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第一章 相田由美
星形のクッキー
しおりを挟む家に帰り自室のドアを開けるとわたしはベッドの上にスクールバッグを投げ捨てた。
溜め息が出る。居残りテストも疲れたし、それに、麗奈にもらったクッキーがなんだかずっしりと重い。
受験生だというのにこんな気持ちだと勉強も手につかない。モヤモヤやイライラが胸に広がり息をするのも苦しくなる。
苦しくて苦しくてどうしようもない。
苦しくて息苦しくてどうしようもない。
田本和子と野川里子の顔が頭に思い浮かび嫌な気持ちになる。それと、麗奈のニコニコと笑っている顔を思い出すとイライラする。
わたしはイライラして頭と首をかきむしった。イライラして頭をかきむしった。
首に猫に引っ掻かれたような引っ掻き傷ができた。
それからわたしは深呼吸をして心をなんとか落ち着かせた。
ベッドに投げ捨てたスクールバックを手に取り麗奈にもらった星形のクッキーを取り出す。食べるか迷った。
キラキラ輝くアイシングクッキーが星のように眩しくて食べることができなかった。
わたしは星形のクッキーを食べることができなかった。麗奈はこの星形のクッキーをどんな気持ちで作ったのだろうか。
その夜は夜空に麗奈の星形のクッキーがキラキラと輝いている夢を見た。
黄色やピンク色の星形のクッキーがキラキラ夜空に輝いている。
わたしは、そのキラキラと輝くクッキーに手を伸ばした。だけど、星形のクッキーを掴むことができなかった。
黄色やピンク色に輝いている星形のクッキーが黒く濁りそのうち真っ黒になり見えなくなってしまった。
麗奈の怒りを感じてわたしは、ごめんなさいと謝った。麗奈ごめんなさい、あなたを助けることができなくてごめんなさい。
わたしは何度も謝った。
朝、目を覚ますと星形のクッキーが枕元に転がっていた。
星形のクッキーを甘いものが好きなお母さんにあげようかなとも考えたけれど、それもちょっと躊躇われた。
わたしは枕元に転がっていた星形のクッキーを透明のビニール袋にそっと詰め込んだ。
学校に着くと麗奈のことが気になった。星形のクッキーを食べた? なんて聞かれたらどうしようかなと心配したけれど、チラリと麗奈の席に目をやると麗奈は廊下側の後ろから二番目の席にぽつりんといつものように座っていた。
良かった。なんてホッとしているわたしは悪い子だよね。
自分の席に向き直りスクールバッグから筆記用具を取り出し机の上に並べていると、前の席から折り畳まれた紙切れが回ってきた。
何だろうと思い紙切れを開くと、そこには、『緑川麗奈を無視しよう。麗奈ちゃんが話しかけてきても返事をしたらダメだよ』と丸っこい文字で書かれていた。
その文字を見たわたしの心臓はズキンと痛んだ。これを書いたのは田本和子だと思う。
このクラスの女王様である田本和子の言葉に逆らわれない。
そして、その日からこのクラスに麗奈は存在しないことになった。
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