男前で何が悪い!

エウラ

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5 スタンピード

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※前半セッカ視点。中間に別視点。後半にまたセッカ視点に戻ります。



自分がセッカとして目覚めてからはや8年、あの森を抜けた後、10歳から出来るというので冒険者登録をして少しづつランクを上げ、今はAランクになったところだった。


ランクも上がったし、そろそろ拠点を更に北の街にしようと、コハクと単独で山越えをしていたとき。

───ソレは急に起こった。

事前にギルドや近隣の街などに何の情報も無く、山越えもちょっと大変だな、くらいだったのに、ソコに前触れもなく一気に魔物が溢れ出たのだ。

「スタンピードだ! 逃げろ!!」

先頭にいたらしい冒険者が大声で叫ぶ。

セッカ達の前後にも何組か山越えをしていた冒険者や商人達がいたが、しかし皆、動揺していたため咄嗟に動けなかった。

「───マズい! コハク!!」
『・・・了解!』

さすがに見殺しには出来ないと、俺は咄嗟に皆に結界を張った。
コハクは体長3mの元のサイズになると、空から容赦なく風魔法を使い、魔物を切り裂いていく。
俺も結界を張ったまま多重魔法を放ち、刀を片手に魔物を切り裂いていった。

普段は目を付けられたくない為に力をセーブしているが、今はそんな事を言っている場合じゃ無い。

出し惜しみなく、ガンガン魔物を屠っていく。



どれ程の時間が経っただろうか。

気付けば魔物はあらかた倒され、結界に被われた冒険者や商人達は呆然としながらコハクとセッカを見つめていた。

あの膨大な数の魔物をこの青年と従魔は狩り尽くしたのだ。

「───助かった・・・のか?」
「・・・・・・うそ、だろ・・・?」
「信じられない・・・」

そんな事をめいめいに呟く冒険者達だが、セッカとコハクはまだ警戒を解いていなかった。

───ソレはまだ脅威が去っていなかったから。

「「「───は?」」」

冒険者達は信じられないというように呟く。

目の前にオーガキングが現れたのだ。

皆は絶望した。
もう無理だと。
自分達はなにもできず、今まで戦ってきた彼と従魔も疲労困憊だ。

───死ぬ。

誰もがそう思ったが、しかし、彼はオーガキングの首を一刀両断した。

一瞬で、オーガキングが倒れた。

夕日が山に消える一瞬のきらめきに目を瞬いたほんの一瞬で・・・。

───しかしソコで力尽きたのか、青年は倒れたオーガキングに押されるように、渓流に身を投げ、そのまま流れに任せるように消えていった。

その後を従魔も追っていったようだが、暗くなる中、流れは速く険しい急流で、その後どうなったのか分からなかった。

ただ、その後すぐに自分達を護っていた結界が消え、もしかしたら、もう・・・・・・という空気が流れた。


ソレから間もなく、救援でやって来た冒険者達や山の麓の街の騎士団に状況を説明したが、誰もが信じられないというように首を振った。

「そんな力があるなら、とっくにSランクにでもなっているだろう?」
「鳥型の従魔を連れてるヤツなら最近Aランクになったばかりの眼帯のアイツだろう? ひょろっとしたヤツだぜ。さすがに無理があるなぁ」

そう言って呆れていた。

「夢でも見たんだろう。もっと凄い別の誰かが現れて倒したんだな。お前らは運が良かった」

そう言って後始末をしながら、彼等は魔物討伐の手柄を自分達のようにしていった。

助けられた冒険者や商人達はもはや口を噤むしか無く・・・・・・。

───何時か、彼等に出会うことがあったら、俺達だけは礼を尽くそう。

そう心に秘めて、山を越えて行った。



───一方で、川に落ちたセッカは、意識が朦朧としながらも何とか下流まで辿り着き、付いてきていたコハクに咥えられてずるずると河原に引き摺りあげられていた。

「───はあっ、はあっ・・・・・・げほっ」

結構な量の水を飲んで、ゴホゴホと苦しそうに咽せて飲んだ水を吐き出す。

「・・・っ、ごほっ・・・!」
「大丈夫か?! しっかりしろ!」

不意に背中を摩られ、声をかけられてびくっとしたセッカに、コハクがクルルッと声をかけた。

『近くに休憩中の商隊がいてな、人柄も大丈夫そうだから助けを呼んできたのだ』
「───すまない・・・けほっ、ありがとう・・・」
「何、困ったときはお互い様だ。その従魔が俺達の所に急に現れて何やら訴えていたから来てみたら、君が倒れていてな」

コハクに言ったつもりだったが、そうだ、従魔の声はテイマーにしか聞こえないんだった。

改めてお礼を言うと、彼は魔法でセッカを乾かしヒョイと抱き上げて歩き出した。

「・・・・・・あ、の?」

戸惑いつつセッカが声をかけると、彼はニコッと笑って言った。

「見たところ疲労困憊のようだ。護衛対象の商隊の主人に断りを入れて許可が出れば今夜はココで休むと良い」
「・・・え、あ・・・そういえば今、何時だろう?」

すっかり暗くなっている周りの景色に思わず呟けば、彼が今は夜の8時過ぎだと教えてくれた。

───二時間以上、流されたのか。
確か落ちたときに夕日が沈むのが見えた。
・・・深い溜息を吐く。

「ココは、何処だ?」

無意識に呟けば、再び頭上から声がした。

「辺境伯領の街フォルセオにほど近い街道沿いだ。馬車で明日の夕方には着く距離だ」
「え、あ、ありがとうございます。そうだ、あの、名乗り遅れました、セッカと申します」
「ああ、普通で良いよ。ロルフ・ルゥという。俺はただの冒険者だから敬語も要らない。親しい者にはルゥルゥと呼ばれてるから、セッカもそう呼んで」
「───ルゥルゥ・・・可愛い・・・」
「(───いや、可愛いのは君でしょ)」
「え?」
「ううん、あ、ほらあそこだ」

そう言って連れられてきた所は、ちょうど休憩スペースになっているところらしい。

今夜は彼等しかいないのか、他に休憩しているグループは見当たらなかった。

焚き火を囲んで談笑していたようだ。






※ようやく攻め出た。
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