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第二章

20,5.私とお仕置きの時間・おまけ

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 大屋倫、二十歳。
 今、人生最大の崖っぷちに立たされています。それも、大好きな恋人の手によって。
 
「っひ、や、ぁ……おねがい、大和さん、ゆるしてっ……! んっ」
「いやだ。元はと言えば、倫が悪いんだからね?」
「だ、だから、ごめんなさいっ……! も、なんでもするから、それだけはっ……!」
 
 なんでこんなことになってしまったんだろう。
 お風呂場の椅子に座らされて、許しを請いながら私は自分の犯した過ちを思い返した。
 


 先ほど体を重ねて、想いを伝え合って、それで私と平原さんは仲直りできたはずだった。それなのに、馬鹿な私は墓穴を掘って彼を怒らせてしまった。
 それに平原さんはさらに腹を立てたようで、今度はラブホテルの広い浴室でお仕置き第二弾を受ける羽目になってしまったのだ。
 
「ねえ。倫は俺のことが好きなんじゃないの?」
「えっ……す、好きに決まってるじゃないですか! そんな、今さらどうして……」
「それなら、やっぱり俺を怒らせたくてやってるとしか思えないんだけど。合コン行ったり、自分を好きな男の子に抱き着いたり……」
「だ、抱き着いてはいないですよね!? 少し手を借りただけで……!」
「同じだよ。しかも告白されたの黙ってるし、そんなに俺を不安にさせたいの?」
 
 私の過ち・その一は、これだ。
 滋野くんに告白されたことを、平原さんに言っていなかった。別に言わなくてもいいんじゃないかと思うけど、逆の立場だったら私だって教えてほしいと思うだろう。聞いてどうするんだって話だけど、相手のことなら何でも知っておきたいという気持ちは分かる。特に、そういった恋愛の話であればなおさらだ。
 あと平原さんに黙って合コンに行ったこと、お酒を飲みすぎたことも入れれば、私の犯した過ちはすでにこの時点で三つもある。でも、それに関してはすでにお仕置きなんかしなくても反省しているのに。
 
「……っくしゅん!」
「ああ、ごめん。寒かったね。まだ溜まってないけど、湯船入ろうか」
「は、はい……」
 
 浴室に全裸で立たされてお説教されていたので、体が冷えてしまったようだ。
 まだ二十センチくらいしかお湯が溜まっていないけど、立っているよりはましだと思って二人で湯船に入った。円形のバスタブは、私の家のお風呂よりも広くてのびのびできる。こんな状況じゃなかったら、この広いお風呂を楽しみたいところだけど、あいにく今はそれどころではない。
 
「おいで、倫。寒いでしょう」
「えっ……や、大丈夫で」
「おいで」
 
 有無を言わさぬ平原さんの口調に負けて、私はそろそろと湯船の中を移動して彼の脚の間に座った。
 背中に彼の体温を感じて、恥ずかしすぎて声も出せない。まだ肩に浸かるくらいまでお湯が溜まっていないから、体も丸見えだ。そんな状態で、平原さんは私の耳元で怪しく囁く。
 
「ねえ、倫。どんなお仕置きがいい?」
「ひっ……! や、さ、さっきお仕置きは終わったんじゃ……」
「あんなのお仕置きのうちに入らないよ。ただ気持ちよかっただけでしょう?」
「は、恥ずかしい目に遭いましたっ!」
「そう? でも反省してないみたいだし、もうちょっといじめないと」
「あっ……はぁっ、あっ……!」
 
 ちゃぷんと音を立てて、平原さんの手が私の脚の付け根に伸ばされる。
 すでに腰くらいまではお湯が溜まっていて、温かくはなったけれどこの状態で秘所を触られるのには抵抗があった。
 
「ひ、ひらはらさん、お風呂じゃ嫌ですっ」
「あ。大和って呼んでって、言ったよね? お仕置き追加だな」
「なっ……! ご、ごめんなさい、大和さんっ」
「もう遅いよ。ほら倫、さっきお仕置きされたここはどうなってるかな?」
「ああっ! ん、やぁ……やだ、指いれな、いでっ……!」
 
 平原さんの指が濡れた穴に侵入してくるのと同時に、温かいお湯の感覚まで襲ってくる。
 その感覚だけでも違和感があって苦しいのに、さっきから我慢している「あれ」もあって私は顔を歪めた。
 
