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6 サイカとマティアスの恋人えっち

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夕暮れ時の赤く色付いた太陽の光が窓から射し込んでいる。
部屋にある大きなキングサイズのベッドは二人で寝転んでもまだ余裕があるが、私はマティアス様の逞しい体の上で寝転んでいた。

今日は思いっきりマティアス様を甘えさせ、私もマティアス様に甘える。
恋人同士みたいにいちゃいちゃと過ごすことに決めたのだ。
…とは言っても、二十五年間生きて恋人がいたことが一度もないので、世の中の恋人たちがどんならぶらぶいちゃいちゃなスキンシップをしているのか分からないし実践経験も皆無。
私の知識は専ら漫画と小説、そしてエロゲー(しかも男性向け)からの知識だけだったので私の思うらぶらぶな恋人同士を想像しながら実践してみる。


「マティアス様、あの…今更なんですが…私が上に乗っていて苦しくはないですか?」

「いいや。サイカの重みが心地いいくらいだ。」

「よかった…。じゃあ、暫くはこのままいちゃいちゃしながらお話をしましょう?」

「…いちゃいちゃ……あ、ああ…!」

顔を赤くさせたマティアス様を見ると、お付き合い経験がないにせよなかなかいい感じにいちゃいちゃラブラブ出来ているのではないかと思う。
恥ずかしい?いいや。ここでは恥は掻き捨てることにしたのだ。
そう、私はこの異世界に来て開き直っていた。
本城 彩歌を知っている人間が今の私を見れば「え、あの子ってあんな子だったの?ちょっと信じられない、見る目変わりそう」と顔をしかめる事だろう。
けれど日本で暮らしていた本城 彩歌を知る人はこの世界にはいないのだから、ならば別に恥を掻いてもいいじゃないか。
キャラじゃないだろと言われかねない事をしても全然いいじゃないか。
ここにいるのは真面目で至って普通な会社員の本城 彩歌ではなく、月光館の高級娼婦で気持ちいいセックスが大好きな(但し相手は私基準のイケメンに限る)、性欲が強くて自分の欲望に忠実な絶世の美女、サイカだ。

この異世界では、こんな事をしているのを見られたらどう思われるかと周りの評価も気にする必要はない。
そういった煩わしい事を何も恐れる事はない。
思うように、イケメンといちゃいちゃしたいと欲望のままに生きても咎められない。
現に私が甘えた声を出しても逞しい胸板にすり寄ってもマティアス様は嬉しそうにしているのだから。
だから私は遠慮なく今の絶世の美女という見目を最大限利用し、欲望のままに素直に生きると開き直ったのだ。

「サイカ…その、俺の様に…周りから嫌悪されるような相手の専門になるとキリムから聞いたのだが……それは本当か…?」

「キリム…ああ、オーナーから聞いたのですね。
はい、本当です。オーナーに伝えて…そういう事になりました。」

「……何故…?」

「何故…?…んんと…色んなひとが色んな理由で娼館に訪れますよね…?
その、…一つ聞きたいのですが…マティアス様が私を見ていたあの日、門前払いされると分かっていても娼館に来た理由は何ですか…?」

「…それは…」

「…勿論、男の人だから溜まった性欲を発散させたいというのも理由の一つだって分かっています。
マティアス様、私に言いましたよね。皆、嫌悪するって。嫌な顔をされて、醜いと笑われたりもするって。
きっと平気なわけない。嫌な事を言われたり、されたりするのは、私だって傷付きます…。」

「……。」

「それでも…娼館に来たのには理由があるんじゃないかなって…。」


オークっぽい人には抱かれたくない。
イケメンの相手をしたい。
勿論それが大きな理由ではあるけれど、私だって血の通った人間だ。人の心を全く労る事が出来ない、そんな心ない人間じゃない。
マティアス様の話を聞いて、傷付いて苦しんできたマティアス様を幸せにしてあげたいと、そう思った気持ちも本物だった。
自分の欲の方が全面に出てはいるけれど、私は器用な人間ではないから。
自分が楽しくもないのに誰かを楽しませる事は出来ないし、自分が幸せじゃないのに誰かを幸せになんて出来るはずもない。
だから私は自分の欲を優先し、楽しんで幸せになって、同時に相手を幸せにする。

