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427 ヴァンも頑張る 1
しおりを挟む『・・・獣人国に、フェンリル様の、目撃情報が・・・?!』
呆然として宰相オウランが呟く。
獅子王も護衛騎士達も唖然としている。
「---スミマセン、ヴァンはヤンチャなモノで・・・ご迷惑をおかけしております」
好き勝手やってるヴァンに頭が痛いとばかりに、フェンリルの威厳を保とうとしてわざわざヴァン殿と呼んでいたのに、諦めたウラノスはヴァンを呼び捨てにした。
そこに精霊王が口を出す。
《彼奴が自由でヤンチャなのは今に始まった事でも無いだろう。気にするな》
---ソレを精霊王が言うんかーい!!
自分は無関係のようにサラッと言われて、クリカラ達は全員心の中でツッコんだ。
獣人国側は何処をどうツッコめば良いのか分からずに困惑顔だった。
---一方、その頃。
何故か当のフェンリルは獣人国王都の冒険者ギルドにいた。
---時を遡ることおよそ一日前。
精霊王に獣人国王都の側の古の森に転移して貰ったヴァンは、まず最初に仔狼の姿になってなおかつ認識阻害の魔法で身を隠した。
『さすがにまんまの姿では騒ぎが起きるだろうしの。面倒だ』
後はノアやアークにバレるとヤバいので。
寧ろこちらの方が堪える。
主に飯抜きとか肉抜きとか!!
(ちなみにフェンリルは幻獣なので嗜好品扱いです。栄養にはなりません)
そうしてから、件の王妃の様子を直接見るために獣人国の城を目指した。
獣人国はその名の通り獣人が最も多く住んでいる。
獣人の子供は幼いウチは獣の姿の事が多く、街中ではたくさんの小さい獣姿の獣人の子が見られた。
なので仔狼サイズのヴァンが一匹でうろうろしていても何の違和感も無いはずなのだが、どうも幻獣の気配は獣人とは違う清涼な澄んだモノらしく、何度も振り返って確認された。
認識阻害で姿は確認できないはずなのだが、嗅覚や気配に鋭い何人かの獣人には気付かれたようである。
---まあ、大したことは無いだろう。
ソレよりもまずは王妃の容態だ。
そう思って、いそいそと城に向かって行った。
この時ヴァンは楽観視していた。
後でとんでもない騒ぎになるとも思いもせずに・・・。
ウキウキしながら王城の前まで来たヴァンだったが、どうやって中に入ろうかと考える。
普通にヒョイヒョイ壁を越えるのも簡単だが、どこかの荷馬車にでも潜り込んで入るかと、たまたま近くを通った商人の荷馬車に紛れて潜入する。
認識阻害魔法が凄いのか警備がザルなのか、すんなり入れて拍子抜けのヴァン。
『・・・こんなんで大丈夫なのか、獣人国は・・・』
竜王国では絶対に弾かれるであろう警備がゆるゆるで、逆に心配になるヴァンだった。
『さて、王妃の情報を集めて部屋へ向かわねば』
行き当たりばったりで王妃がどこにいるのか確認しないまま王城内を闊歩するヴァン。
しかし勝手知ったる他人の城故に足取りに迷いは無かった。
『昔とほぼ造りは一緒だな。多少の増改築はあるが許容範囲だ。すると、王妃の間は・・・向こうか』
そして向かった先には、思った通りの部屋があった。
慌ただしく出入りする使用人達に薬師や医師もいる。
間違いないようだ。
『どれ、じゃあ様子を・・・うぐっ』
出入りする使用人達の合間を縫って部屋に入った瞬間、ヴァンの鼻にもの凄く不快な臭いが入ってきて、思わず顔を顰めて前足で鼻を押さえてしまった。
『---お”お”ぅ”・・・ごれ、毒草の臭いじゃないがよぉ”・・・!』
ヴァンの五感は獣人よりも遥かに上だった。
言わずもがな、嗅覚も遥かに鋭い。
おかげで、王妃の身体から毒の臭いがプンプンしていることにいち早く気付いたのだった。
※お待たせいたしました。
次話もヴァンの話です。
腰や節々が痛ダルでしたが、昨日一日、最低限の用事以外寝てたらやっと起き上がって動けるようになりました。
幾分か頭もスッキリ。ちまちま頑張ります。
皆様も御自愛下さいませ。
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