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第一章 相田由美

見て見ぬふり

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  真紀ちゃんとほのかちゃんは顔を見合わせ困ったような表情になった。

  そして。

「うーん、麗奈ちゃんは可哀想だけど……助けると今度はわたしがいじめれそうだから見て見ぬふりをするしかないよ」

  真紀ちゃんはそう言ってミートボールにフォークを突き刺し食べた。

「うん、わたしも同じ意見だよ……あの二人怖いし取り巻きがたくさんいるからね」

  ほのかちゃんもそうだ、そうだと頷いた。

  やっぱり真紀ちゃんもほのかちゃんもわたしと同じ考えだよね。仕方ないよねと思うのと同時にちょっとホッとした。

  わたしは真っ赤なケチャップがたっぷりかかったハンバーグを口に運びながら廊下側の後ろから二番目の席でぽつりんとお弁当を食べている麗奈ちゃんをチラリと見た。

  麗奈ちゃんみたいになりたくない。

   わたしはそう思いながらハンバーグを食べた。大好きなハンバーグが美味しくなくて胃もなんだか痛い。


  それから数日後。わたしはテストの点数が悪くて居残りテストを受けた。真紀ちゃんとほのかちゃんはギリギリクリアした。

  悔しくてズルいよと二人に言ったけれど、真紀ちゃんとほのかちゃんはニコニコと笑いながら「由美ちゃん頑張ってね~」と手をひらひらと振り帰っていった。

  居残りテストを受けたのはわたしを含めて五人だった。その中に麗奈もいた。

  わたしは配られたテストを解いた。なんとか居残りテストはできたかなと思う。

  テストが終わるとわたしは溜め息をつきながら筆記用具を片付けていた。

  すると、

「由美ちゃん」と声をかけられた。

  その声に振り返ると麗奈がニコニコと笑っていた。

「……麗奈ちゃん」

  麗奈がわたしに声をかけてくるのなんて珍しい。一体何の用事なのだろうか?

  麗奈はじっとわたしの顔を見ている。

「あのね由美ちゃん、これクッキーなんだけど……」

  麗奈ちゃんは透明のラッピング袋に入っているクッキーを差し出した。

「えっ?」

「あ、うん。よかったら食べてね。居残りテストで疲れたでしょう?  甘いものを食べると元気になるよ」

  麗奈はそう言って笑った。

  どうしてそんな風に笑えるのだろうかと思った。わたしは、麗奈が笑いながら差し出している星形のアイシングクッキーをじっと眺めた。

  黄色やピンク色にそれから白色など色とりどりの星形のアイシングクッキーがキラキラと輝いている。

「あ、遠慮しないでどうぞ。昨日、作ったんだよ。お弁当の後食べていたんだけど余ったからあげる」

  お弁当と言う言葉を聞いて廊下側の後ろから二番目の席でぽつりんとお弁当を食べていた麗奈の姿を思い出した。

  わたしは、受け取るか迷ったけれど、「ありがとう」と言って受け取った。

  星形のキラキラと輝くアイシングクッキーがずっしりと重く感じられた。

「たぶん美味しいよ。じゃあ、また明日ね」

  麗奈は肩にスクールバックをかけ手を振った。そして、ゆっくりと扉に向かい歩いて行く。

  麗奈のショートヘアの後ろ姿が切なげで儚げだった。
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