だからマティアス様には私と一緒にいる時くらいは、自分の容姿に傷つく事もなく、容姿を気にする事もなく安心して楽しんでほしいし、幸せを感じてほしい。
私はマティアス様と過ごす事が楽しいし幸せも感じているのだから。


「…あの日花街へ…娼館へ行こうと思ったのは…一人でいたくなかったからだ…。」

「…はい。」

「来た所で傷付く事も分かっていたが…一人でいる虚しさよりも、傷付いても誰かと一緒にいたい気持ちの方が大きかった…。」

「…はい。その時のマティアス様のように、性欲だけじゃなくて、人恋しさにだったり、癒されたくて娼館に来る人もいるんだって、そう思ったんです。」

「ああ…。」

「マティアス様は癒しを求めて来ても、門前払いされてしまう。
でも他の大勢のひとは今日はどの娼婦にしようかって悩んでる。
そういう事を考えてみて…だったら私は、マティアス様を癒したいと思いました。」

「!!」

「それに、私はマティアス様を醜いと思った事はありません。」

「……そ、うか…」


醜いと思ってないと言った言葉は多分信じてもらえてないだろうなと、何となく察した。
そんなはずはないと疑って、でも本当だろうかと判断がつかないでいるそんな表情だった。
少しだけ気まずくなった雰囲気を気にしないようにしてマティアス様とのいちゃいちゃスキンシップを再開する。

マティアス様の上で他愛ない話をしながら手を繋いだり、触れ合ったり、擽ったり擽られたりする内に気まずい雰囲気は何処かへ飛んでいった。
こうやって話をしたり触れ合ったりする中で少しずつ私の好意を実感してもらえたらいい。


「マティアス様の髪…とっても綺麗な金髪ですね。」

「…そうか…?特に珍しい髪色ではないし…それを言うならサイカの黒髪の方が美しいと思う。
…黒髪など珍しいし…それに柔らかくて指通りもいい。何より艶やかだ。」

「マティアス様の髪だって柔らかくて指通りもよくて…今だって夕日に照らされて綺麗です。
それに、瞳の色も髪とよく合っていて…私、好きです。」

「っ、そ…そうか。…サイカにそう言ってもらうと何だかくすぐったいな…。」

お互いの髪に指を通しその指通りを楽しむ。
本当、物語の王子様みたいな容姿だ。仮にマティアス様から王族ですと言われてもなるほど、と納得してしまうだろう。
多くの女の子が憧れる物語の王子様のようなひとが、私の目の前にいる。
ずっと見ていても飽きないくらい本当にマティアス様は格好よくて、そんな王子様みたいなひとが私と一緒にいて照れている。


「…ちゅ。」

「!!」

「…ふふ。」

何だか嬉しくなってマティアス様の唇にキスをするとマティアス様はこれでもかという程顔を赤らめた。

「っ、サイカ…?」

「マティアス様、今日は恋人同士みたいに過ごしましょう?
私、いっぱいマティアス様に甘えたいし、マティアス様を甘やかせたいんです。」

「…恋人同士…?」

「はい。」

「…俺と、……サイカが…?」

「娼婦とお客様なんて、そんなの何だか寂しいじゃないですか…。
だからマティアス様が明日…帰ってしまう時間になるまで…思い合う恋人同士として接したいです。
……いや、ですか…?」

「い、嫌なはずがない…!」

「よかった。」

「だが…サイカこそいいのか…?たとえ僅かな時間でも、俺の様な、」

その先の台詞、言わんとする事は察したので人差し指をマティアス様の唇に置き阻止する。
本人や周りが醜いと思おうが、私はマティアス様を本当に格好いいと思うし、マティアス様の容姿がドストライクだ。

「マティアス様。私は聖女でもないし、女神でもない…ただの、一人の女です。
嫌な事は嫌、嫌いなものは嫌い。周りと変わりないんです。
嫌ならとっくにマティアス様を拒んでます。」

