450 / 538
443 クルール借りーる
しおりを挟む魔人国でのウロボロスとのやり取りからまた暫く経った頃、農場での収穫作業中に今度はアークからギギルル兄弟に通信が入った。
『よう、久しぶりだな。忙しいところ悪いな』
「いや、ノアのおかげでずいぶん楽させて貰ってるから平気だよ。ソレよりも珍しいね、どうしたの?」
たまたま通信の対応をしたルルが手を休めて話を聞く。
『---うん、まあ・・・ちょっとワケありで今、古の森に籠もってるんだが・・・』
「え? 何でまた・・・。あ、お兄も呼ぶからちょっと待って。---おーい、お兄! アークから連絡!」
「おう、ちょっと待て! 悪い、ちょっと抜けるな」
従業員にそう言いながらルルの元に駆け寄るギギ。
「おう、久しぶり。・・・なんだ、ココじゃ言い辛い話? んじゃ、部屋に行くか。防音もしっかり出来るし」
『悪い、頼むわ。詳しい事はソコで。取りあえずクルールから一人二人借りたいんだが・・・』
「ソレは別に問題ないが・・・っと、今、部屋に入って防音魔法使うから待ってくれ」
話ながら歩いて部屋に着いたので、アークに断って魔法を張った。
「ヨシ、良いぜ。で? どうしたんだ?」
『・・・実は、知ってるかもしれないが、獣人国の王妃が病気になってな』
ソレを聞いて、二人はこの前のポーション関連かとピンときた。
「・・・あー、アレか。一応知ってる。実はノアの錬成したポーションが欲しいって言われて。アインの街の冒険者ギルドのギルマス・・・ウロボロスの話はしたろう? アイツから少し前に連絡貰ってな」
「悪い。勝手だったけど、俺等の手持ちのポーション譲ったんだよ。実は新しい領主がその王妃様の息子なんだって聞いてさ」
ギギとルルがその時の話をアークに告げる。
気を悪くするかと思いきや、アークはケロッとしたものだった。
『ああうん、お前達のモノになった時点でどうしようと構わないから、ソレはいいんだが。そうか・・・アソコの新しい領主、王妃の息子か。じゃあ、一応、王妃は古の森で静養中って連絡しておいてくれるか? 色々あってノアがぷっつんしてさあ、最近王妃を攫ったんだよ。でもそのおかげで命は無事で、ノアが今介護してるって』
ソレを聞いた二人は呆れた顔でお互い見合った。
「・・・・・・何をどうしてどうなって攫ったんだよ。めちゃくちゃ気になんだろうが。・・・でもまあ、分かった。ウロボロスから伝えるように話しておくわ。・・・で? 用事は?」
『ああ。ソレでノアがほぼ一人で介護してるからさすがに無理して体調がな・・・。で一応一人、いや二人?雇ったんだが、補助要員でクルールからも数人、借りたいと思って』
「ソレでさっきの話ね。確かにちんまいけどチートだから役には立つよね」
色々と気付けば手の足りないところを補ってくれるし、魔法も的確に使うし。
「「何より癒しだよな」」
『ソレも確かにある』
ギギルル兄弟の言葉にアークも賛同して笑った。
「何時来る? あと、誰を連れて行く?」
『今から精霊王に転移して貰うから、行ってから選ぶ。あ、ソッチで必要だってヤツは抜くから心配すんな。じゃあ、えーと、5分後に行くから頼むな』
「りょーかい」
「じゃあ5分後に」
そう言って通信は切れた。
「どれ、親父に声かけて、クルール集めて・・・うわ、結構時間厳しい。忙しい」
「親父ー!! ちょっとクルール呼んできてー!!」
「あーん? 何だってぇ?!」
遠くにいるゾアに声をかければ疑問形で返ってきた。
「あ、ダメだ。聞こえてない。俺等で呼んでこよう!」
「急がないとアーク来ちゃうよ!」
ワタワタとクルールを集めているウチにあっと言う間にやって来たアークが、相変わらず賑やかだと笑うのはすぐのこと。
「あ、そうだ。ココの果実や野菜も少し売ってくれ。王妃に擦り下ろしたり柔らかく煮て食べさせてやろう。上手いからなあ、ココの食物」
「おう、幾らでも持ってけ!」
ノアに良い手土産が出来たとほくほくのアークと、よだれが出そうな顔の精霊王に大笑いのギギ達は、アークが選んだ猫獣人ゴーレムと一緒にジェラートをたんまり詰めたマジックバッグを持たせて精霊王を喜ばせたのだった。
「何かあれば遠慮なく頼れよ、アーク」
「ああ、助かる。またな」
《邪魔をしたの。食べ物、ありがとうな》
「何時でもどうぞー」
「今度はノアも一緒に来られるといいな」
「ああ。その時はまた世話になる」
「ノアにヨロシク」
そう言って別れた。
「いやあ、忙しなかった」
「一息吐いたら、ウロボロスに連絡してやろうよ」
「だな。・・・・・・一国の王妃様を誘拐って、獣人国の王様、大丈夫なんか?」
「息子だっていう新領主のフィフス王子・・・気が気じゃ無いんじゃないの?」
「あの人達も振り回されて大変だよなあ」
「ホント。ご愁傷様・・・」
ギギ達の声は陽気な魔人国の空気に解けて消えていった。
※さて、クルールは誰を連れて行ったんでしょうね?
久しぶりに両手の蕁麻疹でかゆかゆな上に右目のものもらいでオイワさん状態・・・Oh・・・。
皆様も御自愛下さい。ノアのポーション、欲しい・・・。
211
お気に入りに追加
7,355
あなたにおすすめの小説
新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!
月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。
そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。
新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ――――
自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。
天啓です! と、アルムは――――
表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。
【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」
何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?
後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!
負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。
やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*)
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/06/22……完結
2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位
2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位
2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!
伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。
いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。
衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!!
パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。
*表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*
ー(*)のマークはRシーンがあります。ー
少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。
ホットランキング 1位(2021.10.17)
ファンタジーランキング1位(2021.10.17)
小説ランキング 1位(2021.10.17)
ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま
ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。
言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。
喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。
12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。
====
●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。
前作では、二人との出会い~同居を描いています。
順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。
※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる