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十三話 上京
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ユリ姉の部屋を後にして、それから夕食、風呂と私は上京目指した頃を追憶していた。
上京に憧れたのは高校のときだった。その頃の私は、年頃らしく倦怠感を身体に纏って、同じルーティンを繰り返していた。同じ授業を受けて、同じ通学路で、同じ人と話して、同じような晩御飯を食べる。どこかストイックで、どこか空虚な毎日だった。
高校生ともなると、なんとなく自分の限界というか、その先の人生が薄らと見え隠れする。それが当たってたかどうかなんて、忘れてしまったからわからない。それでも十八という半分大人な少女には、その予感がどうしようもなく暗鬱だった。鳩尾あたりに黒いものが溜まっては、刹那的な喜怒哀楽で塗り潰す。そうやって私は、この刹那的なリフレインのその先を、少しずつ霞ませて生きてきた。
私はきっと、本土の大学を出て、本土の市役所に勤めて、本土の人と結婚するのだろうと予感していた。それは案外難しい人生だし、楽しさも苦しみもあるのだろうけれど、私には息苦しい何かがある気がした。今思えばそれは、若さ故の歯痒さというか、非日常への途方もない憧れぐらいなものだったけれど、その頃の私には死活問題だった。
高校一年の時、ユリ姉が家を出た。友人と街に出かけて、家に帰るとユリ姉はもういない。嵐が過ぎ去ったようなリビングと、怒りに震えた父と、無口に片付ける母、何かを察するには十分だった。
帰るや否やユリ姉が大学のために東京に行ったと告げられた。そして勉強に集中したいから帰ってくるのはいつかわからないとも。発言した父の目はひどく動転していた。
父の言ったことが嘘だということは明らかだった。ユリ姉は島にいるうちに勉強なんて全くしていなかったし、ギターばかり弾いていた。誰でも入れるような大学が東京にもあるかもしれないけれど、愛島心の強い父がそれを許すとも思わない。ただ、ユリ姉が発端でただ事じゃないことが起こったことだけが把握できた。
そしていつからか、私はユリ姉が鳥になったのだと思うようになった。この閉塞的で空虚な日常から彼女は旅立ったのだと。さらにその鳥は、私のどす黒いものから解放されたのだと。解放されて、自由になって、軽い身体で彼女は今とは違う日常に生きているのだと。
上京に憧れたのは高校のときだった。その頃の私は、年頃らしく倦怠感を身体に纏って、同じルーティンを繰り返していた。同じ授業を受けて、同じ通学路で、同じ人と話して、同じような晩御飯を食べる。どこかストイックで、どこか空虚な毎日だった。
高校生ともなると、なんとなく自分の限界というか、その先の人生が薄らと見え隠れする。それが当たってたかどうかなんて、忘れてしまったからわからない。それでも十八という半分大人な少女には、その予感がどうしようもなく暗鬱だった。鳩尾あたりに黒いものが溜まっては、刹那的な喜怒哀楽で塗り潰す。そうやって私は、この刹那的なリフレインのその先を、少しずつ霞ませて生きてきた。
私はきっと、本土の大学を出て、本土の市役所に勤めて、本土の人と結婚するのだろうと予感していた。それは案外難しい人生だし、楽しさも苦しみもあるのだろうけれど、私には息苦しい何かがある気がした。今思えばそれは、若さ故の歯痒さというか、非日常への途方もない憧れぐらいなものだったけれど、その頃の私には死活問題だった。
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そしていつからか、私はユリ姉が鳥になったのだと思うようになった。この閉塞的で空虚な日常から彼女は旅立ったのだと。さらにその鳥は、私のどす黒いものから解放されたのだと。解放されて、自由になって、軽い身体で彼女は今とは違う日常に生きているのだと。
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