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第四章 別大陸での活動の章

第十二話 合流…そして激戦・前編

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 「これで最後だ!!」
 『グワァァァァァァ!!』

 翔也達の勇者パーティは、冒険者ギルドの依頼で訪れていたマダラの洞窟でボスのマンティコアを倒していた。
 獅子の顔に体にヤギの首と牛の首があり、尻尾は蠍の尾という合成獣だった。
 このマンティコアは初心者の狩場の洞窟にいつの間にか住みつき、ギルドで依頼に出されていたのだった。

 「これで依頼達成だな。」
 「それはそうなんだけどねぇ…」
 「どうしたの?華奈?」
 「僕達は、ザコが多すぎる。 魔王の配下というのに全く出遭わないな。」

 そうなのだ。
 魔王が配下を紹介した映像が流れてから、一向に現れもしないし出遭う事もなかった。
 なので勇者パーティは、細々と冒険者ギルドの高ランクの依頼をこなすだけの日々になっていた。
 翔也達は、街に向かって歩いていた。
 すると突然、空が暗くなっていった。
 そして、魔王が空に映し出されていた。

 『世界の者達よ! 余は魔王サズンデスである! 今日は用があってここに参上した! 聞こえるか、英雄ダンよ! 貴様はよくも…余が作りだした十六鬼影衆を半分も減らしてくれたな!! もはやこの屈辱許してはおけん! 勇者では無い貴様には早々に舞台から降りてもらう為に残りの8角を貴様に差し向けた。 せいぜい無様な死に方を晒してあの世へ行け!』

 そう言い残して魔王は姿を消し、空は戻った。
 翔也達は、唖然としていた。

 「ダンが魔王配下の十六鬼影衆を倒していただと? しかも半分も…」
 「ダンはこの先危ないかもしれない。 魔王に目を付けられたからな。」
 「ダンを助けなきゃ!」
 「でもダンはどこにいるの?」

 賢斗は考えてみた。
 もしもダンがサーディリアン領にいたのは間違いないとして…
 いや、確か港町で十六鬼影衆の1匹を倒していたと新聞に書いてあったから、それを考えると船で海を渡ったとして…

 「恐らくだが、ダンは聖竜国グランディオ領内…僕達と同じ大陸に来ている筈だ!」
 「とはいっても、この大陸は広いぞ? 闇雲に探して見付かる訳でもあるまい…」
 「じゃあ、どうしたら良いの? このままじゃダンが死んじゃう!」
 「華奈、落ち着いて… 賢斗ならこの大陸のどこにいるか把握できないかな?」
 「地図を見る限りだと、サーディリアン領の港町から船で移動したとして、辿り着いたのはサーテイルの港町だろう。」
 「サーテイル…サーテイル…って、ここから南東の方角でかなり先だぞ!?」
 「確かに、この距離だと聖竜国グランディオの方が近いな。 翔也は聖竜国グランディオに行ってから聖剣を手に入れて来てくれ。 僕達は華奈と飛鳥の3人でサーテイルに向かう。 翔也は後から追って来てくれ!」
 「何で俺だけグランディオに行かなきゃならないんだよ?」
 「君のミスリルの剣は、幾度の戦いの中でもう寿命を迎える筈だ。 なら聖竜国グランディオで聖剣を貰った方がこの先の戦いでも大きな戦力になるはず!」
 「そういう事か、解ったよ。 華奈と飛鳥、賢斗を頼む!」
 
