第10回ドリーム小説大賞
選考概要
編集部内で最終候補としたのは、「羽倉茶葉店~癒しの紅茶と魔法のセラピー~」「ネムリグサ」「桜吹雪と缶ビール、村雨に白い吐息」「きみたちはセカイのかけら」「糸を読むひと」「【番外編不定期更新】cat typing ~猫と麦酒~」「上等だ、受けて立つぜ」「俺たちにラブソングを」「十五のきみに、五十のあなたへ」の9作。
選考の結果、選考員から最も支持された「桜吹雪と缶ビール、村雨に白い吐息」を大賞とし、次いで評価が高かった「糸を読むひと」「上等だ、受けて立つぜ」の2作を特別賞に選出することとした。
「桜吹雪と缶ビール、村雨に白い吐息」は、シェアハウスで暮らす四人の男女が、同居最終夜にそれぞれの秘密を打ち明け合うという作品。これまでひた隠しにしていた各々の秘密や、明らかになった事実に彼らがどう向き合うのかが巧みに描かれていた。しっかりと練られた構成や、幅広い年代に受け入れられそうな設定、そして高い文章力が評価を集めた。
「糸を読むひと」は、運命の糸を操ることができる少女「いと」と同居することになった主人公「ゆめ」の、心の移り変わりを描く一作。「いと」をはじめとしたキャラクターのユニークさや、少しずつ変化していく主人公の丁寧な心情描写が高く評価された。
「上等だ、受けて立つぜ」は、不動産業界を舞台に、新入社員である主人公の奮闘を描く企業小説。一般に知られることのない不動産業界の内情が丁寧に描かれており、キャラクターやストーリーの破綻なく長編を書き上げた構成力・筆力が評価された。
桜吹雪と缶ビール、村雨に白い吐息
足りない言葉、あふれる想い〜地味子とエリート営業マンの恋愛リポグラム〜
ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定いたしました。男女の恋愛模様が、リポグラムという言葉遊びを交えつつ描かれた、新鮮な作品でした。思わず応援したくなるような二人の距離感や障害といった恋愛的な要素だけでなく、ルール違反の文字がないかを探しながら読むという楽しみ方も、読者の目を引いたのではないでしょうか。
糸を読むひと
一見非現実的に感じられる要素も、日常の中に自然と組み込まれており、丁寧な心理描写にも好感が持てました。キャラクター描写も魅力的で、物語にぐっと引き込まれます。物語全体に漂う爽やかさを感じさせる空気感や、どこか切なげな心理描写も巧みでした。
上等だ、受けて立つぜ
難解な用語や複雑な人間関係が、破綻なく丁寧にちりばめられ、奥行のあるストーリーに仕上がっていました。普段は知ることのできない業界の話でしたが、新人として働き始めた主人公の視点で語られる構成によって、読者も入り込みやすくなっていたと思います。
※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。
奨励賞
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羽倉茶葉店~癒しの紅茶と魔法のセラピー~ (かしいつなぐ) <28 位>
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ネムリグサ ( 霜月透子 ) <37 位>
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十五のきみに、五十のあなたへ (織田三郎) <472 位>
全体の構成力が高く、先へ先へと読ませる力がありました。1シーンを複数人の視点から描くという構成によって、誰が何を考えていたかが明らかになり、相手の心情を探る各キャラクターの緊張感がよく伝わります。4人の性格や考え方の違いがしっかり作り込まれているおかげで、各視点での心情描写がすんなりと入ってきて、共感しやすい作品でした。