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2 男娼デビュー

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 純は私服に着替えさせられると、車で所轄の警察署へと連れて行かれた。椎葉や店がどうなったのかも気になるが、今やそれどころではない。どうすれば実家に連絡されずに済むか、純は必死に知恵を巡らせた。
「……さてと。お前は何歳なんだ?」
 署に着くと、刑事らは高圧的な口調で問いかけてきた。偽っても、すぐにバレるだろう。『レスポワール』の店内を捜索すれば、純のバース検査結果証明書が見つかるはずだ。十五、と仕方なく答えると、あからさまな侮蔑の眼差しが向けられた。
「家出して来たのか? それで売春か。……本当に、オメガってのはどうしようもねえな」
 父親に売春を強要された、と打ち明けるのは止めにした。オメガは淫乱、という世間の偏見は根強い。そして父の竹彦は、旧家の主人で、アルファだ。刑事らが信じるとは、到底思えなかった。
 そこへ、別の刑事が入って来た。
「オメガの身元がわかりましたよ。香月純、十五歳。父親と兄から、捜索願が出されていました」
 やはりか、と純は唇をかんだ。
「よし、じゃあ引き取らせるか。やれやれ、オメガなんか産むもんじゃねえな。親父さんも、気の毒に」
 あまりの言葉に、純が言い返そうとしたその時だった。新たな刑事が、部屋に入って来た。彼は、純の相手をしていた刑事に耳打ちをすると、「来なさい」と純に言った。何やら深刻な表情だ。
「香月純君。K省の人が迎えに来ているよ」
「K省……?」
 純はきょとんとした。刑事は、気の毒そうな顔をして頷いた。
「ああ。親御さんに、虐待を受けていたんだって? もう大丈夫。君には、オメガ保護施設に行ってもらうからね。さあ、行こうか」
 急な展開に、純は面食らった。K省は、福利厚生を扱う役所だ。身寄りのないオメガや虐待されたオメガを保護する施設がある、というのも聞いたことがある。実家に帰されずに済んだのは幸いだが、なぜこんな流れになったのだろう。
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