 翔也はそう言って、1人で聖竜国グランディオに向かった。
 賢斗は速度上昇の魔法を展開して、3人は移動を始めた。
 ここには馬が無いので、近くの街まで移動して馬車を手に入れるつもりだったのだ。
 
 ~~~~~一方その頃、サーテイルの港町では~~~~~

 魔王の映像を見たガイウス達は、ダンの認否が気になっていた。
 
 「ダンの奴…十六鬼影衆を6匹も倒していたのか…」
 「しかも、魔王は残りの十六鬼影衆を向かわせると言っていたにゃ!」
 「随分と厳しい状態だね、助けに行きたいけど…」
 「問題はどこにいるかですね? 私の感ですが、恐らく聖竜国グランディオには行ってないと思います。 それと魔法学院も…可能性的には、ここから北西のこの辺りの草原地帯にいるのではないかと思います。」
 「草原地帯か…確かにダンは障害物がある場所は基本的に戦い難くて避けるだろうから、森にはいないだろう。 それに山に逃げ込むという事もしないだろうな、逃げ場がないからな…。 なら、この辺にいると仮定して向かおう!」
 「なら、馬車の手配をしないとですね。」
 「じゃあ、準備するにゃ!」

 4人はギルドに行き、馬車を借りて旅立った。

 ~~~~~一方、賢斗達は~~~~~

 先程の場所から近くの街へ行き、馬車を借りる事が出来てサーテイルの港町に向かって馬車を走らせた。
 賢斗は馬にパワーアップを放ち、華奈は馬に自動回復の魔法を施した。
 これにより、馬は格段に速く疲れ知らずとなっていた。
 飛鳥は馬の操作をしていた。
 紅蓮院流の道場では、馬術もあったので馬の扱いには長けていた。
 だが、さすがにこの距離を最短で進めるとは言っても、馬も腹を空かせるだろうし、何より車輪の劣化も早い筈である。
 適当な場所を決めて、馬に食事と水を与えようと、休憩場所を探していた。
 そして街道の旅人の休憩所と呼ばれる小屋があると、そこで馬に水と食事を与えていた。
 賢斗は地図を見た。
 このままで行くと、最短でサーテイルには着くのだが……?

 「いま、ふと思ったんだけど…」
 「どうしたの? 賢斗?」
 「ダンなんだけど、あいつは魔王の映像を観た筈として考えると、魔王の配下が襲ってくると宣言されたのに町の中にとどまっているだろうか?」
 「そうね、ダンの性格なら人に迷惑を掛けない様に町から離れた場所に移動している筈。」
 「だとすると、現在地がこの辺だよね?」
 「ダンの性格を考えると…障害物がありそうな森での戦闘は避けるだろう。 あいつは土地勘が無い場所には立ち入ろうとはしないからな。 山に隠れる…というのも考えにくいな、挟まれたら終わりだし…。」
 「開けた場所に移動すると考えないかな? 例えばここから北東の草原地帯とか…」
 「確かに、ダンならそう考えるかもね。 敵にも囲まれるだろうけど、見晴らしの良い場所の方が動きやすいと感じると思うし…」

 「だとすると、進路を変更するとして…華奈、モンスターを寄せ付けない聖女の加護を使用してくれ! 回復は僕でも出来るから、パワーアップと併用して馬に掛けるよ。 飛鳥は運転に集中してくれ!」
 「「はい!」」

 あとは、錬金術で作った硬化薬を車輪に掛けて…
 よし、馬車の強化終了だ。
 飛鳥は馬たちを撫でて、もう少し頑張ってね…と声を掛けた。
 華奈は馬車に乗って聖女の加護を発動した。
 飛鳥は運転席に、賢斗はその隣に座り、馬に魔法を掛けていた。
 
 馬車は出発した。
 目的地まで、半日ほどの場所だった。
 さすがに今は朝方だけど、着くには夕方になりそうな感じだった。
 
 「急いでくれ…頼む!」
 
 賢斗は魔法を掛けて、馬を強化と回復の両方を行っていた。
 焦る気持ちが強くなっていった。

 ~~~~~一方、ガイウス達は~~~~~

 馬車に皆を乗せて目的地まで馬を走らせていた。
 馬が疲れないように、レイリアが【導師】になって回復魔法をを掛けていた。
 クリアベールは、無属性魔法で馬車の車輪を増やしたりして、馬の負担を軽減する為に魔力を使っていた。
 
 「ガイウス! 左から馬車が来るにゃ!」
 「ん…ダンの事を聞いてみるか。」

 ガイウスは自分達の馬車を止めて、左方の馬車の前に立って馬車を止めた。
 すると、杖を持った若い男の魔導士が降りてきた。

 「馬車を止めてしまって済まない。 我々の仲間を探しているのだが、そちらから来た方角に爆発が起きたとかいう現象は起きてなかったか?」
 「すまない、僕等の来た方角にはない。 僕等も友達を探しているんだが、あなた達はどちらから来られました?」
 「我らはサーテイルの港町から来た。 仲間が…信じて貰えるかもわからんが……」
 「サーテイルなら丁度良い! 実は友達というのは…」

 かなり遠くの方角から爆発が起きて、馬が怯えていた。
 爆発が起きた方角を見ると、キノコの様な雲が昇って行った。
 
 「「あそこにダンが!?」」

 そういうと、2人は互いの顔を見た。
 
 「そうか、友達とはダンの事だったのか!」
 「仲間とはダンのことだったんだな…!」

 2人は馬車に戻り、爆発が起きた方向に馬を走らせた。
 そしてダンは、かつての友達と冒険してきた仲間達と合流する事になる…のだが…?

「ちょっと待てよ…あの戦いからまだ2日だぞ! それなのに今度は8匹かよ…」
 《相棒、オレが覚えたスキルは先程教えた通りだ。 上手く使いこなしてくれよ!》
 「そうだな、まだ死にたくないしな。 それよりもアトランティカ、残り8匹という事はだ…」
 《あぁ、今目の前にいる奴以外の気配を考えると、あのぬいぐるみはいなさそうだな…》
 「それなら良かった…が、あいつの兄弟というのは、八魔将とか四天王にいるという事か?」
 《ここにいなければそうなるだろう。 良かったじゃないか、8匹の中にあのぬいぐるみが紛れてなくて…》
 「まぁ、それが唯一の救いだね。 なんだけどねぇ…」
 《数が問題か?》
 「それもある。 問題は、今迄の奴等より弱いのが混じってないかなぁ…というのがね。 今迄の奴等より強いのだと、いくらアトランティカがレベルアップしているとは言っても終わる!」
 《まぁ、オレもバックアップはしていくつもりだから、気張ろうや!》
 「もしかしたら…と思って一言だけ言わせて!」
 《なんだ、改まって…?》
 「短い間だったけど、一緒に冒険出来て楽しかったよ!」
 《馬鹿野郎! 縁起でもない事を言うんじゃねぇ!
 「ふふっ… じゃあ、いくよ! 魔剣アトランティカ!!」
 《おぅ、ダン・スーガー!!》
 「《うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ………》」

 僕は、8匹の十六鬼影衆に立ち向かっていった。 
 今度の8匹は、見た目はゲームのチェスの駒の様な姿をしていた。
 騎士の様な形をした者が2匹、魔術師の様な姿をしたのが2匹、アーチャーが2匹、ヒーラーが1匹、そして指揮官の様な騎士が1匹…
 急に手抜きになった様な感じがした。
 他の8匹に力を入れ過ぎて、コイツ等は適当に作ったんじゃないか?
 …と思ったのだが…?

 「やっばいな、コイツ等は連携が取れ過ぎている! 以前の奴等とは違うという訳か…」
 《後方斜めからアーチャーの矢が飛んでくるぞ!》

 僕は飛んできた矢を落としたが、その瞬間に魔術師の炎が飛んできた。
 炎を叩き落とすと、前と後ろから斬撃が飛んできた。
 前をアトランティカで受け流して、後ろを無属性の壁で防いだ。
 すると、今度は左右から矢が飛んできたので、剣で本とも落とすと、指揮官らしき騎士が大盾で突っ込んできた。
 
 「お前等…ちょっとうっとおしいぞ!」

 僕は騎士がいる2か所と指揮官を貫通魔法で落とした。
