シンガポール小説(外部サイト)一覧
1
件
良い思い出は一つも無かった。
だけど、これだけは言える。
今、私は生きてる。
だからこそ、これからの人生を過ごす。
”ありがとう”なんて感情は無いから言わない。
だから、この言葉を贈りました。
”人間、出会うから別れが来るんだよ”
”今まで、よく頑張ったね。お疲れ様”
その言葉に、母は頷き”ありがとう”と応じてくれました。
生まれて初めてだったんです。
最初で最後の言葉。
初めて、母の口から”ありがとう”と言葉を貰いました。
言って欲しかったんだよね。
でも、誰も言わなかった。
私なら言えるから、”よく頑張ったね、お疲れ様”と言ったまでです。
”来世では会えるかどうかは分からないけど、元気でね”
その言葉を最後に言うと、穏やかな表情をしていました。
まるで私を虐めていた頃は無かったよ的な感じでした。
貴方に包丁で刺された痕は、まだしっかりと残ってる。「金が掛かる」と言って病院に行くなと言われたからね。 行っても数針縫うだけだし。 だから、私は自分の身体を見るのが嫌なんです。
その翌日、母は永眠しました。
今年の2月22日に、私の母は他界しました。
その私の思いを文にしました。
本当に、感謝の念なんて無い。
それは、彼等にとっても同じ事でしょう。
勝手にイタリアに連れて来られ、挙句の果てにはドイツへ。
ドイツでは、自分たちに日の目を見る事を許してくれた。
生きる術をも教えてくれた。
だからこそ、彼等は生きている。
自分の生きたい道を。
真摯な思いを、頑ななジュニアは受け止めてくれた。
私だって、私の生きて行きたい道を突き進んで生きたい。
登録日 2018.07.12
1
件