公国第二王子の一途な鐘愛 〜白い結婚ではなかったのですか!?〜

緑野 蜜柑

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~2. 王位継承権~

怒りの矛先

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「貴女が去った後、我に返り、反省した。貴女のことになると、自分はどうにも…」

そう言いながらサイラス殿下がわたくしを見る。困惑したような申し訳なさそうな表情…

「強引なことをして、すまなかった」

そう言った殿下はわたくしに頭を下げた。突然のことに驚く。第二王子である殿下に頭を下げさせるだなんて、わたくしは慌てて声を掛けた。

「あ、頭を上げてください…っ」
「許してくれるか?」
「ゆ、許すも何も…、そもそもわたくしは怒ってなど…」

そう答えたわたくしに、サイラス殿下は安堵したように表情を緩める。そして、そのままわたくしは腕を引き寄せられ、優しく抱き締められた。



殿下の温かい腕の中で、わたくしも安堵して目を瞑る。昨夜のことを殿下は怒ってはいなかった。良かった。

「あの…、殿下…?」
「ん…?」
「昨夜のことは怒っていないのですよね…?」
「あぁ」
「それでは、先ほどまでは何に怒っていらしたのですか…?」

ふと浮かんだ疑問。昨夜のことではないのなら、他に何か怒らせるような理由などあっただろうか。そう思った瞬間、グイッと顔を寄せられた。

「─…っ!? 殿…下…っ、んん…ッ」

気付けば、殿下に唇を奪われていた。突然のことに驚いて身をすくめる。殿下はそんなわたくしの唇をじ開け、ヌル…と舌を絡めた。

「ま、待…っ、んん…っ、ハァ…、やぅ…」

急に何が起きたのか。つい先ほど、わたくしたちのわだかまりは解決したはず。ならば、この乱暴なキスの意味は…?

「で…、殿…下…っ」
「話を戻す。クラウスとは何の話を?」

そう尋ねた殿下の瞳は、先ほどの怒りを含んだそれに戻っていた。

「─…っ!」
「言えぬ話か…?」
「違…っ、たいした話では…っ」
「ならば、言っても構わぬだろう?」

背中に添えられた殿下の手がモゾモゾと動く。きつく着付けた上半身が緩み、ドレスの背中の紐を解かれているのだと気付く。

「だ、駄目ですわ…! こ、このドレスは、一人では着れぬもので…っ」
「後でレイラを呼べばいいのだろう?」
「─…っ!?」

予想外の展開に戸惑う。何がどうしてわたくしはドレスの紐を解かれているのか。そもそも殿下は何を怒っているの…?
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