男前で何が悪い!

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37 閑話 ウェイバー侯爵家三男ルカ視点 

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僕は転生者でこのBLゲームの世界の主人公オメガのルカだ。

養子でアルファの次男リアムは攻略対象の一人で、一番上のアシェルが悪役令息。

他にも王都にいる第二王子やその側近候補達も攻略対象だけど、僕はゲームではリアムが一番好きだった。

もちろん他の攻略対象とのルートも全部やったけどね。

アシェルに酷く虐められて落ち込んでいる彼を慰め、寄り添い、やがてアシェルを断罪してウェイバー侯爵家の次期当主になり、ルカと婚姻する・・・。

虐められるリアムがルカを頼って最後にはイイ男になって断罪して求婚---。
僕はこのルートが大好きだったから。

他?
王子達もカッコいいけど、常に周りに愛想振りまくるのも疲れるからね。
王子妃教育とか無理。
面倒くさいし、リアム一択で。

それに僕にはチートがある。

転生特典で一つだけ、と言って神様から貰った『魅了チャーム』の特殊スキル。

これで皆が僕の言うことを聞いてくれる。

───だから。

何故か悪役令息のアシェルが良い子で、リアムを虐めることをしなかったせいで始まらない物語の為に、罪を偽造して悪いことを吹き込む時には魅了を使ったし。

アシェルを馬車の事故に見せかけて殺すときも御者に使った。

でもせっかくリアムの婚約者になったのにリアムは素っ気なくて、だからちょっと強めに魅了を使って僕に気持ちを向けさせて・・・。

そのまま8年経って、僕はこのままリアムと結婚できると浮かれてたんだ。


───あの日、リアムの首に掛かったネックレスにアシェルの魔力を認めるまでは・・・。


僕たちは婚約者同士だけど、リアムは何処か一線を引いていて、未だに清いカラダのまま。

僕がまだヒートを迎えていないせいもあるのかも。
だから寝室もまだお互い別のまま。
でも結婚まで初夜をとっておいても良いかなあって思っていた矢先、リアムに用事があった僕はリアムの部屋で待っていた。

ちょうどお風呂あがりだったリアムはおざなりに髪を拭き、上のシャツは袖を通しただけで色気満載・・・と見蕩れていたら、首元に見慣れないネックレスが。

「───それ、如何したの?」

僕はおそるおそる聞いてみた。
心臓がドキドキ言ってる。

リアムはキョトンとしたあと、ああ・・・と気付いて言ったんだ。

「昔、義兄上アシェルがくれたんだ。御守りだって」
「───・・・・・・へえ・・・そう、なんだ。ねえ、それ、僕もよく見てみたい。貸してくれない?」
「・・・・・・え、でも、コレは俺が・・・」
「『貸して』、明日には返すから」
「───うん。はい・・・」

拒否したリアムに魅了で強く指示を出すと貸してくれたから、僕は急いで部屋をあとにした。

「後で、また来るね」
「おやすみ」

当初の用事よりもコッチの方が優先だ。
だって、魔石が光ってる。
それって、まだアシェルが生きてるってコトじゃ無い?
8年経っているのに、こんな小さな魔石に籠められた魔力なんてとっくに消えてるはずなのに、ずっと光ってる。

───きっと何処かにいる。

「急いで僕を冒険者ギルドに連れて行って」
『御意』

影に連れられて冒険者ギルドに入ると、懇意にしている受付担当の男にしっかり金を握らせて調べて貰う。

お互い、それがイケないことと知ってはいるが、袖の下ってヤツで秘密だ。

案の定、『セッカ』という名前での登録を知る。

「───今は辺境伯領のフォルセオという街で活動中です」

更に追加料金を渡すとそう教えてくれた。

「ありがとう」


部屋に戻ってアレコレ考えながら、翌日、リアムにネックレスを返す。

それから暫くは穏やかな日々が続き、その間もセッカという名のアシェルの情報は得ていたが、特に変化が無かったのでそのまま様子を見ていた。

そんな時に偶然マンティコア討伐で手に入った『悪魔の吐息』を誤魔化して手元に残し、後顧の憂いを残さぬように策を練ってアシェルセッカを消そうとして───。


後はご覧の通り。



見事に計画は失敗。

僕は魅了の能力を封じられて、監獄と変わらない修道院に終身刑。

死ぬほど厳しい生活では無かったが、質素な食事に、貴族では経験の無い掃除や洗濯など。
娯楽も無いし、庭に出ても後ろは崖っぷち、前は鬱蒼とした森で、結界から出ればあっという間に魔獣に食われる。

誰も逃げ出せずに黙々と日々、生きているだけ。

「───はあ・・・僕、どこで間違えたかなあ」

独りごちる。

『───ゆめゆめ、忘れるでないぞ。其方のゆく世界はなのだから・・・』



ルカの頭の中には、あの時の神様の声が響いていた・・・。

───今頃になって思い知るなんてね。

「もっと早く、気付いてたら・・・」

だって、そもそも兄上アシェルはゲームみたく冷たい、意地悪な性格じゃ無かった。

小さな頃から僕を可愛がってくれてて、リアム義弟にだって最初から優しくて、その後もずっと優しかったじゃ無いか。

僕がゲーム通りにしようと一人躍起になってただけで・・・・・・。



「・・・ごめんなさい、アシェル兄上」



彼の呟きは誰にも届かず、冷たい夜空に消えていった。





※強いて言うなら、最初から間違えた、でしょうか。
ここは似て非なる世界でしたってヤツですね。

書き上がっていたのでココに差し込みましたが、もしかしたら後で順番を差し替えるかもしれません。

更新遅れてます。お待ちいただいた皆様、ありがとうございます。

次話はリアム視点を予定してます。


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