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──ああ、手が震えてる。
僕の目の前に、知らない生き物がいる。しかも貴族のお抱え魔術師、『ノルルード』である僕でさえ知らない、術式(ノール)で召喚されて。
本当は字が汚くなるのを、必死に抑えてこれを書いているんだ。そうしないと、これを読んでいる君がただのゴミクズだと思って捨ててしまうかもしれないから。そう、僕は『お導き』が欲しいんだ。この文章を読んでいるきみ、君から。
何処かに書かなくてもいい。こうじゃないかなって、思うだけでもいいから。僕が術式を使って、手繰り寄せて、どうにか解決策を編み出してみるから。
だからお願い。この文章を捨てないで。
文字数 5,829
最終更新日 2021.07.26
登録日 2021.07.25
カタカナで音を写してみたが、読めているだろうか。何せ私自身、これをあなた方の言葉で訳すのは初めての試みであるのだから。私はあなた方の国や文化、果てはその歴史に興味を持っている。何故なら、私の住む国と、あなた方の国が、似たような言語を使っているからである。
しかし似てるといっても、かなりの差異がある。あなた方にもし、「としゅがんにいて、ししたんめ」と私が頼んだとしても、あなた方はこの言葉の意味通り、座って私の話を聞く姿勢を見せるだろうか。知らない言葉を聞いて、怪訝そうに私を見るはずだ。ならば私が、あなた方の言語を学ばなければならない。
というわけで私は勉学のため、ある一つの英雄伝説を、あなた方の言語で訳すことにした。文化交流の一環として、訳したものを是非読んで貰いたい。その物語の冒頭はこうである。
東大陸(きかたつち)
「メリア公国(きみぐに)」
なる国の
上つ果てなる
砂浜に
森生みたりし
村ありき
其が村の名は
「ナケマメラ」
大樹(おおき)にありし
図書館(ふみどころ)
司書(ふみつかさ)なる
少年(おとこ)あり
此が叙事詩(つたえ)
白蓮(しらはちす)なる
様持(たも)つ
剣(つるぎ)佩(は)きたる
司書(ふみつかさ)の
旅話(たびばなし)たるぞ
我今伝ふ
文字数 3,027
最終更新日 2018.10.21
登録日 2018.10.21
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