8 / 62
7 ルゥルゥとの出会い 2
しおりを挟む「・・・・・・」
川岸で助け出されて、一夜明けた今朝。
目を覚ますと、目の前にはアイスブルーの瞳の大きな銀色の狼・・・。
「・・・・・・おー・・・かみ・・・?」
そう呟いた自分の声が掠れていた。
───あ・・・コレはマズい。
熱を出す時の前触れだ。
ええと・・・・・・昨夜はルゥルゥのテントに泊まって・・・。
・・・あれ、ルゥルゥは?
「・・・・・・ルゥ・・・・・・どこ・・・?」
『目の前にいるぞ』
ちょっとくぐもったような、コハクの念話のような、でも確かにルゥルゥの声がした。
───目の前の狼から。
「・・・・・・おーかみ? ルゥ?」
『そうだ。銀狼だ。テントが狭いので獣化していたんだ。・・・・・・セッカ、どうも様子が変だが・・・』
「・・・んー、ねつ、でたかも・・・。悪いけど、くすり・・・俺のバッグ、に・・・」
身体を動かすのが重くて億劫だ。
久しぶりに体調を崩した・・・。
「───俺がやるから寝ていろ」
あれ、普通に昨日と同じ声だとそちらを見ると、シュルンと人型に戻っていて、サッと衣服を身に着けテントから出て行くルゥルゥが視界に入った。
───昨日は気付かなかったが、そうか、獣人だったんだ。
そういえば、人化が得意な獣人は耳も尻尾も消せるって聞いたな。
じゃあ、ダートとスレッドも、もしかしたらソマリさんも何かしらの獣人とか、人族以外の可能性があるのか・・・。
今まで見かけた獣人はケモ耳が付いてたり鱗があったり何処かしらに特徴が有ったから忘れてた。
何時もなら無意識に鑑定さんで見ちゃうけど、昨日はそんな余裕無かったしな・・・。
いやいや本当はやっちゃいけないんだけど、すでに8年、一応追われてるかもしれない身では、何事も疑ってかかっちゃうクセが・・・。
・・・・・・はあ、それにしても頭が重くてぼーっとしてきた。
マズい、本格的にマズい。
皆さんに迷惑が・・・・・・。
「迷惑なんかじゃ無いですよ、セッカさん。これ熱に効く薬です。飲んで下さい」
そんな事を考えていたらソマリさんが来て熱冷ましの水薬を分けてくれた。
「売り物で色んな種類をたくさん持ってますから、気にせずどうぞ。お代はロルフさんから頂いてますので」
「・・・あ、がと・・・・・・」
声が掠れて出なくなってきた。
ヤバい。
薬、飲まないと。
不意に頭を持ち上げられ、唇に何かふにっと当たった。
ぬるっと何かが唇を割って入り、そこからちょっと苦いモノが流し込まれる。
───あ、コレ、薬だ。
ああ、口移しで飲ませてくれてるのか・・・。
確かにちょっと自力では飲めなかったから助かる。
・・・・・・でも何故か、何時ものより苦くない気がする・・・・・・。
仄かに甘いような、爽やかなような・・・。
そのまま飲み終わると、ふっと目蓋が重くなり、セッカは再び眠りについた。
「・・・・・・どうですか? やはり川に流されたことが原因でしょうか」
「おそらく。眠りの魔法を弱くかけてきたので暫くは起きないでしょうが、熱が上がってきてますね」
テントの外で待っていたソマリが心配そうに聞いてきたのでそう応える。
そのロルフの言葉に少し険しい顔で考えるソマリ。
「じゃあ、急いで支度してココを発ちましょうか。街の方が適切な治療が受けられますし」
「そうだな。移動中は馬車で寝てて貰うことになるが・・・」
スレッドがそう言った。
結構揺れるから、病人には辛いかもしれない。
「俺が付いてても良いか?」
ロルフの言葉に苦笑するダート。
「・・・どうせそのつもりだろうが。外は任せろ」
『我も力を貸すぞ』
コハクがクルルッと鳴いたが・・・。
「───うーん、何言ってるかサッパリ分からん」
「手伝う気満々っぽいから、俺に任せろって事じゃ無いか?」
『よく分かったな!』
「・・・たぶん今、ドヤってるよな」
「ああ。ソレは俺も分かった!」
ダートとスレッドがコハクと戯れている間に朝食を済ませていたソマリ達はササッと火の始末をして馬車に乗り込む。
「ロルフさん、セッカさんをそちらの馬車に」
「スミマセン、助かります」
そう言ってロルフがセッカを抱き上げ、テントをマジックバッグに収納すると馬車に乗り込んだ。
コハクはセッカの乗った馬車の屋根に居座ると威圧を飛ばし始めた。
馬車を中心にかなりの広範囲で広がっていく。
「・・・・・・マジか。何なのあの威圧」
「・・・どう見ても普通の鷲じゃ無いよな」
「───ま、コレなら下手な魔物はビビって寄りつかんだろう」
「ご主人思いの従魔だなー」
ダート達はカラカラと笑いながら馬車の御者台にそれぞれ座って出発した。
『・・・どれ、風魔法で少々スピードアップと行こうか』
コハクはさり気なく馬や馬車を風魔法で少し早く動くようにしたのだった。
もちろんダート達はそれに気付いて苦笑していたのだったが。
「こりゃ、早く着きそうだな」
「良いことだ」
馬車は軽快に走り出すのだった。
342
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
【本編完結】落ちた先の異世界で番と言われてもわかりません
ミミナガ
BL
この世界では落ち人(おちびと)と呼ばれる異世界人がたまに現れるが、特に珍しくもない存在だった。
14歳のイオは家族が留守中に高熱を出してそのまま永眠し、気が付くとこの世界に転生していた。そして冒険者ギルドのギルドマスターに拾われ生活する術を教わった。
それから5年、Cランク冒険者として採取を専門に細々と生計を立てていた。
ある日Sランク冒険者のオオカミ獣人と出会い、猛アピールをされる。その上自分のことを「番」だと言うのだが、人族であるイオには番の感覚がわからないので戸惑うばかり。
使命も役割もチートもない異世界転生で健気に生きていく自己肯定感低めの真面目な青年と、甘やかしてくれるハイスペック年上オオカミ獣人の話です。
ベッタベタの王道異世界転生BLを目指しました。
本編完結。番外編は不定期更新です。R-15は保険。
コメント欄に関しまして、ネタバレ配慮は特にしていませんのでネタバレ厳禁の方はご注意下さい。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
祖国に棄てられた少年は賢者に愛される
結衣可
BL
祖国に棄てられた少年――ユリアン。
彼は王家の反逆を疑われ、追放された身だと信じていた。
その真実は、前王の庶子。王位継承権を持ち、権力争いの渦中で邪魔者として葬られようとしていたのだった。
絶望の中、彼を救ったのは、森に隠棲する冷徹な賢者ヴァルター。
誰も寄せつけない彼が、なぜかユリアンを庇護し、結界に守られた森の家で共に過ごすことになるが、王都の陰謀は止まらず、幾度も追っ手が迫る。
棄てられた少年と、孤独な賢者。
陰謀に覆われた王国の中で二人が選ぶ道は――。
悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放
大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。
嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。
だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。
嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。
混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。
琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う――
「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」
知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。
耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。
愛を知らない少年たちの番物語。
あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。
*触れ合いシーンは★マークをつけます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる