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学校とわたしとミケネコーン

3 お歌は禁止ですかにゃん?

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「可愛い~その子お喋りするんだね」

  三木田さんはびっくりしてたと思いきやぱーっと笑顔になった。

「はいにゃん!  ミケネコーンはお喋りしますにゃん。それからお歌も得意ですにゃ~ん!  一曲歌いましょうかにゃん」

「えっ!?  お歌も得意なんだね。うふふ、可愛らしいね」

「ありがとうですにゃ~ん!」

  ミケネコーンは鞄の中からぴょーんと飛び出てにゃんと得意げに胸を張った。

「きゃ~ミケネコーンちゃんてばぶさかわだ~」

  キャーキャーと喜ぶ三木田さんにミケネコーンは、「だからぶさかわとちゃいますにゃん」と言って頬を膨らませた。

 三木田さんとぶさかわ怪獣ミケネコーンは、わたしを置いてけぼりにして盛り上がるのだから信じられない。

「さあ、ミケネコーンはお歌を歌いますにゃ~ん!」

「それだけは止めて~」

  わたしはお歌を歌おうとするミケネコーンを持ち上げた。

「お歌はダメですかにゃん?」

  ミケネコーンはわたしの手の中で首を傾げる。そのきょとんとした表情があまりにもぶさかわで思わずいいよと言いそうになった。

  だけど、ここは心を鬼にして「ダメだよ」とわたしは、言った。

  だって、クラスメイト達に注目されると困ってしまうのだからね。

「んにゃん!  お歌禁止ですかにゃ~ん!」

  
  ミケネコーンの声に気がついたのか、

「どうかしたの?」と顔が整っていて明るくてハキハキしていてよく喋るクラスのリーダー的女子である木川真紀《きかわまき》がこちらを見て言った。

「あ、えっと……」

  わたしが言葉に詰まっていると三木田さんが、「なんでもないよ。真川さんとお喋りしていただけだよ」とわたしに目配せをして言った。

「ふ~ん、そうなんだね。なんかお歌がどうのこうのって面白い声が聞こえたような気がしたけど違ったんだね」

  木川さんはそう言って取り巻きの女の子達との会話に戻ったので、わたしはホッと胸を撫で下ろした。

「真紀ちゃんに気づかれなくて良かったね」

  三木田さんの顔を見るとニッと笑っていた。

「うん、ありがとう。助かったよ」

「真紀ちゃんっていろいろ面倒くさそうだもんね。ミケネコーンちゃんがおもちゃにされたら大変だよね」

「うん、そうだね」

  木川さんの席に視線を向けると周りにいる取り巻きの女の子達と楽しそうに話をしていた。

「夏花、良かったですにゃん」

  ミケネコーンはにゃぱにゃぱと笑っているけれど、一体誰のせいなんだろうね。
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