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ああげっそり真理子
美咲亜利子ちゃん
しおりを挟む美咲亜利子
亜利子ちゃんはわたしと真理子の会社員時代の同僚で二つ年下の後輩。社員時代の亜利子ちゃんは、びしっとしたスーツ姿で決めていた。
そんな彼女が『食い逃げ事件』を起こすなんて夢にも思わなかった。
食い逃げ事件を起こした理由はシンプルで、わたしと真理子に除け者にされたからだと亜利子ちゃんは食い逃げした理由を当時語った。
わたし達はそんなつもりはなかったのにだ。
わたし達が会社員だった昨年の夏、上司だった部長の丸川香(女部長)がわたし達三人が一生懸命徹夜までして考えた企画をまるで自分のお手柄のように横取りした。
それに怒ったわたしと真理子は無理やり有給休暇を取り仕事をボイコットした。
そして、沖縄旅行を決行したのだ。
亜利子ちゃんを誘わなかったのは、巻き込みたくなかったから。
亜利子ちゃんまで部長にこっぴどく叱られたら可哀想だと思ったからなんだけど……。
亜利子ちゃんは自分だけ除け者にされたと思ってしまった。そして、わたし達を許せない! 置いてけぼりで哀しい! だから、わたし達の後をつけて、困らせようと思い『食い逃げ事件』を起こしたとのことだった。
あの時亜利子ちゃんを沖縄旅行に誘った方が良かったのかもしれない。
亜利子ちゃんは、わたしも怒られても良かった。みどりさんや真理子さんは仲間だと思っていたそれなのにと泣いて怒っていたのだから。
それから、あの時『食い逃げ事件』を起こしてくれて良かったのかもしれない。
だって、今こうして、仲良くすることができているのも本音をぶつけてくれたからなのかもしれない。
今、わたしと真理子は、『最高にうまい食堂』ゆいレール駅前のベンチで亜利子ちゃんが来るのを待っている。わたしのは真理子に肩揉みさせながら。
暫くすると、亜利子ちゃんがこちらに向かって来るのが見えた。会社員時代とは違ってラフな服装だ。わたし達に気づき手を振っている。
「みどりさん~、真理子さん~久しぶりです~」と元気な声で挨拶をしてきた。
わたし達も、「亜利子ちゃん、久しぶり~」と声を揃えて挨拶を返す。
亜利子ちゃんは薄いピンク色のTシャツにジーンズのミニスカートを穿いている。昔の亜利子ちゃんより若返って見える。
「あれ? 真理子さん、みどりさんの肩揉みをしているんですか~」
亜利子ちゃんは口元に手を当てて笑っている。
「みどりちゃん、お疲れなんだって」
「よく言うよ。真理子が揉みたいて言うから揉ましてあげてるんでしょう」
「うそ~みどりちゃんが肩揉みしろってうるさかったくせに」
ペチンと真理子のオデコを叩いておいた。
「みどりちゃんが、いじめる~」
「まったくもう、いいコンビですね!」
なんて言って亜利子ちゃんはケラケラ笑った。
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