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490 鑑定終わり
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不謹慎にもわくわくしながら薬草類の鑑定がほとんど終わる頃にアークの声が聞こえた。
「───あったぞ、ノア。加工前のイエローアパタイトだ」
「えっ、ホント!? やった!」
思わず叫んでしまい、ティンバー達の注目を浴び、アークには苦笑された。
「・・・・・・ごめん。えっと、じゃあ他の材料も揃えるね。場所は・・・・・・どうしようか」
「ノア殿、一体何をしようとしているのですか?」
俺が気まずそうにうろうろと視線を彷徨わせていると、気付いたティンバーがやって来て声をかけてくれたので遠慮なく要望を伝える。
「あの香水の元になる違法薬物を試しに錬成したいので、場所の提供とか、あとは立会人とか?」
ここでやってもいいけど、ちゃんと偉い人達が見てる前で錬成した方がいいよね? 大体、錬成しようとしているのは違法薬物なんだし。
「そうだな。王城内でそういう立場の者というと宰相や宮廷の専属薬師長とか?」
「・・・・・・ですね。というか、この押収物から作れるってことですよね? レシピないのに。鑑定で分かったんですか?」
「うん、かなり詳しく分かるから。どんな材料を組み合わせればいいとか、あとは経験とか勘?」
他の人の鑑定の精度は分からないけど、俺のはアレとコレとソレを錬成するとこうなる、という感じで分かるから助かる。
もちろん魔力の込め具合とか分量は経験がモノをいうけどね。
「・・・・・・もう、ノア殿だからということですよね。分かりました。大至急手配します」
「お願いします。じゃあ、それまでこっちの鑑定終わらせておくね!」
はあーっという深い溜息のあとにそう言って手配に向かったティンバーに、こっちもそれまでに終わらすぞ! と俺も気合いを入れるのだった。
それから数十分、山のようにあった押収物はきれいさっぱり片付いて、残ったのは仕分けに使ったマジックバッグだけ。
「お疲れ様でした」
「お疲れ」
俺とアークがティンバーや騎士達にそう声をかけると、騎士達も片付ける手を止めて集まってきた。
「お疲れ様でした」
「こちらこそありがとうございます」
「大変助かりました」
「ノア殿、少し休憩されますか?」
錬成場所や立会人の手配に行っていたティンバーもあれからすぐに戻ってきて、一緒に片付けをしていた。
このあとその錬成をする予定だから、一度休憩を挟むつもりなんだろう。
「うーん。俺としてはすぐに錬成したいけど・・・・・・」
「駄目だ。休憩しろ。お前は放っておくと際限なく錬成や調薬に没頭するからな」
「・・・・・・ということなので、お茶にします」
アークにはいつもそうやって怖い顔で止められてるから頭が上がらない。でも俺のためを思っての忠言だから甘んじて受けますよ。
「それでいい」
そう言ってニコッと笑顔を見せてくれるだけで、しょげた俺の機嫌は天まで浮上しちゃうんだから単純だなって思うけど、別にいいんだ。
「えへへ。じゃあ騎士団の食堂にでも行く? 皆でお茶にしよう。ティンバー団長達も疲れたでしょう?」
「よろしいのですか? こちらは嬉しいのですが───」
ティンバーが遠慮がちに言った言葉に被せ気味にヴァンが割り込んできた。
『ノアのお茶! お茶菓子!』
「・・・・・・ヴァン、反省してるの?」
『してるしてる!』
「・・・・・・本当かなあ・・・・・・まあ大人しかったし、いっか」
『やった!』
ヴァンに甘い俺はそう言って苦笑した。アークはちょっと呆れてたけどね。
いいんだよ、終わったら思う存分もふらせて貰うから。
「相変わらず食いしん坊イッヌだな」
「まあ、躾けやすくていいと思えば・・・・・・」
そんな俺達のやり取りをまたもやポカンと見ている騎士達に苦笑した。
「威厳がない駄犬でごめんなさい」
