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11 給餌
しおりを挟むあの後、めちゃくちゃ手際良く料理を作ったシュルツ。
僕が口を挟む暇も無く、自前の材料と調味料でもってメイン料理もスープも作ってしまった。
「・・・・・・はええ・・・」
ポカンとしているうちにリビングに連れて行かれて椅子に座らされ。
目の前には出来たてホヤホヤの良い匂いのする料理が・・・。
僕の右隣には何故かシュルツが座り、これまた何故か掬った琥珀色のスープを口元に運ばれて。
「え? え? 何?!」
「イツキ、あーん」
「・・・・・・あっ?! んむっ」
驚いて口を開けたところにすかさずスプーンをツッコまれ、思わずもぐもぐごっくん。
「───!! んまぁ・・・!!」
ナニコレ、初めて食べたよこんな美味しいスープ!!
たぶん目がキラッキラしてたと思う。
僕は美味しくて、何も考えずに口を開けた。
「あーん」
「・・・・・・っぐ、かわっ、ヤばっ・・・・・・!」
シュルツが空いた手で口元を押さえて呻いたが、僕は気にせずおかわりを所望する。
若干震えながらスープを飲ませてくれたシュルツ。
・・・・・・気持ち悪くてプルプルしてたんじゃ無い事を祈ろう。
その後はもう、雛鳥よろしくあーんされ続けて最後に綺麗にカットされた果物が・・・。
「綺麗、可愛い。凄い。僕は何時もそのまま丸かじりしてるのに」
「コレからは俺が全部やってやるよ」
「え、ありがとう!」
すっごい助かる───!!
ただ切るだけと上手に出来るのでは意味が全く違う。
自分だと皮付きのままくし切りがせいぜいだもの。
それすら別にいいやって思って齧るだけ。
・・・ずぼら過ぎか。
でも誰も困らないからなぁ・・・って思ってたし。
そして当然のようにその果物も口に運ばれて、きれいさっぱり平らげた後は、予想通り、睡魔が・・・。
いつの間にかシュルツに横抱きにされて運ばれた樹希は、ほどよい揺れ具合にあっと言う間に夢の中だった。
額に柔らかいモノがあたった気がするけど、気にならなかった。
「・・・・・・眠ったか」
シュルツが静かに呟いた。
イツキの周りには色とりどりの精霊達。
『うん、この感じだと夜まで起きないかもね』
『明日の朝までも起きないかもよ?』
『イツキ、いっつも森の中、てくてく歩いてるから疲れてるんだよ』
『のんびりねーって言っても、無理しちゃうのよねー』
『たまにお休みって言うのに、聞いてくれないんだ』
『本人はのんびりしてるつもりだろうけど、毎日いろんな場所に行って、一生懸命、木や草花を手入れするの』
『嬉しいけど、倒れちゃうって心配してたの』
『竜の人、気遣ってくれてありがとう』
そう囁いてチカチカ瞬いた。
「そうか。俺のことは、まあシュルツでも何でも好きに呼ぶと良いよ。しかし、疲れてそうだと思ったのは気のせいじゃ無かったか・・・」
今朝も起きたばかりなのに、すでに蒼白い顔で疲れているようだった。
聞くと朝は起きられなくて、遅めの朝御飯兼昼御飯を軽く食べてから森を見て回るらしい。
そして夜も果物を齧って終わり・・・。
いや、エルフは主食が果物や野菜だと知ってはいるが、イツキが小さいのはその食生活のせいもあるんじゃ無いかなと、余計な御世話かと思いつつも自分の手料理を振る舞ったが。
最初は戸惑っていたが、一口食べた後のあの反応は───。
給餌行為が竜人の番いへの愛情表現だとは知らないのだろうか。
疑問が顔に出たのだろう、精霊達がまたチカチカと囁いた。
『イツキはねえー、色々と知らないの』
『知ってること知らないこと偏ってるの』
『精霊達以外はどうでもいい? 無関心? って感じ?』
『イツキ、イヤなこといっぱい。心、疲れてるの』
『4年くらいじゃ、なおらない』
「・・・イヤなこと・・・って?」
精霊達の言葉に思わず聞いてしまってから、しまったと思ったが後の祭りだ。
だが精霊達は気にも止めずに話し出した。
『イツキはね、生まれて直ぐに親に置いて行かれたの。でもそれはイツキを護るためだったの』
『その後直ぐに悪いヤツにお母さん達殺されちゃって、ひとりぼっち』
『御世話して育ててくれたヒトは悪いヒトじゃなかったけど』
『周りはイツキを気持ち悪がって近寄らなかったの』
『でもイツキきれいだから、いやらしい目でいっぱい見られた』
『だから心閉ざして、ニブチンになっちゃった』
『ボクたちがいなかったら、辛くて寂しくて死んじゃってたと思う』
『神様助けてくれてありがとう!』
そう言った後、精霊の一人がそう言ってギョッとした。
「・・・神様?」
『ユトピアの神様助けてくれた』
『だから今ココにいる』
『今は幸せ。ゆっくり幸せ』
『ボクたちも一緒で幸せー!』
きゃははと笑い声が上がって、イツキが煩いだろうとリビングに移動する。
───そう言えば、最初にイツキが言っていた。
神様にここに連れて来て貰ったようなことを・・・。
やはり奴隷狩りにあって親達は殺され、乳児だったイツキだけが助かったのか?
それにしてはその後の生活は余り良いモノじゃなかったようだが・・・。
『だから、イツキは知らないこといっぱい』
『たぶん竜の人が御飯食べさせてくれるのも意味が分かってないと思うよ?』
『ガンバって竜の人』
『応援するから竜の人』
「───ああ、よろしく頼む」
精霊達の無邪気さに気が削がれた。
しかし、やはり給餌行為を分かってなさそうだ。
前途多難だが、好意は持っているはずなので、俺も頑張ろうか。
知らないならコレからたくさん教えれば良い。
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