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255 迷宮の支配者
しおりを挟む「迷宮の支配者?」
カフカの言葉を聞いてアークとギギルル兄弟が怪訝そうに言った。
初めて聞く言葉だ。
レオニードとシェイラは聞き覚えがあるのか、ハッとしていた。
「---そうか。いや、確かにごく稀にだがそういう迷宮がかつてあったな。昔過ぎて全く頭に無かった」
「レオン達は知っているのか?」
「さすが伊達に長生きしてねえ・・・っと、失礼」
うっかり失言したギギをじろりと睨むシェイラに慌てて口を閉じた。
「ああ、かなり昔に一つ聞いた迷宮だった。聞いた事があるだけで俺も実際には知らない。もう存在しない迷宮だよ」
「・・・私の知っている迷宮も、おそらくそれです。ごく普通の迷宮でしたが、ある時、急に迷宮内が様変わりして。調査の結果、どうしてそうなったのか詳細は分からないけれど迷宮の魔物では無い外部の者が迷宮と一体化していて、迷宮を好き勝手に弄っていたそうです」
カフカが思い出しながらそう話す。
「・・・それで、どうしたんだ?」
「冒険者達でその存在を討伐・・・と言って良いのか、要するに殺した結果、その迷宮は消滅しました」
「え、消えたの?」
「ソイツだけ消えたんじゃ無く?!」
アークの問に応えたカフカの言葉に驚くギギルル兄弟。
アークも驚いた。
レオン達は知っていたようで、変化は無い。
「一体化というところがキモだろうな。ソイツが長いこと迷宮に潜ったまま一体化してしまい、ソイツが迷宮の核のようになったんじゃないかという説があって、結果、心臓を絶たれた体は形を維持できなかったと・・・」
「ええ、私も概ねそう聞いてます。ただ・・・今回のケースではそこまで長くはないだろうと・・・。
ですので、その何か・・・迷宮の支配者を倒しても迷宮は消えないのでは、と考えます」
レオニードの言葉にカフカも考えてそう応える。
アーク達もなるほどと思ったようだ。
だが、万が一に備えて行方不明者達を迷宮内から出して、それから本命を叩く方が良いだろうな。
「問題はその何かの正体が不明なことと、再び接触出来るのかということだが・・・」
「・・・そうですね」
レオン達はうーん、と考え込んでいたがそんなの・・・。
「迷宮の中を破壊すれば良いだろう?」
「は?」
アークの言葉に全員が固まった。
「どうせどんなに壊れようが迷宮内は時間が経てば自然と元に戻るだろう。だが戻る暇も与えないくらい壊しまくっていれば、さすがに相手も焦って姿を現すんじゃないか? 棲み家を守るために」
そう言うアークは目が据わっていた。
声は淡々としているが、実はもの凄く怒っていたんだと再認識させられる。
「---絶対に許さねえ。俺の大切な最愛の番いを一時でも奪ったヤツを、俺は許さねえ」
今、この時もどんな目にあっているのかと思うと、腸が煮えくりかえる。
「・・・・・・こいつは、早いとこノアを助け出さねえと、迷宮どころか魔人国が消滅するぞ」
「同感、今回ばかりはお兄に全面的に同感するよ・・・。マジでヤバいって・・・」
ギギルル兄弟が引き攣った顔で呟き、さすがのカフカとラミエルもちょっと顔色が悪くなった。
レオニードとシェイラもアークの力を分かっているので若干青い顔になった。
---ストッパーがいないと暴走しちゃうぜ!
ここにいる全員が、もはや一刻の猶予も無いことを悟ったのだった。
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