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17 王都にドナドナ 5(sideアビス)
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そのあと休憩所で朝食を食べたノヴァは、改めて護衛の騎士達に挨拶をした。
「あの、出発のときは寝惚けててごめんなさい。王都までの護衛を引き受けてくれてありがとう。頼りにしてる」
眉を下げてそう言うとペコリと頭を下げるノヴァに、君は頭を下げないでいいんだよと声をかけられなかった。
調書によるとノヴァの国の人達は前世でも分け隔てなく謝るべきときは頭を下げるし、お礼を言うときも頭を下げるのが普通のようだった。
もちろん国の上に立つ存在はむやみに頭を下げないし謝罪も滅多にしないだろうが。
そもそも前世の国では貴族階級などなくなって久しいらしく、未だに慣れないということも書いてあった。だからノヴァもそういう生活を送っていたのだろう。
自分が平凡だという思い込みもそういう前世の影響が大きいのかもしれない。
前世から優しい心根なのだろう。その優しさをこちらの常識で否定したくないから、俺は口を噤んだ。
それはそうとノヴァの言葉に俺はモヤッとした。
「ノヴァ、俺は頼りにしてくれないの?」
そう言ったらノヴァはキョトンとした。
「アビスは護衛される側だろ、むしろ俺より偉いんだろ? お前は大人しく護衛されてろ」
いや、そうなんだけど。それはそれ、これはこれでしょ。まあ護衛の件はとりあえずいいよ。それよりもコレが大事。
「俺のことはシンって呼んで欲しいな」
「おい聞いてるのか?」
「ノヴァには昔のように親しみを込めて呼んで欲しい」
ノヴァのツッコミを笑いながら無視してそう続けると、溜め息を吐いてノヴァが折れた。
「おーい……聞いちゃいないな。はあ、分かったよ、シン。これでいいか?」
「ありがとう、ノヴァ! 愛してる!」
「あああ愛してるとか、かか軽く言うな! はっ恥ずかしいっ!」
嬉しくて思わずそう言うと途端に照れてツンデレになり、馬車に戻ったノヴァにまたニヤけて俺も馬車に乗り込み。
騎士達やエヴァンス達に何度も生暖かい視線を向けられながら王都までの旅路を行くのだった。
その道中に出会った盗賊団を騎士達が難なく蹴散らしたり魔物を討伐したりするたびにノヴァが彼らをめちゃくちゃ褒めて、俺が嫉妬したりたまに先陣を切っていいところを見せたりということが何度かあった。
俺だって伊達にSランク冒険者やってないからね!
そんな感じで概ね順調に進んで無事に予定通り10日をかけて夕方には王都に着いたが、元気だったのは初日くらいで、ノヴァは疲れた様子で馬車の座面にぐったり横たわっていた。
目立たないように裏門から入ってこっそり移動する。
「ノヴァ、着いたけど……降りられそう?」
「……無理、シンが運んで……もう動きたくない。揺れる、停まってるのにぐらぐらする」
慣れるどころか逆に馬車酔いになったようだ。途中の道は整備されていないところも多く、かなり揺れたからな。
よくよく聞くと前世でも乗り物にはけっこう弱かったらしい。
──どうりでやたらと転移したいというわけだ。
ローブを被せて顔を覆い、そっと抱き上げると抵抗もせずに身体を預けてきた。
「部屋に着いたら楽な服に着替えてゆっくりしよう」
「え、謁見とか」
「ノヴァに合わせるに決まってるじゃん。心配しないで。体調がよくなってからでいいんだよ」
こっちの都合で王都に連れてきたんだし。
「うー、ん。じゃあ遠慮なく……」
そう言いながらも俺が運ぶ揺れで眠気がきたのか、ウトウトしながらそう言うと目を瞑って黙り込んでしまった。
部屋に着く頃には本格的に寝入ってしまったノヴァをそっとベッドに下ろすとひとまず服を寛がせてそのまま眠らせた。
「さて、これから忙しくなるぞ」
