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1巻

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 ちなみに祖父母叔父叔母みーんな「すごい」人、だったりする。みそっかす、なのは私だけ。しかも驚くべきことに、彼ら彼女らは顔面も整ってらっしゃるのです。同じ遺伝子のはずなのになぁ。少しバランスや配置が変わるだけで、こうも平凡な顔立ちになりますか!? っていうくらいに、私はとても普通。とてもとても、普通。

「……普通であることは、嫌いではないんです」

 家族は優しい。というか、親戚全体で(甥っ子姪っ子が生まれる前は)一番年下、末っ子の私を可愛がってくれている。いまも。

「友達もできました。仕事も希望の職につけました。なのに」

 どうしても比べてしまう。きらきらしい宝石と、嫌になるくらいに平凡な私とを。

「俺は」

 修平さんはとても難しい顔をしてる。難しいっていうか、不思議そうな顔を。

「君を、平凡だと思ったことはないのだが」

 心底不可解です、って顔をしてる修平さんに、私は言う。

「け、けど! お姉ちゃん、美人でしょ?」

 そんなことを聞いちゃうのは、なんでだろ。……もうお姉ちゃん結婚してるから仕方ないけど、もし独身だったらお姉ちゃんと結婚したかったんじゃないかな? 長官の娘、っていう同じ条件なら、美人で頭が良いほうを選びたいに決まってる。

「……そうだったか? 美保に似てるから、うん、綺麗な人なんだろう」
「えっと、そんなに似てないと思うのですが」

 パーツは似てるとは言われる。配置ですよ問題は配置。

「目が似てるなとは、思った。顔合わせと、結婚式でお会いしたな」
「え? はい」
「……顔合わせか。懐かしいな」
「三ヶ月前ですが」

 割と最近なんじゃないかなあ。

「あのとき美保は、葡萄色えびいろふりそでだった」
「あ、はい」
「見合いのときのふりそでも似合っていたが、うん、あんな色も似合うのだなぁと感心した」

 なんか話がずれてる?

「そうでしたか? なんか、あんまり似合ってなかったような」

 私には少し、上品すぎる色使いだったような気もしていた。

「そんなことはない。ほら」

 修平さんが見せてきたのはスマホの画面。ていうかロック画面。え、壁紙にしてます? 私のふりそで? ……というか、二人の写真。なんだか変な顔で笑ってる葡萄色えびいろふりそでな私と、仏頂面ぶっちょうづらでかっちりスーツな修平さんと。

「……初めて二人で撮った写真ですね?」

 修平さんはなんでか視線をそらして頷いた。

「ていうか、写真あんまないですよね」

 二人で撮ったのなんて、このときと、つい最近の結婚式くらいじゃないかな。

「……その」

 その声に、修平さんを見上げる。

「これからは、たくさん、撮ろう」
「え? はい」
「うん」

 なんだか満足気に、でも生真面目に修平さんは頷いて私を抱きしめる。きゅう、と――私はもがいてその腕から逃れた。

「美保?」
「撮りましょうか、修平さん」

 私は自分のスマホをかざす。インカメラを起動して。

「記念日ですから」
「記念日?」
「同居記念日?」

 私が笑うと、修平さんはやっぱり生真面目に無愛想に、インカメラを見つめて頷いてくれた。

「じゃー、ハイチーズでいきますよ」

 せえの、そう言って私はぱしゃりと画面をタップする。
 同居記念日の二人の写真は、笑顔の私と無愛想な修平さん。でも、彼のその唇がほんの少し緩んでることに私は気付いていて、それがなんだかとても嬉しかったり、した。
 スマホの写真を眺める。今までの彼女さん……とかとは、こういうのあんまりなかったのかな……なんて、考えて。――違和感。ううん、違和感、っていうか。これは。このもやもやした感情は。
 ……やきもち?
 自分に、びっくり。修平さんのこと、いい人だとは思っていたけれど、でも、ごりごりの恋愛感情みたいなのは、なかった……よ、ね? そもそも「恋愛はもういいや」っていうところが、どうしてもあって……
 くいー、とビールを飲み干す。ちょっと酔ってるから、かな? そうだそうだ、うん。このドキドキとかも、お酒のせいだよー。
 一気にあおってしまったせいか、疲れのせいか……じんわりと、酔いが回っていく。

