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256 夢うつつの・・・
しおりを挟む---ココはどこだっけ?
ゆらゆら、ふわふわ、酷く心地良い・・・。
ふと目を覚ますと、地平線の彼方まで草原が広がっていた。
そこにぽつんと立っている。
---俺は、誰だっけ?
自分の事を思い出そうとすると、頭にモヤモヤと霞がかった。
---誰かといなかったっけ?
何か、大切な事を忘れている気がする。
---俺は、どうしてここにいるんだろう?
分からない。
ここがどこで、俺が誰で、何故ココにいるのか、何一つ分からない。
---行かなくちゃ。
『何処へ?』
誰かが囁く。
---探さなきゃ。
『何を?』
また声が聞こえる。
---俺を探す何か、誰か・・・。
『そんなのいるの?』
---いるはず・・・だよね?
---いない?
『そんなのいないでしょ』
『だって、お前は捨て子で、天涯孤独で』
---そうだ。
---俺は捨て子で、天涯孤独で、皆に無視されている存在で。
---誰も必要としない・・・誰にも必要とされない・・・・・・。
『そうよ』
『思い出した?』
『お前は存在しなくて良いモノ』
『だからね・・・・・・』
『このまま、ココでおやすみ。』
『イヤなこと全部忘れて』
『アタシがぜーんぶ、上手いことやってあげるから』
『お前は、夢の中で生きていれば良いのよ・・・』
---ああ、そうか。
---眠っていて良いんだ。
---夢ならば、幸せになれる。
---夢を見ている間だけは・・・俺は、誰かと愛し合って・・・・・・。
---夢なんて、ずっと、醒めなければ良いんだ。
「---ふふふ。そうそう、夢を見ている間は何でも自分の思うとおりになる。だから、ずっとそのまま、死ぬまで眠っててちょうだいね」
そこは真っ白い空間で、いくつもの透明な水球のようなものが浮かんでいた。
そう、人ひとりがちょうど入れるサイズの。
そこに妖艶な美人が一人佇んでいる。
誰もが見蕩れるような嫋やかな美人は、一つの水球に語りかけていた。
「やっと見つけた、アタシの愛しい人。・・・・・・忌々しいことにその銀の瞳と少しの魔力の気配くらいしか同じところが無いけれど・・・でも大丈夫よ。アタシがあの人にそっくりになるように躾けてあげるからねぇ・・・」
うっとりと言った後に綺麗な顔を歪めて、でもすぐにまたうっとりとした顔になる。
長い金の髪に銀の瞳の美人は愛おしそうにその水球に頬を擦り寄せる。
その水球の中には、今は目蓋を固く閉じた銀の瞳を持つノアが体を丸めて、膝を抱えて眠っていた。
アークと出会う前の、天涯孤独で寂しさに震えていたノアが・・・・・・。
この美人によってアークとの幸せな日々を隠された、孤独な心のノアが眠っていたのだった。
「ふふふ、大丈夫よ。ちゃぁんと優しくしてあげる。心の傷が深ければ深いほど、アタシに依存するようになるのよ。お前は辛い記憶だけ持って、これからアタシに愛されるの。---ふふふっ最高だわ!」
アッハハハ---!!
静まり返った空間に、彼の声が高らかに響き渡るのだった。
---あー・・・・・・く・・・・・・。
彼に聞こえないくらいの呟きと共に、ノアの閉じた目蓋から、涙が一粒、零れた。
※しばらくシリアス続きます。
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