5年前の梅雨の雨の日、澪は自ら命を棄てた。貴彦は今でも彼女を忘れられずにいた。
5年前、12歳の少年だった貴彦は、17歳の澪に淡い恋心を抱いていた。
歳月は過ぎ、当時の彼女と同じ歳を迎えた貴彦は、紫陽花を見詰めながら一人雨の交差点で澪を想う。
貴彦は、澪を失ったこの世界に、何も求めてはいなかった。欲する事すらない。彼女の居ないこの世界に何も見出だせないまま、ただ生きていた。
貴彦は、澪だけを望んでいた。
《物語には18歳未満の方には相応しくないような、グロテスクな描写や性的な描写が含まれます》
文字数 14,143
最終更新日 2020.06.25
登録日 2020.06.17