迷い子の月下美人

エウラ

文字の大きさ
上 下
249 / 538

245 冒険者ギルド再び

しおりを挟む

一夜明けて次の日の朝。

前日と同じ時間帯に冒険者ギルドに向かったアーク達御一行。

昨日のような突撃は無く、何時もよりも静かなのが却って不気味だった。

「・・・・・・本当に行くの?」

ノアが珍しく躊躇っている。

よほど昨日のギルマス(仮)がトラウマだったんだろう。
入る前からぴるぴるしている。

それを見てピリピリするアークの威圧が若干漏れている。

「・・・行きたくはないが、受けた依頼だからな。でもノアに何かしそうになったら、容赦しないから、安心してくれ」
「そうだな。俺達も全力でやり返すから!」
『今日は我も通常運転だぞ。何なら我の毛皮に埋もれていると良い』
「・・・ヴァンの台詞は魅力的だ」
「---ックソ、ヴァンに負けた・・・!」

ノアが思わずヴァンの誘惑に食いついたのでアークが嫉妬している。

「それくらい許容してやりなさいよ」
「若いって良いねえ」
「「・・・さすが竜人ってか・・・」」

ギルドの入り口でぐだぐたしながら、漸く中に足を踏み入れたアーク達を一斉に見る冒険者と職員達。
直後、威圧を食らって全員バッと視線を逸らした。

そんな中、奥から二つの視線を感じて見ると、昨日は見なかった長い黒髪に濃紺の瞳の色白の細い美人が立っていて、その足元には昨日のギルマス(仮)が大きな体を縮こまらせて土下座している。

更には黒髪美人の左隣にこちらも初めて見る、黒髪美人より頭一つほど背の高い、アークに似た体型の細マッチョ。
ミルクティー色の柔らかそうな緩い癖毛の猫っ毛を後ろで一つに括っていて、翡翠色のやや垂れ目がちの瞳。
肌は小麦色で健康的。

じっと観察していると、黒髪美人がおもむろに口を開いた。

「先日は不在中、こちらのギルドマスターが大変失礼を致しました。サブギルドマスター改め、本日付でギルドマスターとなりました。カフカと申します」
「本日付でサブギルドマスターに就任致しましたラミエルと申します」

そう言って、二人とも深く頭を下げた。

なるほど、昨日のうちに下克上はなされたようだ。
ギギルル兄弟も、さもありなん、という顔だ。

「・・・その足元の・・・名前は知らないが、昨日の失礼なヤツはどうなるんだ?」

アークが一応気にかけた。
というか、聞かれるのを待っている感じだったので、話を振ってみたようだ。

「・・・は挨拶も自己紹介もしなかったようですね。大変申し訳ありませんでした。なに、気にかけることはございません。ギルドマスターの地位を剥奪しましたので、現在はAランク冒険者でございます。如何様にも、気の済むまで、存分に、お好きなだけ構って頂いて結構でございます」

そう言って綺麗な笑顔で応えた新ギルマスのカフカ。

隣のラミエルも和やかに微笑んでいる。

---二人とも腹に真っ黒いのを飼っているようだな。

ギギルル兄弟とレオン達は分かっているようだが、ノアは全くの無反応。
キョトンとしながらも足元の土下座ギルマス(仮)には一切目を向けない。

・・・・・・完全に意識から外している。
サッサと消えて貰おうか。

ノアには平穏でいて欲しいから、アーク以下四人は即座にアレの排除に動いた。

アーク達が視線で合図を送ると、心得たように執務室に案内された。

その間にノア達の視界に入らないところにポイッとされるのだろう。
だが同情はしない。
そもそも指名依頼で来たSランク冒険者達に対する言動ではなかったのだから、それこそ自業自得だ。


ノアの件が無くとも、遅かれ早かれ辿った道なのだ。





※最後まで名前無しの元ギルマス(仮)。
台詞も無かった!

ちょっと続きが書けていないので、次の更新遅れると思います。お待ち下さい。


しおりを挟む
感想 1,191

あなたにおすすめの小説

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

誰よりも愛してるあなたのために

R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。  ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。 前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。 だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。 「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」   それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!  すれ違いBLです。 初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。 (誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

将軍の宝玉

なか
BL
国内外に怖れられる将軍が、いよいよ結婚するらしい。 強面の不器用将軍と箱入り息子の結婚生活のはじまり。 一部修正再アップになります

処理中です...