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4 幻獣との出会い
しおりを挟むアレから鬱蒼とした森の中を、食べられそうな果物なんかを手に入れつつ歩いて数日後。
この森は【暗き森】という、そのまんまの名前で笑った。
アシェルの住んでいたであろう王都のタウンハウスから北に位置するそこそこ深くて魔物が多い森だ。
ウェイバー侯爵領は王都からもっと南にあるが、何か用があって王都にいたらしい。
なんで分かるかって?
マップさんがウェイバー侯爵領を示して鑑定さんが説明してくれたから。
なにこの親切設定。
痒いところに手が届くってヤツ?
で、思ったわけ。
アレかな?
小説だと学園入学とか?
ソレで王都にいる間に狙われたのかな?
・・・って。
たぶんだけど、おおよそあってると思うな。
心底どうでもいいけど。
ただ、アシェルが生きてるって分かって追っ手がかかるのもイヤだし、助かっても知らない家族の元に連れ戻されてあーだこーだ気を遣いたくないし。
いやだってもう、ほんっと記憶ないもん。
赤の他人と同じよ。
だからとにかく、離れたい。
俺はもう別人なんだから、ほっといて欲しい。
そんな事を思いながら森をあと少しで抜けるって時に、目の前にヤツが現れた。
「キョエー!!」
そう叫んだヤツは、今の俺より小さい、鷲の頭に獅子の身体で鷲の翼を持った【グリフォン】だった。
見た目、俺の前世の知識と同じ容姿だし、鑑定さんもそう言ってた。
「・・・キョ○ちゃん?」
俺は思わず鳴き声と嘴から何となくそう呟いた。
ソレを馬鹿にされたと思ったのか飛びかかってきたソイツに、思わず反射的に回し蹴りをおみまいしてしまった。
「あ、やべ」
思ったよりもガッツリ決まったらしく、横に吹き飛んだグリフォン(小)は大木の幹に頭からめり込んだ。
その後、ピクリともしない。
「・・・しまった。おーい・・・無事か?」
尻尾を握って引っ張って幹から抜くと、何かぱあっと魔法陣のようなモノが現れて光った。
思わず鑑定さーんと思えば、【セッカの従魔・グリフォン(瀕死)】と出て・・・。
「───はああっ?!」
どっからツッコめばいいやらな情報満載だったが、ひとまず人助けならぬ従魔助けをせねば、と慌てて途中で狩った魔物の肉を取り出し、時間短縮で火魔法でレアに焼いて皿に盛ってやった。
匂いに反応したのか、ピクッとしたあとのグリフォン(小)のがっつきっぷりが凄くて、思わず追加で何度か肉を焼いてやったら満足いくまで食べていた。
『───美味かった!』
「ソレは良かった」
『・・・ん?』
「ん?」
一人と一頭は同じ向きに首を傾げた。
『・・・何故、我の言葉が分かる』
「従魔契約したから?」
───でいいんだよな、鑑定さん?
・・・ウン、確かにステータスに追加されてる。
間違いない。
『・・・・・・従魔契約・・・・・・だと? 誰が? 誰を?』
「俺が、お前を」
『・・・・・・・・・・・・のわあぁ───っ?! な、何故だ?! 何故人間なんて矮小な輩と従魔契約なぞ───?!』
「・・・・・・うん、矮小なのは認めるけどね。従魔契約も何でか分かんないけどさ。別に俺はお前なんか求めてないし、解除しても良いよな?」
『───は? 良いのか?』
俺の言葉を聞いてグリフォンが唖然とした。
「別に良いよ。幻獣なんてバレたら面倒そうだし。お前も嫌でしょ?」
『・・・・・・そりゃ、いきなり従魔なんて、十分プライドも何も・・・・・・』
「うん、じゃあ契約解じょ」
『まてまてまて! お前、本当に良いのか?! 幻獣だぞ! 滅多にないことなんだぞ?! 偶然とはいえ凄いことなんだぞ!!』
それに俺は首を傾げた。
「面倒事は勘弁なんで」
『うおおおおい、即決だな! 分かった。分かったから』
「じゃあ、解」
『だから待てと言ってるだろうが!! 分かったはそういう意味じゃない!』
「・・・えー、面倒・・・」
『・・・・・・面倒、じゃ無い!! ったく。このまま従魔契約で良いという意味だ! ボケッ!』
「・・・・・・・・・・・・解除」
『すんなって言ってんだろーがぁ!!』
ぎゃいぎゃい喚くグリフォンに、しまいには耳を塞いで半目でうんざりするセッカ。
結局、根負けしたセッカがグリフォンに名付けをして正式な従魔契約を結ぶと、幻獣についてのリスクを考え、便利な創造魔法で従魔の証を作り、認識阻害の魔法を付与して大きな鷲の魔物に擬態した。
普段は小型化してもらう。
ソレから、セッカの事情も説明する。
『・・・・・・なるほど、過去の記憶が無いのだな。ソレでもしかしたら命を狙われているかも、と。うむ、分かった。我も気を配ろう。その代わりと言ってはなんだが、お前の作った飯、美味かったからまた作ってくれ!』
「・・・・・・構わないけど、そんなんで良いの?」
・・・・・・幻獣なのに?
『うむ。今まで1000年くらい生きてるが、あんなに美味いのは初めてだった! 何時も生肉を貪り食っていたのでな!』
「・・・・・・そうなんだ。せんねん・・・・・・長生きだね。まあ、俺も生肉は食えないからついでだし、分かった。じゃあコレからよろしく琥珀」
『おう、よろしくな、雪花』
「───ところで、何であんなに弱ってたんだ?」
セッカが疑問に思っていたことをついでに、とばかりに聞いてみたら、すいっと目を逸らされた。
・・・オイ。
『・・・うっ・・・・・・ついうたた寝したらいつの間にか300年くらい経ってて・・・・・・さっき目覚めたばかりで腹が減りすぎてて・・・』
「───馬鹿?」
呆れたセッカにジト目でそう言われて、コハクは返す言葉も無くセッカの肩にしょぼんと丸くなってしがみ付いた。
コレが俺達の出会いだった。
それからは色んな街や村を転々としながら、レベルを上げ、冒険者ランクを上げて北へ北へと旅を続けていた。
───そんなある日、あの魔物大発生に出くわしたんだ。
※別の話の幻獣を思いだした方・・・全ての幻獣がこんなんではありません。
単に作者の趣味です。
初めての方はご注意ください。
シリアスは長くは続きません。
ストックがある内は予約で連投します。
切れたら不定期になります。
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