「美保。俺の前だからいいが」
「ひゃい」
「あまり飲みすぎるなよ」

 そういえば、初めて会ったときもお酒がめちゃくちゃ入ってたんだった……

「よ、酔ってません」
「ほう」

 修平さんは、私の熱い頬に触れる。鋭い目つき、が少し緩んだような。大きな手が、ヒンヤリしてて気持ちいい。思わず擦り寄る。

「……本当に」

 優しい瞳でそう言われて……思う。……この人のこと、なーんにも知らないなぁ。結婚できればいいやって、なんとなくお見合いして、なぜかとんとん拍子でここまできて。
 さっきのもやもやが、頭にいっぱいになっていく……

「お、お手洗い。行ってきます」

 修平さんの膝から立ち上がって、リビングを出て――トイレの前、玄関前の廊下で立ち尽くす。
 頭が、ぐらぐらした。
 修平さんは……優しい、人だと思う。「よだか」と自分を重ねてる、なんてせんない話を、一生懸命に耳を傾けて聞いてくれた。

「……『これからは、たくさん撮ろう』か」

 そう言ってくれた、あの優しい瞳を思い出す。

(あんなふうに、ほかの人にも接していたのかな)

 想像が止まらない。だってあんなにかっこいいひと、今までだって大事にしてきた女性が何人もいたって、おかしくない。だから、あれは……私にだけ、特別に向けられた表情でも、声でもないんだ。
 それどころか――その人たちは「修平さんの意志」で大事にされていたけれど……私が大事にされてるのは、単に私が「長官の娘」、だからであって……
 心臓が冷たく、変な鼓動を刻んだ。そんなの嫌だ、ってはっきりと自覚する。私は、私の感情がよくわからない。なんでこんなに、辛いの……?
 私は「よだか」なのに。ちゃんと身の程を、知ってるはずなのに――
 ああ、ダメだ。少し、酔いを醒ましたほうがいいかも。
 外の廊下に出よう、とサンダルを履いてドアノブに手をかけたところで、名前を呼ばれた。

「美保? どこに」

 心配して追ってきてくれたのだろう――修平さんが、ぎょっとしたのがわかった。私、泣いてたから。ああもう、なんで? 自分で自分がわからない。

「どうした」

 慌てて駆け寄ってきてくれる。
 ホロホロと溢れる涙。……なんで私、泣いてるの? 酔ってるから? 泣き上戸だっけ、私? そんなはず、ないんだけれど。

「どこか痛いのか」

 その言い方に、ふっと笑ってしまう。そんな、子供扱いみたいな。私をのぞき込む顔が、明らかに焦燥しょうそうを浮かべてて、私はなんだか満たされてしまう。こんな顔するんだ? 私が酔って、少し泣いちゃったくらいで。私にもあったんだ、こんな感情……
 ……うん、さすがに認めよう。私、どうやら、この人のこと好きになってしまったみたい。
 ……違う、かな。好きだったのかな。気がついてなかっただけで。――だから、結婚、したのかな。私。

「美保」

 優しく、大切に発音するみたいに、修平さんが私を呼ぶ。誤解しちゃいそうな、その声。私はあなたの、出世の道具でしかないはずなのにね。

「どうした」
「少し、酔ってるみたいです」

 きゅう、と修平さんに抱きつく。びくりと修平さんの身体が揺れた。
 悲しいような、面白いような。抱きついたくらいで……そんなに驚かなくたって。エッチまでしたのに。――結婚までしたのに。それとも、抱いたのは気まぐれ? エッチできれば誰でもよかった?
 そんなこと、ないか。生真面目そうな人だもん。結婚したからには、私としかしない、んだろう。
 性欲発散目的、でもいいや。私は修平さんの耳を優しく、甘く、噛んだ。

「っ、美保」
「ねぇ」

 腕を首に回して、その整ったかんばせをのぞき込む。

「やぁらしい、気分なんです……私」

 玄関なんかでだらしなく発情してる私――と、それに当てられたっぽい修平さんは、そう広くはない玄関でじっと見つめあう。そうっと、あったかな首に吸い付いて、舌をわせた。
 ……あ、おっきくなってる。
 抱きついた身体に、服越しに主張してくる、それ。

「美保」

 少しだけの焦燥しょうそうを含んだ声が、耳朶じだを震わせる。こんな声は、初めて、聞いた。うしろ向きに抱きしめられて、熱い、大きな手が服にするりと入ってくる。はう、と息を吐く。

「熱い」

 耳元でそうささやかれて、背中がびくりとする。服の中でお腹と腰にやわやわと触れていた手が、そっと上がり、私の胸のふくらみに触れる。ひゅっと息を呑むけれど、それに構うことなく、ブラジャー越しにやわやわと触れられ続けた。
 もっと、って――そう思って、ほとんど無意識に腰が動く。恥ずかしい、でも、もっと。

「ちゃ、んと触って?」

 軽く振り向いたその口に、噛み付くようなキスをされた。蹂躙じゅうりんされる口腔こうこうみだらにつう、と口の端から垂れる唾液だえき。やがて唇を離した修平さんは、そっと私の耳元でささやく。

「どこを?」
「……っ」

 その間にも、修平さんはブラ越しにゆっくりと胸を刺激するだけ。触れて欲しい先端は、ぴんとって痛いくらいだった。

「……ち」
「ち?」

 い、言えないよ!

「くび……?」

 ふ、と笑う声。

「今日はそれでいい」
「きょ、う? ぁ、はぁう、っ」

 ブラに入り込む手と、掴まれる先端。その快楽に、お腹の奥までがうずく。思わず上がる声に、修平さんはたしなめるように、でも楽しんでる声色で言う。

「そんな声を上げて。外に聞こえるぞ?」

 私はハッとする。ここ、玄関先……!

「や、やだあっ」
「……聞かせるのはもったいないな」

 そう言って、胸から離した手で私の頭を持って横を向かせ、少し乱暴に口をふさぐ。私の腰を固定していたその手が、スカートをたくし上げて、そのまま下着のクロッチ部分を横にずらす。すっかり濡れてるソコが外気にふれて、冷たくて。それがなんだか――はしたないほど、気持ち良かった。

「んうっ」

 声を上げたいけれど、ふさがれて、舌で柔らかな頬の内側、粘膜を舐めあげられていて、頭がくらくらする。そのとろけはじめたソコに、ずぶりと無骨な指が、ゆっくりと入っていく。

「んっんっんっ」

 深くなるほどに、上がる声。けれど、唇は離してもらえない。こくりと喉を動かす。私のものか、修平さんのものか――入り混じった唾液だえきが喉を伝った。指が増やされて、私の「いいところ」を的確に刺激してくる。

「ん、んあ、っ、んんんっ」

 同時に親指で敏感な芽をぐりぐりと押されて、あっけなく、本当にあっけなく私は達してしまう。
 やっと離れた唇から、私は何度も荒い呼吸を繰り返す。くたりとした私を支えながら、修平さんは私の耳たぶを噛んだ。

「ひとりで気持ち良くなって」
「……ごめん、なさ」
「謝ることじゃない。俺が」

 そうしたんだ――耳元で、そう告げる低い声に、イったばかりの私の子宮がうずく。
 欲しいって。欲しくて仕方ない、って。

「美保」

 そう名前を呼んで、そして優しいキスをおでこに落とされた。

「キツかったら言え」

 そう言って、私を玄関のドアに押し付ける。カチャカチャ、というベルトを外す音。ごくりと唾を呑む。チョーダイと、ナカが期待でうねうねととろける。腰を持ち上げられて、入り口にそれを添えられた。硬くて、熱くて、大きな、それ。
 ――なのに。それは入り口をヌルヌルと刺激するだけで、入ってきてくれない。

「しゅ、へー、さん?」

 顔だけ傾けて、その顔を見る。真剣なその顔は、じっと私を見て、それから「今日は」と口を開いた。

「加減しない」
「ひゃ、やああんっ」

 一気に貫かれる。奥にぎゅうっと当たる、欲しかったモノ。

「あっ……んんっ」

 自分のナカがうねって、そしてきゅうきゅうと締まるのがわかった。欲しかった、すごく欲しかった。涙がほろり、とこぼれた。

「美保」

 心配そうな声。

「ちが、あのっ、あんっ、きもち、よくてっ」

 ゆっくりとした抽送ちゅうそうを繰り返す修平さんに、私はなんとかそう言う。

「気持ち良くて?」
「そ、おっ、気持ち、良くて……泣いてるの、っ、ひゃあんっ」

 ぱしん、と強く打ち付けられる腰。

「あまりあおるな」
「あ、あおって、なんかぁっ、やっ、はぁっ、やっ、ふぁ、っ、あっ」

 激しめに抽送ちゅうそうされはじめた快楽に、私は壊れたみたいに上擦った声を上げ続ける。その口を、修平さんは大きな手でふさいだ。

「もったいない」
「ん、んふうっ、なに、が……?」

 手の隙間から、そう問い返す。

「美保の声が廊下に漏れるのが」
「あっ、あっ、ヤダっ」

 そうだった、ここ、玄関で。廊下にそんな声響かせてたら、恥ずかしくてもう歩けないよ!