「あ、やま、と、さんっ……指いやです、お湯がっ……!」
「ん、中に入る? 大丈夫だよ、綺麗だから」
「そ、そういう問題じゃなくてっ……! あ、んんっ、あ、まって大和さんっ、あの、私、そのっ……」
「どうしたの? 足擦り合わせて」
「あっ……ご、ごめんなさい、あの、と、トイレ、にっ……いきたい、です……」
 
 恥ずかしい思いを我慢してそう言うと、平原さんはちょっと驚いたように目を見開いた。そりゃそうだ、こんな状況でトイレに行きたいなんて言うんだから。
 でも、お酒を飲んでトイレが近くなってしまっているのもあって、どうしても我慢できそうにない。
 後になって気付いたのだが、これが私の過ち・その四だ。今にも漏れそうだということを、正直に彼に言ってしまったのが間違いだったのだ。
 
「……おしっこ?」
「っ……! は、はい……ごめんなさい……」
「そう。じゃあ、あがろうか」
 
 そう言って平原さんは、私の脇の下に手を入れて抱き起こしてくれる。この状況でそんなことを言うなんて幻滅されてしまったかと心配になったけれど、これに対して平原さんは怒ってはいないみたいだ。
 ほっとしながらバスタブを出て、そそくさと浴室を出ようとしたのだが。
 
「倫、どこ行くの」
「へっ!? あ、だからその、トイレに……」
「行っていいなんて言ってないよ?」
「……えっ」
 
 そんな。怒っていないと思ったのに、トイレにも行かせてくれないくらい怒っているのか。
 衝撃で固まっていると、平原さんは隅に置いてあった椅子を足で引き寄せて、そこに私を座らせた。
 
「あ、のっ……け、結構限界なんですけどっ……」
「そう。でも、倫は子どもじゃないんでしょう? 大人だったら、おしっこくらい我慢できるよね?」
「そ、そんなぁっ! だ、だめです、それとこれとは別でっ」
「倫だって俺の嫌がることしたんだから、それくらい我慢して。お風呂だから、漏らしてもいいしね?」
「よよよよくないです!! 何言ってるんですか!?」
 
 平原さんがあまりにひどいことを言うから、どもってしまった。だって、それはひどすぎやしないか。トイレに行くのを我慢しろだなんて、それはお仕置きなんて可愛いもんじゃなくて拷問だ。
 
「や、やだ、平原さんほんとにっ……!」
「あ、また平原さんって言った。今は大和って呼んでって言ってるのに」
「あっ……! ご、ごめんなさ、ひゃうぅっ!?」
 
 慌てて謝ろうと開いた口は、突然やってきた刺激のせいで情けない声を出してしまった。
 平原さんが、断りもせずに私の陰部を舌で舐めたからだ。
 
「やだっ、やだぁっ!! 平原さん、そんなのきたなっ……!」
「は、んっ……大和だってば。言うこと聞けないね、倫は」
「あ、ああ、やだぁっ……! だめ、ほんとにだめ、やまとさぁんっ……!」
 
 そんなところを舐められているというだけで耐えられないのに、今の私は尿意を我慢している状態なのだ。生暖かい舌が這って、ぶるぶると体が震える。意図せず涙まで溢れてきた。
 
「あ、やぁっ、んくっ、う、ううぅっ……!」
「はっ、可愛い……我慢してるんだ? いつまで耐えられるかな」
「やああっ! ん、や、だめ、も、もれちゃうっ……!」
「ふふっ、漏らしちゃうの? こんなところで漏らしたら、倫はやっぱり子どもだってことだね」
「ち、ちがっ……でも、がまん、できなっ、ううううっ!」
「うわぁ、ひくひくしてる……可愛い、倫」
 
 なぜか平原さんは興奮した目で私を見て、再び秘所に舌を当てた。
 ざらざらとした舌の感触がたまらないほど気持ちよくて、力が抜けそうになる。時折ちゅうっと吸われるたびに漏れそうになって、もう気力だけで我慢していた。
 
 そして、冒頭のやり取りに戻るというわけである。
 
「っひ、や、ぁ……おねがい、大和さん、ゆるしてっ……! んっ」
「いやだ。元はと言えば、倫が悪いんだからね?」
「だ、だから、ごめんなさいっ……! も、なんでもするから、それだけはっ……!」
 
 突起を舐められて、吸われるだけでもおかしくなりそうなのに、平原さんはさらに指を膣内に挿入してきた。
 
「ああああっ!!」
「うわ、すごい……中ぎゅうぎゅうだよ、倫」
「だ、だって、がまん、してっ……ああっ、もうやだぁっ、もれちゃうぅっ!」
「漏らしてもいいんだよ? ふふっ、イくのと漏らすの、どっちが先だろうね?」
 