「…っ、」

「信じてもらえないと思うし…おかしいと思われるかもしれないけれど…私は他のひとたちよりもずっとマティアス様が格好よく見えるし、すごく…魅力的で素敵な男性に見えるんです。
…マティアス様は優しくて…逞しくて…情熱的で…だから私、マティアス様が初めての相手で本当に嬉しかった…。」

「…サイカ…」

「本当ですよ?マティアス様は私のタイプそのものです。今もじっと私の目を見るぱっちりとした青い目も、すっと筋の通った鼻も、この唇も、筋肉の付いた逞しい体も…私は好きです。」

大好きです、と続けて伝えると丁度私の下腹部の下にあるマティアス様のものが布越しにどんどん硬くなっていくのが分かった。


「…女は理屈より感情的な生き物だから…初めての人の事をずっと忘れない人が多いって…誰かが言ってました。
…ならこの先私はずっと…老いて呆けるか死ぬまで、初めてのひとであるマティアス様を…あの素晴らしい初めてを覚えてるんでしょうね…。」

これ以上ない素敵な男との、とても気持ちのいい、夢の様な初体験を私はずっと忘れないだろう。
それまでの快楽が本当の快楽でなく、ただのお遊びだったと、それまでの幼稚な世界が変わった初体験を。
ずっとずっと覚えているだろう。


「~~~っ…、もう、駄目だ…。サイカ、…サイカを抱きたい。サイカを愛したい。
無理をさせてしまうと分かっているが…そんな可愛い事を言われてしまうと…とてもじゃないが我慢できそうにない…!」

「…嬉しい…私は大丈夫です。…だって今、マティアス様は私の恋人なんだから……我慢なんてしないで。
いっぱい愛し合いたいです。」


マティアス様の逞しい体の上に乗っていたはずの私の体があっという間に柔らかいベッドの上に沈むとすぐにマティアス様の重みがのし掛かる。
抱き締め合いながら何度も何度も深いキスを繰り返しているとあの切ない感覚。
きゅんとお腹が、子宮が疼く感覚がして私はマティアス様の腰に自分の足を絡ませた。
まだ抱き締め合ってキスをしているだけ。マティアス様も私も、互いに着ているものも脱いでいない状態なのに、ズボンの下で硬くなっているマティアス様の大きなものが下着越しに擦れている。
くい、くい、と擦り付けられ私もマティアス様に合わせるように腰が揺れてしまうのを止められない。


「…ちゅ…ん…ちゅ、ちゅ。…マティアスさま、」

「ちゅ…サイカ…、…あの日からずっと、サイカの事ばかりを考えていた…夢にまで出てきて…」

「んんっちゅ、……夢の私と…こんな風にしてたんです…?」

「ああ…、今みたいな…惚けた顔で…ちゅ、可愛らしく誘うんだ…。
は……でも、夢は所詮夢で…サイカを思って慰めても…覚めてみれば一人で…虚しく思った…。
ずっと、この七日…想像や夢ではなく、本物のサイカをこうして愛したかった…」

「は、ちゅ、んあっ…」

「…ああ…やっぱり本物がいい。…本物のサイカがいい…会いたくて堪らなかった…ちゅ、…あの日のように、サイカとこうしてキスをしながら…サイカのここに俺を全部埋めて…サイカに包まれながら子種を出したくて堪らなかった…。」

「んっ…!」

膣口を押し付けるマティアス様の腰の動きがどんどんいやらしさを増していく。
布があるのが酷くもどかしくて、私ははしたないけれどマティアス様の腰に絡めていた片足をズボンに引っ掻けてずらす。
少しだけ吃驚した様子のマティアス様をじっと見つめながら、私も自分の下着を脱いだ。
サイドを紐で結んでいただけの紐パンツは簡単に脱げて…私はまたマティアス様の腰に足を絡ませる。

硬くて、でも弾力もあるマティアス様の大きな陰茎。
その先端がつん、と自分の入り口に触れる、それだけのことで興奮してしまう。
既にキスだけで体は火照っていて、のし掛かるマティアス様の体の重みが更に体を熱くさせた。