 そして、魔術師に斬り掛かろうとすると、矢で攻撃されて魔術師は後退した。
 こちらも無属性の矢を放って、アーチャーに当てたが、今度は後方から火球と風魔法が飛んできた。
 火球と風魔法をアトランティカで斬り落とすと、矢が飛んできたのを気付かずに左腕に刺さった。
 矢を抜いて回復魔法を使うと、向こうのアーチャーもヒーラーに回復されて元通りに復元した。

 「なら、これなら…! ハンドレットランス!」

 僕の周囲に100本の槍を出現させて、一斉に放った。
 魔術師とアーチャーを串刺しにしたが、ヒーラーには現れた指揮官の大盾で防がれた。
 貫通解除を行うと、指揮官が前にいるのでいない事は確認したが、騎士2匹もいつの間にか消えていた。
 そして地面に影が映ると、2匹の騎士は剣を頭上から振り下ろそうとしていた。
 僕は2匹の騎士の剣をアトランティカで防いだが、重さで片膝をついた。
 そしてヒーラーをみると、範囲回復で魔術師もアーチャーも復活した。

 「やはり、定石通りにヒーラーから先に倒さないとなんだが…」
 《この連携の取れた攻撃の状態で、ヒーラーだけを先にというのは無理だろうな…》

 僕は剣を払うと、2匹の騎士は後退した。
 
 「感情もない、声も発しないから攻撃のタイミングがイマイチ解らない。」
 《見た目通りの人形だと思っていた方が良いな。》

 さて、どうやって戦おうか…と考える暇がなく指揮官が僕の背後に、騎士2匹がそれぞれ左右に立ち塞がり盾で僕を追い込んできた。
 なら前方に逃げようと思ったら、矢が2本僕の前に刺さった。
 僕を逃がさない為にか…何の為に…?
 そう思っていたら、魔術師2匹が巨大な炎を僕に向けて放ってきた。
 僕は泡魔法を発動して防御したが、思いっきり爆発に巻き込まれて上空に投げ出された。
 魔術師の巨大な炎の魔法攻撃の威力は凄まじく、核爆弾並みに僕のいたエリアを吹き飛ばして、キノコ雲の様な煙が上がっていた。
 僕は立ち上がり回復魔法を掛けた。
 周囲を見ると、騎士も指揮官も巻き添えを喰らったはず…と思っていたら、ヒーラーの範囲魔法で復活していた。
 僕も急いで回復魔法を掛けてはいるが、怪我が中々治ってくれない。
 ユニークスキルでHP1しか減らないんじゃなかったのか?
 そう思って確認すると、限界以上のダメージを喰らうとHPが30引かれるという事だった。
 やばいな…あの炎攻撃をあと2回も喰らったら死ぬな。

 「僕の完全回復を待っていてくれそうな相手ではないよな? どうしよう?」
 
 僕は俯いて考えていた。
 すると、騎士が剣を構えていた。
 
 《相棒!!》
 
 僕はこれで死ぬと思って目を閉じた。
 すると金属音がして目を開けると、そこには…!

 「ダン、間に合って良かったよ!」
 「ダン、お前という奴は…」

 ガイウスと飛鳥が騎士の剣を受け止めていた。
 そして、僕に光が降り注いで僕は完全回復を果たした。
 後ろを見ると、華奈とレイリアが回復魔法で癒してくれた。
 騎士の後方から指揮官が大盾を構えてタックルしてくると、その前にクリスが大盾を持って立ち塞がって鈍い金属音が響いた。
 後方ではアーチャーと魔術師が攻撃をしようとしていた。
 だが、風魔法で炎と矢を受け流し、無属性の槍でアーチャーと魔術師を貫いた。
 こんな事出来るのは!!
 華奈とレイリアの後ろに賢斗とクリアベールが魔法を放っていた。

 「皆、ありがとう! 危うく死ぬところだった… で、翔也は?」
 「翔也は、聖竜国グランディオに行って聖剣を貰っている頃だと思う。」
 「んで、ダン! こいつ等が十六鬼影衆の残りか?」
 「そそ、大量の経験値を稼ぐチャンスです。 こちらも8人、あちらも8匹という事で、1人1殺でお願いします!」
 「なら、あちきはこの大盾使いを受け持つにゃ!」
 「なら、ボクはこの騎士をもらうね。」
 「俺はもう1匹の騎士を受け持つ!」
 「私と賢者様は、魔術師を受け持ちます。」
 「なら僕とベルはアーチャーを狙おう! いけるね、ベル…」
 「はい!」
 「なら私はあのヒーラーね。」
 『いくぞ! 散開!!』
 
 僕の声で皆はそれぞれの敵に向かって行った。
 仲間がいるのは心強い…
 僕はそう思うと、胸が熱くなっていった。
 
