迷い子の月下美人

エウラ

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121 迷宮内はまさしく迷宮でした

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ノアとアークが迷宮の入口に降り立つ。

迷宮の周りはアークが先ほどの剣撃で薙ぎ倒した木々が散乱しているだけで静かなものだった。

邪魔なのと後で何かに使えそうという理由で、ノアが周りの倒れた木をインベントリに収納していった。

入口はアークがゴーレムごとガッツリ凍らせておいたお陰で、あれから溢れ出す事は無かったようだ。

「じゃあ魔法解除するが、ノア、準備は良いか?」
「何時でも良いよ」
「よし、3・・・2・・・1・・・『解除キャンセレーション』」

アークが魔法を解除すると、途端に魔物がうごうごしだした。
構えていたとはいえ詰まっていたゴーレムが出入り口を破壊する勢いだったので、ノアが慌ててバスタードソードをゴーレムの核に迷うこと無く突き立てた。

一応迷宮内の判定らしく、たちまちドロップアイテムになって消えたので『やった! ドロップアイテム!』と喜び、つっかえていた残りの魔物も遠慮なくざくざくと剣を突き刺してドロップさせていくノア。

---ノアの脳内はすでにからにシフトチェンジされたようである。
これにはアークも大笑いした。

「そのポジティブ変換、好きだぜ」
「---え? 何? なんか言った?」

魔物の殲滅=素材収集の思考になったノアは大量に詰まった魔物退治に忙しくて良く聞いてなかった。

列をなして出入り口に向かってくる魔物のせいでまだほとんど中に入れてないノアが、面倒だと『アブソリュート・ゼロ』を放って一旦殲滅した。

「アーク、入口空いたよ。入っていいよ」

ドロップアイテムを風魔法で集めて拾いながらアークを呼ぶ。

「ふはっ・・・ホント、ノアは可愛いなあ」
「? アーク、ほら早く探索しようよ」
「はは、探索じゃなくてな。いや、間引き?」
「どうでも良いよ。どうせやることは一つ」

ノアが御機嫌でアークを急かす。
すでにスタンピードとか魔物の間引きという事を忘れている感じだ。

まあ、確かに結果としては一緒だな、と頷いたアークはノアに手を繋がれて新迷宮に足を踏み入れた。


出入り口の側の転移用の水晶が、魔物によって壊されることもなく静かに佇んでいる。

迷宮の謎仕様。
何故か魔物は近寄らず、破壊も不可。
しかしコレがあるということは、最低でも10階層はあるということだ。

「ココはどんなエリアでどこまで潜れるんだろうな」
「楽しみ」

アークも人のこと言えないだろう、というツッコミ担当(おそらくルドヴィカ)がいないため、二人はすでに普通に迷宮探索気分で潜って行くのだった。


一階層は草原地帯だった。
しかしかなり狭い。
先月踏破した北の迷宮のエリアの半分くらいである。

「---コレは、この狭さで北の迷宮ほどの深さだったら攻略出来なくはないだろうが・・・」
「うん。もし向こうと同じくエリアが変化するタイプだと厄介だね」
「一度出て、もう一度入り直して見ようか」

北の迷宮は一日毎に変化していたから、その日だけだったら何度潜っても変化はしなかったが。
アークの提案に乗って、一旦迷宮の外に出る。

そして一呼吸して足を踏み入れると・・・。

「---マジかよ」
「・・・うわあ、コレは、ちょっと後で要検証だな」

二人の目の前には、先ほどと広さは変わらないがガラッとエリアを様変わりさせた迷宮があった。

草原地帯だったのが極寒の氷雪地帯になっていたのだ。

もう一度入り直したら、今度は砂漠地帯。
更にもう一度入り直して見ると、薄暗い洞窟。

「一歩でも出るとエリアが変わるってか・・・」
「他の人が後から踏み込んだらココに来るのかな・・・? それとも・・・」
「---一階層は一階層でも別空間の一階層・・・って事も有り得るな・・・。---さすがにノアと別々には入らないからな! ノアも絶対にやるなよ?!」

アークがハッとしてノアに言い募った。

「いや、やらないよ?! アークと離ればなれなんて寂しくて死んじゃうよ! ・・・じゃなくて!! なんていうか、もしかしたらPTパーティーかどうかで判断してるんじゃ・・・? だって俺達、最初こそ手を繋いで入ったけど、その後はくっついたり手を繋いで入った訳じゃないのにずっと一緒にいるよね?」
「・・・・・・ああ、その可能性はあるな。だがとりあえずは魔物の間引きだ。落ち着いたら検証すれば良い。ノア、先に進むぞ」
「ん。了解」

とりあえず二人は万能型オールラウンダーなので、変化するエリアを気にせずに進むことに決めた。



アークはノアに気付かれないように、上空にいる第1部隊の隊員に口パクで言付けを頼んでいた・・・。





※第10回BL小説大賞の投票、たくさんありがとうございました!
昨日で投票は終わりましたが、この場で御礼申し上げます。
今後も頑張って更新しますので、引き続き読んで下さると嬉しいです。
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