「…ちゅ……はあ……すごいな…キスだけで…こんなに濡れている…」

マティアス様が私の入り口を擦ると聞こえてくる、くちくちと粘り気のある水音。
マティアス様を受け入れる準備は当に出来ているようで、自分の体が以前よりずっと敏感になっている気がしてならない。

「…ん、…んっ、…ふあ…」

「…擦っているだけなのに…感じているんだな…。」

「んん…、はいっ……マティアス、さまの、…大きなの、で、擦られるの…気持ち、よくてっ…、あっ、ん、はあっ、」

「はあ…サイカのここがどうなっているか…分かるか…?
擦っているだけなのに…どんどん中から愛液が溢れている…。
入り口に当てると物欲しそうに吸い付いてくるんだ…。」

「んあっ、あっ…!それ、…それ、だめ…」

「…駄目?…何が駄目なんだ…?」

「だめ…いりぐち、つつくの、だめっ…あ、あっ、まだ、ドレス、着て…、よごしちゃう、のに、…ほしくなる……ああっ…!?」

「…はっ、…ああ…少しだけ…入ってしまったな…」

ほんの少し。本当に少しだけマティアス様が入ってきた。
それだけでもう切なくて、奥まで入れて欲しくて堪らない気持ちになる。

「んんう、…ま…まてぃあす、さま、も、入れて…」

「…だが…前戯もしてない…。入れる前にサイカの可愛いここを舐めておきたいんだが…。」

「やあ、…いいの…、まてぃあす様の、ほしいの…いりぐちだけ…せつないから…おねがい、まてぃあすさま…」

「…はあ……本当…可愛いな…。意地の悪い事をしてすまなかった。」

「んあ…まてぃあすさまぁ…」

「…次に会う時に…今から汚してしまう分のドレスを贈ろう。」

ゆっくりと膣をかき分けてマティアス様が入ってくる。
ぞわぞわと背筋が震えるような、そのこそばゆい感覚から逃げたくて背中が弓なりに反ってしまう。

「あ、あっ、んああっ…!?」

ゆっくりと、ゆっくりと。
私の腰をがっちりと掴んだまま、まるで味わうように中を進んでいくマティアス様の先が、ごり、と奥を押し上げてきた。
押し上げられているのは私なのに、重たい。
重たくて苦しくて、でも気持ちいい。

「っ、う…、先が…吸われて…」

「はあ、…は、…あっ、」


分かる。今、私の子宮口とマティアス様の先っぽが隙間なくくっついているのが分かってしまう。
動いてないのに気持ちいい。すごく気持ちよくて、くっついているのが当たり前みたいに安心する。
ずっと奥にいてほしい。ぴったりと、このまま私の奥とマティアス様の先っぽをくっつけていたい。


「…は…、サイカの中は…動かさなくても…十分、気持ちがいいな…。」

「あ、ん……ほんと…?」

「ああ…。本当に…気が狂いそうな程気持ちよくて…気を抜いたら…っ、すぐに出てしまいそうだ…。」


出してほしい。
このまま、ぴったりとマティアス様が私の子宮を塞いでいるこの状態で、思いっきり出してほしい。
きっとすごく、すごく気持ちいいだろうから。入り口を塞がれ逃げ場のない子宮にマティアス様の子種が入ってくる事を想像すると凄くぞくぞくする。
ああ、私は変態でもあったんだなと新たな発見。


「っ…今…サイカの中が…動いて…、」

「はぁ…んっ…、分かるの…まてぃあす、さまの…私の、子宮…赤ちゃんのへやを、塞いでる…」

「…サイカっ…」

「そう思ったら…おなか、せつなくて……まてぃあすさま、…このまま…いっぱい出して…?」

「っ、う…、」

「このまま、赤ちゃんのへや…塞いだまま……キスしながら…恋人同士の、」

「…恋人…同士の…」


「ほんきの、こづくりせっくす、して…?」


その瞬間。勢いよく子宮を刺激する温かい精液の感覚を、私は生まれて初めて実感した。
マティアス様との恋人えっちは、まだ始まったばかり…。
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