もう手放せないから、覚悟してね。
※ショート枠の分は、加筆しましたがこれで終わりです。
次話から丸っきり新しくなります。
「あの、出発のときは寝惚けててごめんなさい。王都までの護衛を引き受けてくれてありがとう。頼りにしてる」
眉を下げてそう言うとペコリと頭を下げるノヴァに、君は頭を下げないでいいんだよと声をかけられなかった。
調書によるとノヴァの国の人達は前世でも分け隔てなく謝るべきときは頭を下げるし、お礼を言うときも頭を下げるのが普通のようだった。
もちろん国の上に立つ存在はむやみに頭を下げないし謝罪も滅多にしないだろうが。
そもそも前世の国では貴族階級などなくなって久しいらしく、未だに慣れないということも書いてあった。だからノヴァもそういう生活を送っていたのだろう。
自分が平凡だという思い込みもそういう前世の影響が大きいのかもしれない。
前世から優しい心根なのだろう。その優しさをこちらの常識で否定したくないから、俺は口を噤んだ。
それはそうとノヴァの言葉に俺はモヤッとした。
「ノヴァ、俺は頼りにしてくれないの?」
そう言ったらノヴァはキョトンとした。
「アビスは護衛される側だろ、むしろ俺より偉いんだろ? お前は大人しく護衛されてろ」
いや、そうなんだけど。それはそれ、これはこれでしょ。まあ護衛の件はとりあえずいいよ。それよりもコレが大事。
「俺のことはシンって呼んで欲しいな」
「おい聞いてるのか?」
「ノヴァには昔のように親しみを込めて呼んで欲しい」
ノヴァのツッコミを笑いながら無視してそう続けると、溜め息を吐いてノヴァが折れた。
「おーい……聞いちゃいないな。はあ、分かったよ、シン。これでいいか?」
「ありがとう、ノヴァ! 愛してる!」
「あああ愛してるとか、かか軽く言うな! はっ恥ずかしいっ!」
嬉しくて思わずそう言うと途端に照れてツンデレになり、馬車に戻ったノヴァにまたニヤけて俺も馬車に乗り込み。
騎士達やエヴァンス達に何度も生暖かい視線を向けられながら王都までの旅路を行くのだった。
その道中に出会った盗賊団を騎士達が難なく蹴散らしたり魔物を討伐したりするたびにノヴァが彼らをめちゃくちゃ褒めて、俺が嫉妬したりたまに先陣を切っていいところを見せたりということが何度かあった。
俺だって伊達にSランク冒険者やってないからね!
そんな感じで概ね順調に進んで無事に予定通り10日をかけて夕方には王都に着いたが、元気だったのは初日くらいで、ノヴァは疲れた様子で馬車の座面にぐったり横たわっていた。
目立たないように裏門から入ってこっそり移動する。
「ノヴァ、着いたけど……降りられそう?」
「……無理、シンが運んで……もう動きたくない。揺れる、停まってるのにぐらぐらする」
慣れるどころか逆に馬車酔いになったようだ。途中の道は整備されていないところも多く、かなり揺れたからな。
よくよく聞くと前世でも乗り物にはけっこう弱かったらしい。
──どうりでやたらと転移したいというわけだ。
ローブを被せて顔を覆い、そっと抱き上げると抵抗もせずに身体を預けてきた。
「部屋に着いたら楽な服に着替えてゆっくりしよう」
「え、謁見とか」
「ノヴァに合わせるに決まってるじゃん。心配しないで。体調がよくなってからでいいんだよ」
こっちの都合で王都に連れてきたんだし。
「うー、ん。じゃあ遠慮なく……」
そう言いながらも俺が運ぶ揺れで眠気がきたのか、ウトウトしながらそう言うと目を瞑って黙り込んでしまった。
部屋に着く頃には本格的に寝入ってしまったノヴァをそっとベッドに下ろすとひとまず服を寛がせてそのまま眠らせた。
「さて、これから忙しくなるぞ」
もう手放せないから、覚悟してね。
※ショート枠の分は、加筆しましたがこれで終わりです。
次話から丸っきり新しくなります。
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