どうしてこうなった?(ショートから短編枠にしたもの)

エウラ

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18 悪夢

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※◇◇◇の後半アビス視点。



青空がやけに綺麗だった。

その空を背後にして、真っ黒くて大きな熊みたいな獣が立ち上がって鋭い爪を振るう。
吹き飛ばされて動けない俺を覆うように父と母が被さってきて、力の限り抱きしめてくれる。

『あなたは生きて』
『お前だけでも生きろ』

朧気な意識の中、そう声が聞こえて胸の辺りがほわんと温かくなった気がしてすぐに俺の意識はブラックアウトした。

次に目覚めたときには孤児院で院長先生に両親の死を知らされて、お墓の下に眠る両親にお別れをして──。

本当は泣きたかった。叫びたかった。俺をおいていかないでって、一人にしないでって。

「─────っ!」

声にならない自分の掠れた悲鳴で目が覚めた。
アレ、夢? それとも今が夢?

アビスもといシンが王都に着いたと言って俺を抱えて運んでくれたのは覚えてる。
そのあと俺はどうしたんだっけ。

上半身を起こしてみると、脂汗をかいてじっとり湿って貼り付くシャツと見覚えのない天蓋。震える手。

「……おれ……あれ? どこ……ここ、夢? 生きてる?」

シンは?
のろのろと顔を上げて視線を彷徨わせるがどこにもいない。

「──シン?」

返事がなくて、人の気配もない。天蓋の重たい布地に遮られて暗くて、今が何時なのか分からない。
暗い、怖い──こわい。

「──っシン! どこっ、いないの!? ヤだ、一人にしないで……置いてかないでっ」

俺は今まで触れたこともない広くて大きなベッドを這いずって移動した。暗い中を手探りで進むと伸ばした手が端っこでずっこけてベッドから転げ落ちた。

「──ぃった……シン?」

顔を上げるも、シンはいない。薄暗い闇が広がっているだけ。
ただ落ちたときの音が伝わったのか扉らしきものの向こうが騒がしくなったが、そんなことに気を回す余裕は今の俺にはなかった。

「シン、どこ……一人にしないで」

いつの間にかボロボロと泣いていた俺は、滲んだ視界の端に映ったトリニティとエヴァンスに気付かずにとっさに『転移』した。──シンを思い浮かべて。

「──っノヴァ様!」

トリニティの叫び声はすでに転移した俺には届かずに。


   ◇◇◇


ノヴァの休んでいた寝室で騒ぎが起きていた頃、王宮内の王族のプライベートな区画の王の私室に俺はいた。

「──というわけで、今は眠って──」
「シン!」

その声にハッと視線を兄王から逸らすと、目の前に涙でぐちゃぐちゃの顔のノヴァがいた。

──は?

俺と目が合ったノヴァは、ホッとしたように涙でぐちゃぐちゃの顔で微笑んだ。

「シン、一人にしないで……置いてかな……」
「っノヴァ!? おい、まさか転移してきたんじゃ──」
「……」

そう言いきる前にガクッと崩れ落ちそうになったノヴァを慌てて抱きかかえる。
前に言っていた、魔力枯渇だ。

「おい、彼は眠っていたんじゃなかったのか」
「確かに眠っていましたよ。こんなに取り乱すなんて、いったい何が……」

抱きかかえてひとまずソファに座ると、涙を拭う。
魔力枯渇で気を失ってしまったノヴァをそっと抱きしめる。本当は口付けて魔力を流してやりたいが、さすがにここでそれをするのは憚れるので我慢する。

少ししてエタニティが控えめにノックをしてきた。

「アビス様、もしやそちらにノヴァ様が転移していらっしゃいませんか?」
「あー、いるが、どうした」
「トリニティから、ノヴァ様を見失ったと今報告が入りまして」

ああ、おそらくトリニティが止める間もなく目の前で転移してしまったんだろう。

「では無事だと伝えてくれ。魔力枯渇で意識はないが、心配いらない。私が部屋に連れ帰る」
「畏まりました」

俺は兄王の前だが思わず溜め息を吐いた。

「大丈夫なのか」

苦笑してそう言う兄王に自分も苦笑する。

「静かに眠れるようにとノヴァを思って人払いをしていたのが徒となったようです。私やトリニティ達の姿がなくて驚いたのかと」

しかも見慣れない寝室だったろうし。

「それにしては少々取り乱しすぎたようだが」
「……あとで目覚めたら聞いてみます。申し訳ありませんが今日はこれで失礼します」
「ああ、気にするな。数日はゆっくりするといい。──しかし小柄で可愛らしい方だな。これでお前より年上とは」
「あげませんよ」
「心配せんとも手は出さんよ」

冗談だと分かっているが気分は悪い。ムッとしていうと笑われた。

「ではまたな」
「はい、おやすみなさい」

そう言って兄王の私室を出ると、控えていたエタニティがノヴァにローブをかけてくれたのでしっかり包んで、先ほどまでノヴァが寝ていた俺の寝室に戻った。

寝室にはエヴァンスとエタニティが控えていた。乱れていたらしいベッドのシーツも綺麗になっている。

「申し訳ございません」
「ああ、いい。この通り無事だ──と言いたいが、寝汗が酷い。着替えを」
「畏まりました」

テキパキと動くトリニティ達を見ながらノヴァを窺う。

「……何か怖い夢でも見たのかな?」

俺はよく眠れるようにと、おまじないのようにノヴァの額に口付けた。






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