優しい庭師の見る夢は

エウラ

文字の大きさ
12 / 102

11 給餌

しおりを挟む

あの後、めちゃくちゃ手際良く料理を作ったシュルツ。

僕が口を挟む暇も無く、自前の材料と調味料でもってメイン料理もスープも作ってしまった。

「・・・・・・はええ・・・」

ポカンとしているうちにリビングに連れて行かれて椅子に座らされ。
目の前には出来たてホヤホヤの良い匂いのする料理が・・・。

僕の右隣には何故かシュルツが座り、これまた何故か掬った琥珀色のスープを口元に運ばれて。

「え? え? 何?!」
「イツキ、あーん」
「・・・・・・あっ?! んむっ」

驚いて口を開けたところにすかさずスプーンをツッコまれ、思わずもぐもぐごっくん。

「───!! んまぁ・・・!!」

ナニコレ、初めて食べたよこんな美味しいスープ!!

たぶん目がキラッキラしてたと思う。
僕は美味しくて、何も考えずに口を開けた。

「あーん」
「・・・・・・っぐ、かわっ、ヤばっ・・・・・・!」

シュルツが空いた手で口元を押さえて呻いたが、僕は気にせずおかわりを所望する。

若干震えながらスープを飲ませてくれたシュルツ。
・・・・・・気持ち悪くてプルプルしてたんじゃ無い事を祈ろう。

その後はもう、雛鳥よろしくあーんされ続けて最後に綺麗にカットされた果物が・・・。

「綺麗、可愛い。凄い。僕は何時もそのまま丸かじりしてるのに」
「コレからは俺が全部やってやるよ」
「え、ありがとう!」

すっごい助かる───!!
ただ切るだけと上手に出来るのでは意味が全く違う。
自分だと皮付きのままくし切りがせいぜいだもの。
それすら別にいいやって思って齧るだけ。
・・・ずぼら過ぎか。
でも誰も困らないからなぁ・・・って思ってたし。

そして当然のようにその果物も口に運ばれて、きれいさっぱり平らげた後は、予想通り、睡魔が・・・。

いつの間にかシュルツに横抱きにされて運ばれた樹希は、ほどよい揺れ具合にあっと言う間に夢の中だった。

額に柔らかいモノがあたった気がするけど、気にならなかった。



「・・・・・・眠ったか」

シュルツが静かに呟いた。
イツキの周りには色とりどりの精霊達。

『うん、この感じだと夜まで起きないかもね』
『明日の朝までも起きないかもよ?』
『イツキ、いっつも森の中、てくてく歩いてるから疲れてるんだよ』
『のんびりねーって言っても、無理しちゃうのよねー』
『たまにお休みって言うのに、聞いてくれないんだ』
『本人はのんびりしてるつもりだろうけど、毎日いろんな場所に行って、一生懸命、木や草花を手入れするの』
『嬉しいけど、倒れちゃうって心配してたの』
『竜の人、気遣ってくれてありがとう』

そう囁いてチカチカ瞬いた。

「そうか。俺のことは、まあシュルツでも何でも好きに呼ぶと良いよ。しかし、疲れてそうだと思ったのは気のせいじゃ無かったか・・・」

今朝も起きたばかりなのに、すでに蒼白い顔で疲れているようだった。
聞くと朝は起きられなくて、遅めの朝御飯兼昼御飯を軽く食べてから森を見て回るらしい。
そして夜も果物を齧って終わり・・・。

いや、エルフは主食が果物や野菜だと知ってはいるが、イツキが小さいのはその食生活のせいもあるんじゃ無いかなと、余計な御世話かと思いつつも自分の手料理を振る舞ったが。

最初は戸惑っていたが、一口食べた後のあの反応は───。


給餌行為が竜人の番いへの愛情表現だとは知らないのだろうか。

疑問が顔に出たのだろう、精霊達がまたチカチカと囁いた。

『イツキはねえー、色々と知らないの』
『知ってること知らないこと偏ってるの』
精霊達ボクたち以外はどうでもいい? 無関心? って感じ?』
『イツキ、イヤなこといっぱい。心、疲れてるの』
『4年くらいじゃ、なおらない』
「・・・イヤなこと・・・って?」

精霊達の言葉に思わず聞いてしまってから、しまったと思ったが後の祭りだ。

だが精霊達は気にも止めずに話し出した。

『イツキはね、生まれて直ぐに親に置いて行かれたの。でもそれはイツキを護るためだったの』
『その後直ぐに悪いヤツにお母さん達殺されちゃって、ひとりぼっち』
『御世話して育ててくれたヒトは悪いヒトじゃなかったけど』
『周りはイツキを気持ち悪がって近寄らなかったの』
『でもイツキきれいだから、いやらしい目でいっぱい見られた』
『だから心閉ざして、ニブチンになっちゃった』
『ボクたちがいなかったら、辛くて寂しくて死んじゃってたと思う』
『神様助けてくれてありがとう!』

そう言った後、精霊の一人がそう言ってギョッとした。

「・・・神様?」
『ユトピアの神様助けてくれた』
『だから今ココにいる』
『今は幸せ。ゆっくり幸せ』
『ボクたちも一緒で幸せー!』

きゃははと笑い声が上がって、イツキが煩いだろうとリビングに移動する。

───そう言えば、最初にイツキが言っていた。
神様にここに連れて来て貰ったようなことを・・・。

やはり奴隷狩りにあって親達は殺され、乳児だったイツキだけが助かったのか?
それにしてはその後の生活は余り良いモノじゃなかったようだが・・・。

『だから、イツキは知らないこといっぱい』
『たぶん竜の人が御飯食べさせてくれるのも意味が分かってないと思うよ?』
『ガンバって竜の人』
『応援するから竜の人』
「───ああ、よろしく頼む」

精霊達の無邪気さに気が削がれた。

しかし、やはり給餌行為を分かってなさそうだ。

前途多難だが、好意は持っているはずなので、俺も頑張ろうか。

知らないならコレからたくさん教えれば良い。




しおりを挟む
感想 234

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年の乙女ゲー転生BLです。

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

事なかれ主義の回廊

由紀菜
BL
大学生の藤咲啓嗣は通学中に事故に遭い、知らない世界で転生する。大貴族の次男ランバート=アルフレイドとして初等部入学前から人生をやり直し、学園で出会う無愛想で大人顔負けの魔法の実力者であるヨアゼルン=フィアラルドと親友になるが、彼に隠された力に翻弄され次々と襲ってくる災難に巻き込まれる。終いには、国家の存続を揺るがす大事件にまで発展することに・・・

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

処理中です...