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高尾山のムササビカフェ食堂でお仕事ですよ
仲良くなりたい
しおりを挟むわたしは高男さんから「ヘタの周りについた土もしっかり洗い流してくださいね」と言われたので真っ赤なトマトを丁寧に水で洗った。
ムササビはバナナをキッチンの台に置き皮を剥いている。と思いきや……。
「こら! ムササビ誰が食べろと言ったんだよ」
「ん? このバナナ美味しいよ。味見してるんだよ~」
ムササビはバナナを美味しそうに食べご満悦顔だ。
「誰が味見をしろって言ったんだよ。っておいおい、どうしてミケちゃんもバナナを食べているのかな?」
「にゃは、このバナナ甘くて最高だね。お客さんもきっと喜ぶにゃん」
先ほどまでウトウトしていたミケもご満悦顔だ。なんて子達なんだ。
「まったくなんて奴らなんだよ……食べてないでムササビ、バナナを輪切りにカットしてくれよ」
高男さんは眉間に皺を寄せながら言った。
「は~い、了解しました」とムササビは元気よく返事をしたのだけど、「あ、でもモモコが食べる料理だと思うとやる気なくすな……」とブツブツ呟く。
「トマトとキノコのスープとフルーツが盛り沢山なフルーツデザートを食べてモモコちゃんは癒されたいんだよ。そしてムササビお前とも仲良くしたいと思っているはずだよ。ムササビも本当はモモコちゃんと仲良くしたいと思っているよね?」
「……それは、そ、そうかもしれないけど……」
ムササビはぼそぼそとした声で返事をした。これは、きっとムササビも心のどこかでモモコと仲良くしたいと思っているのだろう。
そんなムササビのことがなんだか可愛いなとわたしは思った。
「ムササビちゃん楽しみながら高男さんのお手伝いをしようよ」
わたしは、洗ったトマトをザルに置きムササビに視線を向けて言った。
「楽しみながらね……まあ、真歌ちゃんがそう言うならね……」
ムササビはわたしの顔を見て答えそして、バナナに向き直り包丁を手に取りバナナをカットした。
「ありがとう真歌さん」
椎茸の石づきを取っていた高男さんがわたしのほうを見て言った。
「あ、いえモモコちゃんが喜んでくれるといいですね」
わたしはにっこりと微笑みを浮かべた。
「そうですね。さあ、みんなで楽しく料理をしよう」
高男さんは熱した鍋に油を引き椎茸、しめじに豚肉を炒めた。それから水とトマトを入れ煮た。その様子を見ているだけで食べたくなってくる。
やっぱりわたしは食いしん坊だ。ああ、もうお客さんのモモコちゃんのために作っているのにね。
それはそうとやっぱり高男さんはお客さんの食べたいものを感じ取る能力があるのかな。
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