 平原さんは無慈悲に笑うだけで、指も抜いてくれないし舌で責めるのも止めてくれない。
 髪を振り乱して抵抗しても、不安定な椅子の上で脚を開かされているから大した抵抗にもならない。尿意はもう限界寸前だ。
 
「ぅあ、ああ、はぁっ……も、やぁ、ひんっ、ううっ……!」
「あーあ、泣いちゃった。倫、もうおしっこ漏らしちゃおうか? そしたら楽になれるよ」
「うぅっ、やだぁ……そんなの、できないっ……」
「大丈夫だよ。ね、倫がお漏らしするとこ見せてよ。そしたら、倫が悪いことしたのも許してあげる。ね?」
 
 悪魔だ。大好きな平原さんだけど、今は悪魔にしか見えない。
 引っぱたきたいし文句だって浴びせてやりたいけど、もう少しでも動いたら漏れてしまいそうで、結局私は泣きながら彼を睨むことしかできなかった。
 
「……結構粘るなぁ。十分反省しただろうし、もういいか」
「え……? っいや! あ、ぅあああっ!!」
 
 もう許してくれるのかと安心しかけたのに、やっぱり平原さんは悪魔だった。
 すでに限界を超えている私に追い打ちをかけるように、唇を離したかと思うと指で敏感になりすぎた突起を強く擦り上げたのだ。それと同時に、我慢を強いられている尿道まで刺激されて、もういつ決壊してもおかしくない状態まで追いこまれる。
 
「いやああぁっ! あっ、あっ! ふ、うぅっ、やだ、い、いくっ」
「ははっ、可愛い。もう顔も、恥ずかしいところも、ぜーんぶ蕩けちゃったね?」
「いや、いやだ、あ、くっ、でっ、でるっ、でちゃうっ、もれちゃうぅっ!」
「うん、いいよ……っ、俺が全部見ててあげるから」
「ひぃっ、み、みないで、あ、あ、う、うぅっ……、ふああ……っ!」
 
 きゅっと強く摘まれた瞬間、頭の中が真っ白になった。
 びくびくと体中が痙攣して、自分が絶頂に達したのだと言うことを理解する。それと同時に、ずっと我慢していた尿意が解放されて、彼の前で粗相をしてしまったということも。
 
「っは、ぅぐっ、う、ふぅっ……」
「いいよ倫、全部出して。我慢できて偉かったね」
「で、でき、できなかったっ……やだ、ひ、ひらはらさんの前で、わたしっ……!」
 
 こうやって結局漏らしてしまったのだから、それは我慢できなかったのと一緒である。
 しかも、一度解放されてしまったらもう自分では止められなくて、ちょろちょろと恥ずかしい水音が浴室に響くのをただ聞いていることしかできなかった。
 
「ふふっ、ごめんね? 倫には悪いけど、すっごい興奮しちゃった」
「へ、へんたいっ……!」
「うん、変態かもしれない。でも、倫のせいだよ」
 
 どの口がほざいているんだ。こんな目に遭わせておいて、心底楽しそうに笑っている彼が理解できない。
 でも、結局お風呂なんかで達しながら漏らしてしまったのだから、私も変態なのかもしれない。不本意以外の何物でもないけれど。
 
 シャワーで私の体を綺麗にしてから、平原さんはぎゅっと抱き締めてくれる。
 あんなことをされたんだから一発くらい殴ってやろうかと思っていたのに、私はそれだけで彼を許してしまいそうになった。駄目な女だ。
 
「すっごく可愛かったから、今のでお仕置き全部なしにしてあげる。だから許して?」
「へ、変態は嫌いですっ……」
「ごめんって。もうしないよ。倫が悪さしなければね」
「も、もう、絶対にしません」
「ふふっ、よかった。じゃあ、もう一回温まったらベッド戻ろうか。まだ時間はたっぷりあるしね?」
 
 そう言って、唇にちゅっと軽くキスを落とす。
 若干恐怖を感じながらも、彼に求められることは嫌いではない。むしろ嬉しい。まあ、さっきみたいなことは二度と御免だが。恥ずかしすぎて死んでしまいそうなので、さっきのことはもう無かったことにしてほしい。
 
 慰めるように何度も口づけてくれる平原さんに甘えて、私は身を摺り寄せる。バスタブいっぱいに張られたお湯の中で、怖いくらい私を愛してくれる彼にお返しのキスをした。
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