犬の言葉が解る』という何の役にも立たないカードが一枚。
K大学の法医学教室に司法解剖を頼みに来る藤堂刑事や、謎のオカマ、アザミ、雑種のシバの力を借りながら、郡司は妻の行方を捜すが…。
※表紙画:フリーイラストの加工です。
文字数 110,067
最終更新日 2017.06.03
登録日 2017.01.07
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