 ~~~~~ガイウスと飛鳥~~~~~

 ガイウスは剣を槍で受け流して攻撃をする。
 飛鳥も剣を刀で受け流して胴を斬った。
 だが騎士も斬られたくらいでは致命傷にはならなかった。
 盾と剣を交互に使い、ガイウスと飛鳥を追い詰めて行った。
 だが、2人ともレベルを上げていて後れを取る事は無かった。
 飛鳥は騎士の剣を下段からの攻撃で上に弾くと…

 「紅蓮院流剣術・七之太刀 紅牙蓮華斬!」

 刀身に宿った紅い炎の連撃が蓮華の様な形となって騎士を切り刻んだ。
 それを見たガイウスは言った。

 「中々やるな、剣聖! なら俺も…」
 
 騎士の剣を槍で巻き上げると、ガイウスは構えて…

 「紅蓮院流槍術・炎牙崩蓮鎗!」
 
 炎を纏った槍が、100連撃で騎士を貫いた。
 ガイウスは炎を払うと、飛鳥が詰め寄ってきた。
 
 「ボクの流派の槍の技…なんで君が使えるの??」
 「ダンが教えてくれたのさ…そうか、剣聖の家の技だったのか!」
 「ボクは剣聖じゃなくて、飛鳥だよ!」
 「俺はガイウスだ! 自己紹介も良いが、まだ戦いは終わってないんだ、向こうに合流しよう!」

 ガイウスと飛鳥は、皆の応援に走った。

 ~~~~~ダンとクリアベール~~~~~

 「さ~て、ベルちゅわん…薄い盾は完成したのかなぁ?」
 「ギクッ! まぁまぁです…」
 「じゃあ、実戦で学ぼう! ほら、盾を大きくして透き通るくらいに薄くして強度を高めると、相手の矢を弾きます。 はい、ベル~前に行ってやってみましょう!」
 「私、まだ出来ないのですが…」
 「あらあら…じゃあ、おやつは一生抜き…」
 「頑張ります!」

 そう言ってベルは盾を作りだして薄くしていった…が?

 「向こう側は濁って透けているみたいだから、まだ少し分厚いね。」
 「私にはこれで精一杯です。」

 そう話している内に、また矢が飛んできた。
 人が話している時に邪魔しないで欲しいな…

 「じゃあ、防御はもう良いでしょう。 なら攻撃をしましょうね! 確実に息の根を止める為に…そうですね。これをやりましょう!」
 
 僕はハンドレットアローを出現して、アーチャー1匹に対して全身蜂の巣にした。
 そして僕はベルに向かって微笑んで…

 「ではベルちゃん、やってみよう! これが出来たら、マクラくらい大きなシュー生地の中にカスタードクリームと生クリームのダブルクリームで出来たシュークリームを…」
 「スィーツ…スィーツ…スィーツ!!!」

 クリアベールの目の色が変わると、100本の矢を出現させてアーチャーを蜂の巣にした。
 ただ命中率が若干悪く全てが当たっていた訳じゃなかったけど、まぁ合格点だと思うのだが…?

 「ベルちゃん、80本当たったけど、20本ミスったね…おやつは普通サイズだね。」
 「はい、精進します…」

 僕等は周囲を見て、まだ戦っている応援に行った。
 
