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クレーマー三号(ホンちゃん)
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そこには、白銀の姿があったのだ。バツが悪そうな顔をしている。
「白銀さっ……、ああっ」
白銀に気を取られているうちに、祖母の姿はもう見えなくなっていた。なつみは、口を尖らせた。
「来てたんですかっ」
『ごめん! でも、英介の処遇が決まったから。早く知らせなきゃと思ってさ』
白銀は、ふわりと飛び降りて来た。
「うかりん様は、何と?」
『薬で女性にいたずらをするような人間を、医者にしてはいけない、と。だから、医大をやめさせるように仕向けられたよ』
白銀は、意味ありげな笑みを浮かべた。
『来週、四条の繁華街で、薬物所持疑惑の大学生が数名検挙されることになっているそうなんだ。うかりん様は、英介をそこへ行くよう仕向けて、いっしょくたに逮捕させるって』
「うわあ……」
大事に聞こえるが、英介が雪絵にしようとしたことを考えれば仕方ないか、となつみは思った。
「ま、これで雪絵さん周辺の変な男は、一掃されましたね」
『僕らの知る限りは、だけど』
そう言うと白銀は、なつみをチラと見た。
『でさ……、なつみん。本当に、悪気はなかったんだけど。ただ、この報告を早くしたかっただけなんだけど』
「おばあちゃんとの会話を聞いてたってことですか」
なつみは、ぼそりと言った。何だか、顔が赤くなっていくのがわかる。
『うん。あれって……、本音? 僕と一緒に仕事したいって』
「おばあちゃん相手に、嘘をついてもしょうがないでしょ」
なつみは、口を尖らせた。
「けど白銀さんは、一人でもできるって言ってるし。だから……」
『僕が独り立ちできなかったら、なつみんが指導責任を問われるかと思って』
不意に、白銀がきっぱりと言う。なつみは、思わず彼の顔を見つめた。
「そんなこと、考えてたんですか」
『そう。だから、できるってお答えした。けど本当は、不安だよ。やっぱり、なつみんがそばにいてくれないと……』
「何だあ」
なつみは、クスッと笑みを漏らしていた。
「私、ひがんでたんですよ。もう私なんて、必要ないのかなって」
すると白銀は、目を見張った。
『それは、こっちの台詞! なつみん、家にも来るなって言うし……』
「あれは、私の友達に姿を見られたからでしょ!」
言い返しながら、なつみはふと気付いた。
「そういえば白銀さん、雪絵さんが襲われた時、彼女と犯人の記憶を消してましたよね。よく考えたら、華子たちの時も、そうすればよかったんじゃ? どうして……」
すると白銀は、口ごもった。
『いや、まあ。あの子たち、完全に僕を犬だと思い込んでたし。だったら、そう演技しとけばいい、かな、みたいな……』
白銀は、語尾をごにょごにょと濁している。怪しいな、となつみは眉を吊り上げた。
「白銀さっ……、ああっ」
白銀に気を取られているうちに、祖母の姿はもう見えなくなっていた。なつみは、口を尖らせた。
「来てたんですかっ」
『ごめん! でも、英介の処遇が決まったから。早く知らせなきゃと思ってさ』
白銀は、ふわりと飛び降りて来た。
「うかりん様は、何と?」
『薬で女性にいたずらをするような人間を、医者にしてはいけない、と。だから、医大をやめさせるように仕向けられたよ』
白銀は、意味ありげな笑みを浮かべた。
『来週、四条の繁華街で、薬物所持疑惑の大学生が数名検挙されることになっているそうなんだ。うかりん様は、英介をそこへ行くよう仕向けて、いっしょくたに逮捕させるって』
「うわあ……」
大事に聞こえるが、英介が雪絵にしようとしたことを考えれば仕方ないか、となつみは思った。
「ま、これで雪絵さん周辺の変な男は、一掃されましたね」
『僕らの知る限りは、だけど』
そう言うと白銀は、なつみをチラと見た。
『でさ……、なつみん。本当に、悪気はなかったんだけど。ただ、この報告を早くしたかっただけなんだけど』
「おばあちゃんとの会話を聞いてたってことですか」
なつみは、ぼそりと言った。何だか、顔が赤くなっていくのがわかる。
『うん。あれって……、本音? 僕と一緒に仕事したいって』
「おばあちゃん相手に、嘘をついてもしょうがないでしょ」
なつみは、口を尖らせた。
「けど白銀さんは、一人でもできるって言ってるし。だから……」
『僕が独り立ちできなかったら、なつみんが指導責任を問われるかと思って』
不意に、白銀がきっぱりと言う。なつみは、思わず彼の顔を見つめた。
「そんなこと、考えてたんですか」
『そう。だから、できるってお答えした。けど本当は、不安だよ。やっぱり、なつみんがそばにいてくれないと……』
「何だあ」
なつみは、クスッと笑みを漏らしていた。
「私、ひがんでたんですよ。もう私なんて、必要ないのかなって」
すると白銀は、目を見張った。
『それは、こっちの台詞! なつみん、家にも来るなって言うし……』
「あれは、私の友達に姿を見られたからでしょ!」
言い返しながら、なつみはふと気付いた。
「そういえば白銀さん、雪絵さんが襲われた時、彼女と犯人の記憶を消してましたよね。よく考えたら、華子たちの時も、そうすればよかったんじゃ? どうして……」
すると白銀は、口ごもった。
『いや、まあ。あの子たち、完全に僕を犬だと思い込んでたし。だったら、そう演技しとけばいい、かな、みたいな……』
白銀は、語尾をごにょごにょと濁している。怪しいな、となつみは眉を吊り上げた。
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