第9回歴史・時代小説大賞終了

第9回歴史・時代小説大賞

第8回歴史・時代小説大賞

選考概要

478作の応募があった第8回歴史・時代小説大賞では、ライト層でも入りやすい読み味の時代小説から本格的な歴史長編まで、前年にも増して多種多様な作品が集まった。

選考にも力が入る中、18作を残した最終選考候補作の中で編集部内で大賞候補作としたのは、「女奉行 伊吹千寿」「【完結】絵師の嫁取り」「【完結】ふたり暮らし」「調べ、かき鳴らせ」「夜珠あやかし手帖 ろくろくび」「深川あやかし屋敷奇譚」の6作品。

選考の結果、抜きんでた筆力があったと選考員から絶賛された「調べ、かき鳴らせ」を大賞に選出した。また、次いで支持が集まったあやかし系時代小説の2作「夜珠あやかし手帖 ろくろくび」「深川あやかし屋敷奇譚」を、相応しいテーマ別賞がなかったことから新たに特別賞を設けて授与、さらにテーマ別賞として、「女奉行」という斬新な設定に挑んだ「女奉行 伊吹千寿」を江戸を揺るがす捕物譚賞、長屋を舞台にした温かな人情噺「【完結】ふたり暮らし」を優秀短編賞とすることにした。その他、最終選考に残ったものの、惜しくも受賞に至らなかった作品を奨励賞とした。

「調べ、かき鳴らせ」は、三味線の名手として名を馳せる浪人の主人公と、政争に巻き込まれた少年の交流を描いた作品。登場人物たちの心温まるやり取りと、中盤から一転して繰り広げられる緊迫した展開が巧みに描かれていた。豊かな表現力もさることながら、細部まで丁寧に調べあげた過程も窺え、満場一致の高評価だった。

「夜珠あやかし手帖 ろくろくび」は、あやかしを見ることができる団子屋の娘と、妖斬りの男の物語。時代小説としてはややライトさが目立ったものの、テンポが良く設定も魅力的で、読者を引き込むパワーを感じる作品だった。

「深川あやかし屋敷奇譚」は、いわくつきの「がらくた」を収集している大店の次男が、女中と共に謎を解明していく作品。主人公達をはじめ各キャラクターが立っており、構成力の高さを感じさせる話に仕上がっていた。

「女奉行 伊吹千寿」は、八代将軍・徳川吉宗の治世において、女奉行所が設置され……という江戸を舞台とした作品。女性の奉行を主人公に据えるという発想と、爽快感のある展開が時代小説らしいと評価された。

「【完結】ふたり暮らし」は、親を亡くした少女と少年の長屋暮らしを描いた短編。短いながらも起伏があり、物語の構成がよく練られていて、思わずほろりとする心地よい味わいがあった。

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応募総数478作品 開催期間2022年06月01日〜末日

編集部より

三味線を通じた青馬と久弥の心の交流が、巧みに表現されている作品でした。政争に巻き込まれた久弥が、青馬のために奮闘するなど、彼の侍としての強い覚悟にも感動します。豊かな表現力と知識によって裏打ちされた、非常に美しい物語でした。


編集部より

ポイント最上位作品として、”読者賞”に決定いたしました。普段は飄々としていながら、優れた武才で揉め事を解決する新之丞の姿が爽快でした。時代劇のような口上と手に汗握る戦闘シーンが読者の心を掴んだのではないでしょうか。


編集部より

町娘のたまと辻斬りの夜四郎というでこぼこコンビが、協力してあやかし退治に乗り出すという設定が魅力的でした。ろくろくびとなってしまった滝が、最後には苦しむことなくこの世の蟠りから解放される描写は読んでいて胸を打たれます。


編集部より

普段はだらしなくも、あやかしのこととなると鋭い推理力を見せる仙一郎と、そんな彼を支えるしっかり者のお凛のやり取りが魅力的な作品でした。「がらくた」の真相も巧妙に練られており、先の読めない、鮮やかな展開に引き込まれました。


編集部より

女奉行所という設定が非常に斬新で、歴史・時代小説の切り口として大変面白く機能していました。虐げられている女性を守るという一貫したテーマのもと、個性豊かな女奉行所の面々が悪を成敗していくという痛快さが印象的です。


編集部より

幼いながら支えあい生きていく二人の子供の姿に励まされ、思わず応援したくなる短編でした。また、短編とは思えないほどの濃密な世界観が詰め込まれており、他作品にもつながる「長屋」の設定もユニークです。

※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。