男前で何が悪い!

エウラ

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7 ルゥルゥとの出会い 2

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「・・・・・・」

川岸で助け出されて、一夜明けた今朝。

目を覚ますと、目の前にはアイスブルーの瞳の大きな銀色の狼・・・。

「・・・・・・おー・・・かみ・・・?」

そう呟いた自分の声が掠れていた。

───あ・・・コレはマズい。
熱を出す時の前触れだ。

ええと・・・・・・昨夜はルゥルゥのテントに泊まって・・・。
・・・あれ、ルゥルゥは?

「・・・・・・ルゥ・・・・・・どこ・・・?」
『目の前にいるぞ』

ちょっとくぐもったような、コハクの念話のような、でも確かにルゥルゥの声がした。
───目の前の狼から。

「・・・・・・おーかみ? ルゥ?」
『そうだ。銀狼だ。テントが狭いので獣化していたんだ。・・・・・・セッカ、どうも様子が変だが・・・』
「・・・んー、ねつ、でたかも・・・。悪いけど、くすり・・・俺のバッグ、に・・・」

身体を動かすのが重くて億劫だ。
久しぶりに体調を崩した・・・。

「───俺がやるから寝ていろ」

あれ、普通に昨日と同じ声だとそちらを見ると、シュルンと人型に戻っていて、サッと衣服を身に着けテントから出て行くルゥルゥが視界に入った。

───昨日は気付かなかったが、そうか、獣人だったんだ。
そういえば、人化が得意な獣人は耳も尻尾も消せるって聞いたな。
じゃあ、ダートとスレッドも、もしかしたらソマリさんも何かしらの獣人とか、人族以外の可能性があるのか・・・。

今まで見かけた獣人はケモ耳が付いてたり鱗があったり何処かしらに特徴が有ったから忘れてた。

何時もなら無意識に鑑定さんで見ちゃうけど、昨日はそんな余裕無かったしな・・・。

いやいや本当はやっちゃいけないんだけど、すでに8年、一応追われてるかもしれない身では、何事も疑ってかかっちゃうクセが・・・。

・・・・・・はあ、それにしても頭が重くてぼーっとしてきた。
マズい、本格的にマズい。

皆さんに迷惑が・・・・・・。

「迷惑なんかじゃ無いですよ、セッカさん。これ熱に効く薬です。飲んで下さい」

そんな事を考えていたらソマリさんが来て熱冷ましの水薬を分けてくれた。

「売り物で色んな種類をたくさん持ってますから、気にせずどうぞ。お代はロルフさんから頂いてますので」
「・・・あ、がと・・・・・・」

声が掠れて出なくなってきた。
ヤバい。
薬、飲まないと。

不意に頭を持ち上げられ、唇に何かふにっと当たった。
ぬるっと何かが唇を割って入り、そこからちょっと苦いモノが流し込まれる。

───あ、コレ、薬だ。

ああ、口移しで飲ませてくれてるのか・・・。
確かにちょっと自力では飲めなかったから助かる。

・・・・・・でも何故か、何時ものより苦くない気がする・・・・・・。
仄かに甘いような、爽やかなような・・・。

そのまま飲み終わると、ふっと目蓋が重くなり、セッカは再び眠りについた。


「・・・・・・どうですか? やはり川に流されたことが原因でしょうか」
「おそらく。眠りの魔法を弱くかけてきたので暫くは起きないでしょうが、熱が上がってきてますね」

テントの外で待っていたソマリが心配そうに聞いてきたのでそう応える。
そのロルフの言葉に少し険しい顔で考えるソマリ。

「じゃあ、急いで支度してココを発ちましょうか。街の方が適切な治療が受けられますし」
「そうだな。移動中は馬車で寝てて貰うことになるが・・・」

スレッドがそう言った。
結構揺れるから、病人には辛いかもしれない。

「俺が付いてても良いか?」

ロルフの言葉に苦笑するダート。

「・・・どうせそのつもりだろうが。外は任せろ」
『我も力を貸すぞ』

コハクがクルルッと鳴いたが・・・。

「───うーん、何言ってるかサッパリ分からん」
「手伝う気満々っぽいから、俺に任せろって事じゃ無いか?」
『よく分かったな!』
「・・・たぶん今、ドヤってるよな」
「ああ。ソレは俺も分かった!」

ダートとスレッドがコハクと戯れている間に朝食を済ませていたソマリ達はササッと火の始末をして馬車に乗り込む。

「ロルフさん、セッカさんをそちらの馬車に」
「スミマセン、助かります」

そう言ってロルフがセッカを抱き上げ、テントをマジックバッグに収納すると馬車に乗り込んだ。

コハクはセッカの乗った馬車の屋根に居座ると威圧を飛ばし始めた。
馬車を中心にかなりの広範囲で広がっていく。

「・・・・・・マジか。何なのあの威圧」
「・・・どう見ても普通の鷲じゃ無いよな」
「───ま、コレなら下手な魔物はビビって寄りつかんだろう」
「ご主人思いの従魔だなー」

ダート達はカラカラと笑いながら馬車の御者台にそれぞれ座って出発した。


『・・・どれ、風魔法で少々スピードアップと行こうか』

コハクはさり気なく馬や馬車を風魔法で少し早く動くようにしたのだった。

もちろんダート達はそれに気付いて苦笑していたのだったが。

「こりゃ、早く着きそうだな」
「良いことだ」

馬車は軽快に走り出すのだった。










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