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122 一方その頃の要塞都市(side魔法騎士団)
しおりを挟むアーク達が迷宮内に入った後、暫くして魔物が迷宮の出入り口からチラチラと出て来た。
当然だ。封印の門など無いのだから。
だから第1部隊が討伐に向かったのだ。
迷宮内に入っていったアーク達が戻ってきたら話を聞いて、どうするかの判断になるだろう。
まあ、中が間引かれて迷宮内の魔物の密度が下がれば外にあぶれる魔物も減るだろう。
後はアイツらがどれだけ間引いて戻ってくるかだが・・・・・・。
間引くのは、まあ、あの馬鹿げた戦闘能力を見ていれば全く問題は無いだろうが、階層がどこまで深いのかだよな。
それにしても・・・。
「---アークの番いのノアちゃん、一体何モンだろうな・・・」
誰ともなしに呟いたその声に反応したのは側にいた冒険者ギルドの職員だった。
「あの、ココだけの話、詳しくは言えないんですけど、腕の良い薬師だったのに住んでた街の上のヤツらのせいでハブられてたんですって。たまたま街に来たアルカンシエル殿の番いになって街を出たそうですよ」
そういってコソッと教えてくれた。
「アルバトロス団長殿はアルカンシエル殿の従兄弟って聞きました。後で聞いたら教えてくれるんじゃないですか?」
早く今回の騒動が落ち着くと良いですね、と言って離れていった。
「なんとなく訳ありだとは思ったが、それだけじゃ無さそうだな。まあ、アークも実家に行くつもりでこのルートを通っているんだろうし、必要があれば教えてくれるだろうが・・・一翔びで戻って来ない辺り、相応の理由がありそうだ」
ま、そういう事情はひとまず置いといて、今はこっちに集中しないとな。
聞くのは後でゆっくり出来る。
散開した第1部隊がエンカウントしたようだ。
だが皆、優秀な部下達だから、問題なく対処している。
コレなら部隊を二つに分けて交代しながら討伐出来るな。
新しい迷宮が未知数だから、長期戦も視野に入れないと。
暫くして連絡要員の隊員一人がルドヴィカの元にやって来た。
「お疲れ、どうだった?」
「・・・はい、ええと・・・上空から見ておりましたが、アルカンシエル殿とノア殿は無事に迷宮内に入りました。それでですね・・・」
部隊員の歯切れが悪いが、どうした?
「どうやら足を踏み入れるたびにエリアが変わるようだとアルカンシエル殿から連絡がありました」
「アークが?」
おそらく口パクで、それを読んだのだろう。
ノアに気付かれずにコッソリと。
「はい、それで詳しい事は分からないため、何があっても迷宮に足を踏み入れるなと言付かっております」
「---分かった。他の隊員達にも通達し、警戒態勢をとれ。いないとは思うが他の冒険者や一般人を近づけさせるな。不測の事態に備えるように」
ちとやっかいな迷宮だな。
アークの判断は正しい。
どういう条件でどうなるのか分からないことには中に入れない。
助けに入ったとしてもエリアが変わるのなら合流出来る確率はかなり低いだろう。
二人に任せるしかない。
気を付けないと、危険だ。
「了解です。では戻ります」
隊員が踵を返すのを見て、ルドヴィカは声をかけた。
「---あ、二人の様子はどうだった?」
「・・・あー、ノア殿がですね・・・その、とても楽しそうに魔物を屠っていました。・・・・・・ドロップアイテムに興奮気味でしたね」
「・・・・・・は、ふはっ!」
その様を思い浮かべて、思わず噴き出したルドヴィカ。
「・・・では、失礼します」
苦笑しながら去って行く部下を見ながら、笑いを堪えるのに必死だった。
「ア、アークの困ったような顔が浮かぶ・・・!」
ノアの第一印象は、エラい人見知りな小動物。
しかしめちゃくちゃな魔法の腕で、アークに勝るとも劣らぬ実力者。
でも美人で天然で色々心配な、庇護欲をかき立てられる存在。
アークは苦労してそうだなあ。
後で馴れ初めを聞くのが楽しみだ。
ルドヴィカは未だ止まらない笑いに身を捩ったのだった。
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