「……いや、聞かせるのも良いのかもしれないな」

 そう言って、修平さんは挿入の角度をぐいっと変えた。

「っ!? っ、あ、……!」

 目の前で白い星がちかちかする。頭の中で、脳みそが溶けちゃったみたいにぐらぐらして、魚みたいに口をパクパクすることしかできない。

「美保」

 優しい声で、修平さんは私の頭を撫でた。

「ココが、いのか」
「っ、く、ふはっ、はっ、あっ」

 エッチなんて、初めてなんかじゃない。修平さんとも二回目だし、小野くんと付き合ってた時点でそもそも別に処女じゃなかったし。多いわけじゃないけれど、人並みに経験してる、つもりだった。なのに、なにこれ、なにこれ、私、知らないよこんなの! ぽろりと涙がこぼれた。
 修平さんがソコに抽送ちゅうそうし始める。すっごい、奥に当たってて……! 私はあえぎながら、イヤイヤと首を振った。

「や、あんっ、ダメ、そこ、やあっ、壊れちゃ、ああっ」

 ソコに当たるたびに、目の前で星がスパークする。修平さんが腰を動かすたびに、イヤらしい水音が、そのぐじゅぐじゅという、自分から出てると信じられないその音が玄関にこだました。

「ああっ、あっ、あっ、あっ」

 私はほとんど泣いていた、と思う。修平さんに突かれるたびに、脳が溶けていく。肉襞にくひだとろけて、とろけながらきゅうきゅう締まって、修平さんが激しくなって、玄関のドアがきしむ。

「や、やあっ、修平さんっ、ヤダっ、エッチしてるって、あんっ、バレちゃうよおっ」

 これ、廊下に誰かいたら流石さすがにわかるんじゃないかな。絶対声、漏れてるよ! ドアも変な音してる……!

「わからせるのもいい」
「や、ぁんっ、なに言って、ッ」

 私はドアに上半身を預けたまま、顔をなんとか修平さんに向ける。

「おね、が……ベッド、いこ」
「美保が」

 修平さんの目は、ぎらぎらしていた。思わず息を呑んで、そして私のナカがきゅうんと締まる。

「美保が、イったら」
「ひゃあん!?」

 ぱしん! と更に激しく打ち付けられた腰。私の片腕を修平さんは掴んで、引き寄せるように強くスイングしてくる。

「ひゃ、あ、あ、アッ、やぁっ」

 目を閉じたいのに、閉じられない。ぱっちりと見開いたまま、私は涙を流して――そして修平さんのが「ソコ」に強く当たったと同時に、頭の中がどろりと溶けた。

「あっ、あっ、あっ、あぁぁぁ……ッ」

 ナカが自分でも引くくらいに締まって、身体ががくがく震える。信じられないくらいに「イって」るのが、わかった。

「あ、あ、あ」

 もう言葉にならない。びくびくと痙攣けいれんしながら、私は自分から何かがとろりと溢れて、それが足をつたい、床を汚したのを知覚した。
 なに、これ……? どろりとした思考で考える。何が出ちゃったの? ふわふわ考えていると、うしろからぎゅうっと修平さんに抱きしめられる。

「上手にイけたな」
「……は、ぁっ」

 耳に当たったその息さえ気持ちいい。私、どうなっちゃってるんだろう……。赤くなってびくりと反応する私から、修平さんは自分を引き抜く。

「あ」

 栓を失って、私のナカに満ちていた何かがごぽりとまた、溢れる。こんなに濡れちゃうだなんて、こんなになっちゃうだなんて。私は寂しくて修平さんを仰ぎ見る。

「や、だ……抜かないで」

 もっとして、欲しいのに。
 修平さんは私のこめかみにキスしたあと、すうっと私を横抱きに持ち上げた。

「布団に行こう」

 お姫様だっこで、ベッドに運ばれる。ぽすりと優しく横たえられて、私は恐る恐る修平さんを見た。修平さんは「邪魔」って感じで自分の着てた残りの服をさっさと脱ぎ捨てて、私のも脱がしてしまう。

「ひゃ、う」
「寒いか?」

 私は首を振る。全然寒くない。むしろ――暑い。
 視線は気がつけば、修平さんの屹立きつりつしてるソレを見てしまっていた。いつの間にか買っていたらしい、ベッドサイドの棚から出されたコンドームを修平さんが付けようとしてる、それ。

