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246 着任早々大問題
しおりを挟む新ギルマスのカフカを先頭に執務室に向かった一行は、勧められるままソファに座った。
といっても、ノア以外図体のデカい5人に通常サイズのフェンリルが座るスペースはさすがに無い。
取りあえずノアを膝に乗せて一人用のソファにアークが座り、ノアの膝に仔狼サイズになったヴァンが乗った。
隣のソファにレオニードとシェイラが座り、ギギルル兄弟はレオニード達のソファの後ろに立ったままだ。
後ろに視線を寄越して気にしたノアに、ギギは気にするなとウインクをして、ルルはにっこり笑った。
全然問題無さそうなので、ノアも良いかと前を向いた。
いつの間にかラミエルによってお茶も出されていた。
立っているギギルル以外のメンバーはひとまずお茶で唇を湿らせた。
「---今回の後始末はそちらに任せよう、カフカ殿。ところでラミエル殿は見かけない顔だが、元々ギルド職員だったのか?」
「---ギルド職員ではありましたが、裏方の・・・王家でいうところの『影』『隠密』といったところでしょうか」
レオニードが代表して話し出すが、どうやら現サブギルマスに面識が無かったようでカフカに聞いたところ、そんな返事が返ってきた。
「・・・そんな裏方を今回サブギルマスとして表舞台に出す意味は?」
レオニードが若干険しい声で問う。
そんな人物をサブギルマスにするなんて、何か裏があるかもしれない。
「・・・・・・警戒はごもっともです。ですが、今回の件でほとほとあの元ギルマスには参っておりまして・・・いい加減使えない・・・いえ、役立たず、ええと、疫病神ですね! もう本当に後始末が大変で大変で・・・。ラミエルにも随分働いて貰ってるのですよ。ですから、私がギルドマスターになったときには彼しかサブギルドマスターはいないと思いまして・・・」
違った。
めちゃくちゃ苦労人だった。
机に肘をつき項垂れている顔は、何とも言い難い苦渋の表情だった。
そりゃあ、そんな苦労を共にし、今まで片腕のように後始末をしていればそのままいて欲しいよな。
だがしかし、ノアには人好きのする柔和な美丈夫に見えるだろうが、ラミエルは一癖も二癖もある厄介な性格だぞ。
カフカくらいにしか手綱は握れないかもしれない。
味方であれば頼もしいだろうが。
これからも敵にならないことを祈るだけだ。
そういうわけで、空気を読んで誰も深くツッコまなかった。
・・・藪を突いて蛇を出したくは無い。
「---ん? 今回の件って?」
不意にノアが声を上げた。
「? 今回の件って、昨日の暴走じゃねえの?」
ギギが首を傾げて言ったが、ノアが首を横に振った。
「いや、ほとほと参ってるって、現在進行形だったよね? 片付いていないんでしょ? 昨日とは別件じゃないの?」
ノアに言われてハッとしたアーク達はカフカに注目する。
「・・・さすがですね、ノア殿。ええ、現在進行形で厄介な事が起こっているんですよ。それで今回の指名依頼で出した内容を追加というか変更したいのです」
「---今回の指名依頼って、『箱庭の迷宮』の調査だろう? 行方不明者が多数いるってヤツ・・・」
レオニードが確認する。
指名依頼はそういう内容だったはずだ。
アーク達も頷く。
「・・・・・・ええ、そうです。それで依頼しています。・・・ただ、出来れば行方不明者の捜索も御願いしたいのです」
「・・・・・・それは、ついでだしそのつもりでいるが・・・わざわざお願いするという事は、何かあるのか?」
その質問に、端整な顔立ちを歪ませてカフカが応えた。
「・・・・・・行方不明者の中に、我が国の王族が一人、含まれているのです・・・」
「---は?」
「---あのバカが良く確認もせずに『箱庭の迷宮』の立ち入り許可を出した挙げ句、今現在、行方不明になってしまっているのですよ!!」
カフカが思わず声を荒げて叫んだ。
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