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~2. 王位継承権~
怒りの矛先
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「貴女が去った後、我に返り、反省した。貴女のことになると、自分はどうにも…」
そう言いながらサイラス殿下が私を見る。困惑したような申し訳なさそうな表情…
「強引なことをして、すまなかった」
そう言った殿下は私に頭を下げた。突然のことに驚く。第二王子である殿下に頭を下げさせるだなんて、私は慌てて声を掛けた。
「あ、頭を上げてください…っ」
「許してくれるか?」
「ゆ、許すも何も…、そもそも私は怒ってなど…」
そう答えた私に、サイラス殿下は安堵したように表情を緩める。そして、そのまま私は腕を引き寄せられ、優しく抱き締められた。
◇
殿下の温かい腕の中で、私も安堵して目を瞑る。昨夜のことを殿下は怒ってはいなかった。良かった。
「あの…、殿下…?」
「ん…?」
「昨夜のことは怒っていないのですよね…?」
「あぁ」
「それでは、先ほどまでは何に怒っていらしたのですか…?」
ふと浮かんだ疑問。昨夜のことではないのなら、他に何か怒らせるような理由などあっただろうか。そう思った瞬間、グイッと顔を寄せられた。
「─…っ!? 殿…下…っ、んん…ッ」
気付けば、殿下に唇を奪われていた。突然のことに驚いて身を竦める。殿下はそんな私の唇を抉じ開け、ヌル…と舌を絡めた。
「ま、待…っ、んん…っ、ハァ…、やぅ…」
急に何が起きたのか。つい先ほど、私たちのわだかまりは解決したはず。ならば、この乱暴なキスの意味は…?
「で…、殿…下…っ」
「話を戻す。クラウスとは何の話を?」
そう尋ねた殿下の瞳は、先ほどの怒りを含んだそれに戻っていた。
「─…っ!」
「言えぬ話か…?」
「違…っ、たいした話では…っ」
「ならば、言っても構わぬだろう?」
背中に添えられた殿下の手がモゾモゾと動く。きつく着付けた上半身が緩み、ドレスの背中の紐を解かれているのだと気付く。
「だ、駄目ですわ…! こ、このドレスは、一人では着れぬもので…っ」
「後でレイラを呼べばいいのだろう?」
「─…っ!?」
予想外の展開に戸惑う。何がどうして私はドレスの紐を解かれているのか。そもそも殿下は何を怒っているの…?
そう言いながらサイラス殿下が私を見る。困惑したような申し訳なさそうな表情…
「強引なことをして、すまなかった」
そう言った殿下は私に頭を下げた。突然のことに驚く。第二王子である殿下に頭を下げさせるだなんて、私は慌てて声を掛けた。
「あ、頭を上げてください…っ」
「許してくれるか?」
「ゆ、許すも何も…、そもそも私は怒ってなど…」
そう答えた私に、サイラス殿下は安堵したように表情を緩める。そして、そのまま私は腕を引き寄せられ、優しく抱き締められた。
◇
殿下の温かい腕の中で、私も安堵して目を瞑る。昨夜のことを殿下は怒ってはいなかった。良かった。
「あの…、殿下…?」
「ん…?」
「昨夜のことは怒っていないのですよね…?」
「あぁ」
「それでは、先ほどまでは何に怒っていらしたのですか…?」
ふと浮かんだ疑問。昨夜のことではないのなら、他に何か怒らせるような理由などあっただろうか。そう思った瞬間、グイッと顔を寄せられた。
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「で…、殿…下…っ」
「話を戻す。クラウスとは何の話を?」
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「─…っ!」
「言えぬ話か…?」
「違…っ、たいした話では…っ」
「ならば、言っても構わぬだろう?」
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「だ、駄目ですわ…! こ、このドレスは、一人では着れぬもので…っ」
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予想外の展開に戸惑う。何がどうして私はドレスの紐を解かれているのか。そもそも殿下は何を怒っているの…?
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