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108 冒険者ギルド訪問
しおりを挟む※前半アークとノア。後半ギルド職員。
宿のオーナー(だった!)の熊獣人のシルトに部屋を案内して貰い、中を確認した後、受付のエド(息子の一人)に断って鍵を預けてから冒険者ギルドに向かった。
おそらく門衛からすでに連絡が行ってるとは思うが、今日のうちに一度くらいは顔を出しておかないとな。
---『見守り隊』の情報もあるし。
・・・この要塞都市のギルドでどれくらいの隊員がいるのか・・・。
オーガスタでは職員全員と食堂のサウスが加わっていたが・・・。
ノアに内緒だから大っぴらに出来ないしなあ。
などとアークが考えている間も、ノアは物珍しさにあちこちふらふらと足が向いてしまって、案の定アークにガッツリ恋人繋ぎで手を繋がれた。
「・・・前の街での事、忘れちゃった?(俺、暴走しちゃうよ?)」
不穏な副音声を感じたノア。
「・・・・・・いいいいいえ! 思い出しましたっ、じゃなくて覚えてまちた!!・・・・・・っ噛んじゃった?! ふえぇ・・・」
アークの笑ってない目で見つめられて動揺したノアが失言の末に噛んだ。
真っ赤になって涙目でぴるぴるしている。
・・・なんだそのまちたって、おい、可愛いな!!
ノアの可愛さMAXにブチ切れそうなアークだった。
そんなやり取りをしながら冒険者ギルドに辿り着いた。
オーガスタのギルドのように無骨だ。
ただ、オーガスタよりも1.5倍くらいデカい。
さすが要塞都市。
街中ももの凄く広くて人も多い。
アークは慣れた様子で扉を開く。
ノアは相変わらず手を繋がれた状態のまま、フードも深く被っていて、アークについていくだけだ。
時刻は昼前。
クエストを受ける冒険者はほとんどおらず、受付は何処も閑散としていた。
なので目に付いた一カ所に向かって真っ直ぐに歩いて行く。
まあ、扉を開けて真っ直ぐ前にあっただけの窓口なんだけど。
その職員は、カツカツと響いていた足音が自分の窓口の前で止まったのに気付いたが、声をかけられるまではと知らんぷりをしていた。
受付業務以外の作業をしていたらしいその窓口の職員は最初、アーク達に全く気付いておらず、周りの職員がザワザワしだして、面倒くさい作業を渋々やっていたその職員が眉間にシワを寄せてイラッとしたところに誰か来たので、無視すれば他の手隙の職員のところに行くと思っていたのだ。
---案の定、チラッとこっちを窺っただけで、隣の職員に声をかけたようだった。
「忙しいところ悪いが、ここのギルマスに面会したい。今日の予定とか確認して貰えるか?」
---おいおい、アポなしかよ。
普通は事前に申し込んでアポ取ってから来るもんだろう!
何様だよ?!
「アルカンシエルとノアって言えば分かると思うが」
名前だけ言われても分かるわけ無いだろ!
自分のことを知らないヤツはいないだろうって傲慢なヤツかよ!
「たぶん、門衛辺りが先に知らせに来てるんじゃ無いかと思うんだが・・・・・・」
---そういえば来てたな?
ヤケに慌ただしく門衛の一人が来てたな。
アレか、もしかして犯罪者とか身元の怪しいヤツだって連絡だったのか?!
そんな間抜けな罪人の顔なら一目拝ませて貰お---。
「これがギルドタグな」
顔を上げたらちょうど二人が掲げたギルドタグが目に入った。
---ぇ、アレって、オリハルコンじゃあ・・・。
オリハルコンって、Sランク冒険者のタグだったよな?
・・・・・・は?!
思わずそいつらをガン見してしまった。
仕事の手が止まってしまう。
---めちゃくちゃ好み!
ナニアレカッコいい---!
玉の輿、イケる!
そんで隣のフードヤロウ邪魔!!
Sランク冒険者だろうがアンタは好みじゃねえよ!
そんな気持ちを込めて、さっきとは打って変わってコロッと態度を変えて声をかけた。
「---あのっ! 僕が取り次いで来ましょうか?!」
「ア゛? 忙しいんだろ? こっちの職員に任せてるから、もう良いよ」
「ぇ、いやでも・・・・・・」
「あなたは今の仕事を終わらせなさい。こちらはアルカンシエル殿とノア殿が訪ねて来たら何時でもお通しするように言付かっておりますので、ご案内致します」
「ああ、助かる。・・・・・・ノア」
「ん、ありがとうございます」
そういってフードを下ろした男はめちゃくちゃ美人だった。
---はあ?
去り際、うなじにガッツリ咬み痕が・・・何、じゃあ、二人は番い同士・・・・・・?
チッ、マジかよ!
二人がギルマスのところへ案内されて消えた後、他の職員に声をかけられた。
「お前ね、何時も言ってるけど、相手見て態度変えすぎ。仕事だって遅いし」
「まあ、さっきのでもう終わりだろうけどね」
「・・・・・・どういうこと?」
「Sランク冒険者への対応と態度じゃ無かったろ。ギルド職員失格だよ」
「・・・・・・ぇ」
「今のうちに荷物をまとめとくんだな」
---お前はギルド職員全員を敵にまわしたんだよ。
世界中のギルドのな。
その職員がその後どうなったかは、アーク達の預かり知らぬ事である。
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