 ~~~~~賢斗とレイリア~~~~~

 「ダンとあの子はどういう関係なんだ?」
 「あの子…ベルちゃんね? ベルちゃんはダンの無属性魔法の弟子なの。」

 賢斗は風魔法で魔術師の炎を受け流しながら、レイリアと話していた。
 
 「そしてダンはね、私の先生でもあるんだよ。 右手から炎、左手から雷、合成術・フレイムスタンアロー!」
 「君も合成術使えるのか…さすがダンの弟子というだけはあるな…。」

 レイリアの放った炎の矢は、魔術師に触れると大爆発を起こした。
 その瞬間に、周囲に爆風が巻き起こった。

 「あっれぇ~? 今のも相当威力を押さえたんだけどなぁ?」
 「あ…あれで、威力を押さえていたのか!? なら僕も負けてはいられないな…」

 賢斗は珍しく対抗心を燃やした。
 そして賢斗の目の前に炎と水と風と土が現れて、4つに纏めると光の弾が出現した。
 
 「喰らえ! マクスウェルブリット!!」
 
 賢斗の放った光の弾は、魔術師に当たると体を貫いてから内側に吸引されて吸い込まれて行った。
 
 「凄いわ、さすが賢者様!」
 「賢斗だ…賢者様とは呼ばないでくれ!」

 賢斗は照れくさそうにそう言った。
 レイリアと賢斗は、他の方に合流しようとその場を離れた。

 ~~~~~華奈~~~~~

 「私の相手は、どうやら回復魔法しか使えないみたいね?」

 華奈はシャイニングスピアを放つと、ヒーラーの体を8本の槍が貫いて動かなくなった。
 
 「これで終わりなのかな? 皆と合流しましょう…」

 華奈はその場から立ち去り、皆と合流しに行った。

 ~~~~~クリス~~~~~

 クリスと指揮官は大盾をぶつけては、武器で攻撃を繰り返していた。
 クリスが驚いたのは、相手の大剣だった。
 自分のギガンティックメイスで今迄砕けなかった剣は無かったからだ。
 なのに、ギガンティックメイスでは大剣を破壊できなかった。
 このまま戦っていても疲弊していくだけだと感じたクリスは、ギガンティックメイス以外に盾も攻撃に使って同時に攻めて行った。 
 予想外の攻撃をしてきたクリスに対して指揮官は戸惑っていた。
 指揮官は大盾で突っ込んでくると、クリスは横に躱し、盾で突き飛ばしてからギガンティックメイスで脳天に強撃を喰らわした。
 指揮官はそのままふら付いて倒れて動かなくなった。

 「これでおしまいかにゃ?」
 
 クリスはギガンティックメイスで指揮官を叩くが、全く動かなかった。
 今一つ物足りなさを感じたクリスだったが、その場を去って皆と合流した。

 全員が揃うと、無事を確認した…が、1つ気になる事をアトランティカが話した。
 
 《相棒よ、奴等はまだ死んで無いぞ!》
 《どういう事?》
 《経験値が入ってこない…という事は?》
 《あれでまだ生きているのか!?》
 「皆、気を付けろ! 奴等はまだ死んで無い!!」
 
 皆が十六鬼影衆を見ると、倒れた人形の上に光の玉の様な物が浮いていた。
 それが1つに集まると、大きな光の玉となり、それぞれの人形の体が光の中に吸い込まれて行った。
 そして、光が形を変えると、下半身が馬で上半身が人のケンタウロスみたいな姿に変身した。
 左手には大盾を、右手には大剣を、体には甲冑を…
 全身フルアーマーのケンタウロスナイトになっていた。

 「なるほど、これが最終形態か! 魔王が手抜きな人形を作った訳ではなかったんだな…」
 
 体長3mと大柄な姿のケンタウロスナイト…
 これからが本番の戦いとなるのだった。
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