「どうした?」
「や、その」

 私は照れ臭くて笑う。

「そんな大っきいの、入ってたんだなあって」
「入ってた?」

 修平さんはほんの少し、口の端を上げた。

「また入るんだ」

 ぐい、と膝裏を押され太ももをあげられる。その内側にキスをひとつ。そのあと、とろけ切ったソコに、また入ってくる熱くて硬い、ソレ。

「……っ、あ、ああんっ」

 それだけで、私は簡単に達してしまう。……本当に、私の身体どうなっちゃってるんだろう!?
 激しく、強く、修平さんはイってる私をそれでも突く。

「や、あっ、修平、さんっ、ダメ、イってる、イってるのぉっ、イってるから、やめ、あ、ヤダ、はぁ、お願、っ、壊れちゃう、……っ」

 イってるところを滅茶苦茶に突かれて、私は訳がわからなくなってしまう。イヤイヤと子供みたいに首を振って、涙が流れて、シーツを握りしめて、自分のナカがぐちゃぐちゃになってるのをただ、されるがままに。

「美保」

 ひどいことを、激しいことをしてるのに、声だけはすごく優しかった。目線を向けると、きゅっと眉根を寄せて、そんな目で修平さんは私を見る。まるで、切ない、みたいな……そんな目で。
 勘違い、しそうになる。そんな目で見られると。そんな風に、名前を呼ばれると。
 大きな身体で、修平さんは私を抱きしめた。武骨ぶこつな手が、腰と後頭部にまわる。

「あっ、あっ、あ」

 ぎゅうぎゅう抱きしめられて。その身体に押しつぶされるみたいに突かれていると、苦しくて、狂おしくて、気持ちいい。

(死んじゃってもいいや……)

 頭がクラクラして、そんなことまで思ってしまう。こんなに気持ちいいなら、死んでもいい。

「美保、口、開けて」

 もう何も考えられず、言われるがままに口を開けた。そこにじ込まれる舌、歯列をなぞって歯茎を舐めあげて、私の舌に絡みつく。

「んう、ふ、は」
「美保」

 口から離したその私の唾液だえきでぬらぬらした唇で、修平さんは少し苦しそうに言う。

「イ、くぞ」
「……っ、あ、はい……っ」

 修平さんは上半身を起こして、私の腰を掴み直す。角度が変わって、それだけで軽くイってしまう私を、修平さんは少し満足そうに見ていた。やがて抽送ちゅうそうは激しさを増す。私は身体を揺さぶられながら、ただ甲高い声で、甘い声で、くしかない。

「ああっ、はぁあんっ、アッアッあ、ッ、アッ」

 だらしなく、声を上げるしか――やがて、私のナカもきゅうっと締まって、それと同時に修平さんが強く強く腰を打ち付けて、私を抱きしめた。薄い被膜越しでもわかる。……たくさん、出てる。

「……ッ」

 修平さんの、快楽に耐えるような、そんな声。その声があまりに愛おしすぎて、ひどく胸が痛んだ。
 感じてくれてる? 気持ちいい? 私のナカ、好き? ……そんなフシダラな質問が頭をぐるぐるまわる。
 やがて、私から身体を離した修平さん。

「や、だ」

 視線を向ける修平さんに、私は両手を差し向ける。

「ぎゅうってしてて、まだ、ギュって」

 ふわふわと舌足らずに言う私を、修平さんは本当にギュっと抱きしめてくれた。鍛えられた腕、厚い胸板と、綺麗な鎖骨さこつ。その首元に擦り寄る。修平さんは、優しく私の頭を撫でた。

「……美保」
「はい」
「なんで泣いていた?」

 私は目を白黒させる。そ、そんなの、そんなの……!

「き、気持ち良かったから、ですけど……?」
「そうではなくて」

 さらりと私の髪をく、骨張った指先。

「さっき」
「え? あ、あー」

 すっかり忘れてた。

「あの、……その」

 思わず赤面。

「うん?」

 不思議そうな修平さんと目があって、思わず私は背を向けた。
 今さら、今さらなんだけど! カオ、直視できないよ! 好きだって、わかってしまった。わかってしまったら、なんか、なんか……っ! 一人で百面相してる私を背後から抱きしめ直して、修平さんは私の耳元で小さく言う。
 その低めの、イイ声で。


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