とりあえず食堂に移動しようとワッフワッフ跳ねるヴァンを窘めながら、空になった訓練場をあとにしたのだった。
「───あったぞ、ノア。加工前のイエローアパタイトだ」
「えっ、ホント!? やった!」
思わず叫んでしまい、ティンバー達の注目を浴び、アークには苦笑された。
「・・・・・・ごめん。えっと、じゃあ他の材料も揃えるね。場所は・・・・・・どうしようか」
「ノア殿、一体何をしようとしているのですか?」
俺が気まずそうにうろうろと視線を彷徨わせていると、気付いたティンバーがやって来て声をかけてくれたので遠慮なく要望を伝える。
「あの香水の元になる違法薬物を試しに錬成したいので、場所の提供とか、あとは立会人とか?」
ここでやってもいいけど、ちゃんと偉い人達が見てる前で錬成した方がいいよね? 大体、錬成しようとしているのは違法薬物なんだし。
「そうだな。王城内でそういう立場の者というと宰相や宮廷の専属薬師長とか?」
「・・・・・・ですね。というか、この押収物から作れるってことですよね? レシピないのに。鑑定で分かったんですか?」
「うん、かなり詳しく分かるから。どんな材料を組み合わせればいいとか、あとは経験とか勘?」
他の人の鑑定の精度は分からないけど、俺のはアレとコレとソレを錬成するとこうなる、という感じで分かるから助かる。
もちろん魔力の込め具合とか分量は経験がモノをいうけどね。
「・・・・・・もう、ノア殿だからということですよね。分かりました。大至急手配します」
「お願いします。じゃあ、それまでこっちの鑑定終わらせておくね!」
はあーっという深い溜息のあとにそう言って手配に向かったティンバーに、こっちもそれまでに終わらすぞ! と俺も気合いを入れるのだった。
それから数十分、山のようにあった押収物はきれいさっぱり片付いて、残ったのは仕分けに使ったマジックバッグだけ。
「お疲れ様でした」
「お疲れ」
俺とアークがティンバーや騎士達にそう声をかけると、騎士達も片付ける手を止めて集まってきた。
「お疲れ様でした」
「こちらこそありがとうございます」
「大変助かりました」
「ノア殿、少し休憩されますか?」
錬成場所や立会人の手配に行っていたティンバーもあれからすぐに戻ってきて、一緒に片付けをしていた。
このあとその錬成をする予定だから、一度休憩を挟むつもりなんだろう。
「うーん。俺としてはすぐに錬成したいけど・・・・・・」
「駄目だ。休憩しろ。お前は放っておくと際限なく錬成や調薬に没頭するからな」
「・・・・・・ということなので、お茶にします」
アークにはいつもそうやって怖い顔で止められてるから頭が上がらない。でも俺のためを思っての忠言だから甘んじて受けますよ。
「それでいい」
そう言ってニコッと笑顔を見せてくれるだけで、しょげた俺の機嫌は天まで浮上しちゃうんだから単純だなって思うけど、別にいいんだ。
「えへへ。じゃあ騎士団の食堂にでも行く? 皆でお茶にしよう。ティンバー団長達も疲れたでしょう?」
「よろしいのですか? こちらは嬉しいのですが───」
ティンバーが遠慮がちに言った言葉に被せ気味にヴァンが割り込んできた。
『ノアのお茶! お茶菓子!』
「・・・・・・ヴァン、反省してるの?」
『してるしてる!』
「・・・・・・本当かなあ・・・・・・まあ大人しかったし、いっか」
『やった!』
ヴァンに甘い俺はそう言って苦笑した。アークはちょっと呆れてたけどね。
いいんだよ、終わったら思う存分もふらせて貰うから。
「相変わらず食いしん坊イッヌだな」
「まあ、躾けやすくていいと思えば・・・・・・」
そんな俺達のやり取りをまたもやポカンと見ている騎士達に苦笑した。
「威厳がない駄犬でごめんなさい」
とりあえず食堂に移動しようとワッフワッフ跳ねるヴァンを窘めながら、空になった訓練場をあとにしたのだった。
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